※まだまーだ、原作には入りません。
※修行編です。
※冨岡さんとの絡みが描きたいだけです。
 拝啓、極楽浄土の義姉様。
元気ですか?
私は師匠に殺されかかってます。
紫さんと同居してまず言われたことは目隠しをして気配探知に特化すること。
 光の呼吸は他の呼吸法と違い、デメリットとして視力が低下していくらしい。
大体の修行計画は

・朝、早朝日が昇るまでに目隠しをし、ロウソクを片手に持ってそれを消さずに注意して山へ登る。
 
・昼、目隠しは取らず、空気の薄い山頂と日の光を浴びながらそのまま剣技修行。ついでに食料調達。
 
・夕方、日が沈む前に下山、目隠しは絶対にとるな。
 
・夜、就寝前に血を抜かれる。

「へばるな!腰が引けてるし太刀筋に迷いがある。」
そう言って師匠ー夜月紫さんは私の腰を鞘で叩く。
「いっ…!」
これがかなり痛い。
だが、ここで辞めたら私に生きる意味を与えてくれた冨岡様に申し分が立たない。
そう暗示をかけてたち踏みとどまる。
木刀で剣技の練習中。
女の私では体力や腕力に限界があるからこそ技を磨けと口酸っぱく言われ続ける。
冨岡様にせっかくもらった命だ。
今更捨てるわけにはいかないと木刀を拾って構え直す。
いい根性だと紫さんの明るい声が耳に響く。
 今日は紫さんから一本取れるまで下山しないと宣言した手前だ。
へばるんじゃないと己を奮い立たせ踏み込む!
気配は、後ろか!と裏手で反応したが…。
「遅い!」
またしても今度は柄の部分で背中を強打される。

 そんな修行を日が陰るまでやっていると第三者の気配に気づいて声を上げる。
「お師匠、誰か来ます!」 
目隠しを取ろうとすると取るなと言われてそのまま気配のする方へと構えると。
「夜月、任務だ。」
聞き慣れた声が聞こえて刀を下げる。
「おうおう、冨岡。
そいつぁ、鴉の仕事だろ。
この間も知らせが来たがいかねぇ。
大体、わっちはこいつを育てるために休暇をもらってる。
関係ねぇな。」
さっ、始めるぞーとお師匠は呑気な声で言う。
だが、冨岡さんも引かない。
どうやらどうしても師匠の力が必要らしい。
「お前しか行けない任務だ。
鶴岡なら俺が見る。」
チッと舌打ちをして師匠はため息を吐いた。
「わーったよ。
そこまで言うのなら教え下手な水柱様にお任せしようかねぇ。」
渋々といった声色で師匠は刀を納めて荷物をまとめ、思いついたように冨岡に紙を投げる。
「あっ、忘れてたがこれが1日の修行日程だ。
紅梅、夜に血を抜くのはわっちが帰るまで無しだ。
その分、しっかり寝ろよ。」
頭を撫でられて少しくすぐったい。
でもお師匠は悪い人なんかじゃないんだなってわかる瞬間が嬉しい。
「行ってらっしゃいませお師匠。」
「全く、どいつもこいつもわっちを門前払いしたいようだなぁ。」
やれやれと去っていく足音を聞き木刀を構え直す。
「夜月の言う様に俺は教えるのが下手だ。」
「大丈夫です。
そこの紙に書いてある通り、剣技の打ち合いをしていただけるだけで結構です。」
わかったと言うように彼は無言で岩に立てかけてあった木刀を取る。
二人の間合いに静けさが流れる。


  
 そして日が沈む頃まで二人の修行は続いた。
さすが柱、師匠もそうだが呼吸方が違えば相性も変わる。
結局のところ一本も取れずに地面に転がされ、鳩尾に容赦なく叩き込まれ、吹っ飛ばされた。
女だろうと容赦しない彼の強さを再確認した夕刻。
もう限界だと吹っ飛ばされた先で大の字に寝転ぶ。
「…日も暮れる。
立てるか?」
流石に目隠しをしている紅梅に無言で手を差し伸べる訳にも行かず声をかけたら。
「立てます。ありがとうございます。」
先程の指導を諸共せず、すっくと立ち上がる。
呆然と治りのつかない手を見つめてショックを受ける冨岡。

「…鶴岡。」
「はい?なんでしょうか?」
目隠しをしたまま振り返ると手を出せと言われて言われた通りにするとちょこんと小袋を渡される。
手の感覚でかしゃかしゃと何か小さな粒の様なものが入っている。
「これはなんでございましょうか?」
「金平糖だ。」
聞きなれない名前に首をかしげると菓子だと聞かされてにとって食べてみる。
優しい甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しい、ありがとうございます。冨岡様。」

 そうして山を降り、夕食は残り物を食べて冨岡様は泊まっていく事となった。
なんでも、頼まれた事なら最後まで面倒を見ると頑なに言われてこっちが折れたのだ。
冨岡様の指導ははっきり言いますと下手以前に会話もなく褒めもない。

 お師匠の言動も粗暴で時々三途の川が見えかけるくらい厳しい。

 だが、冨岡さんは違う、なんかこうひたすらに淡々と攻撃を叩き込んでくる。
そこになんの感情も感じないのかもしれない。
不思議とこの迷いのない太刀筋に私は焦がれた。
数日間という短い期間に憧れを抱く紅梅。
だが彼女はまだその感情が何であるか知る由はない。


 
 そして過酷な修行の数年後、師匠から最後通告を受けた。
「大方のことは教えた。
後は己の力のみで這い上がってこい。
予備の刀は貸してやるがこれ選別だ持っていけ。」
そう言われて予備の日輪刀と青い矢絣の入った羽織を渡される。
作務衣の上から羽織れば少しあったかい。
「良いんですか?こんな上等なもの…。」
恐る恐る聞けば遠い目をした紫さんが語り出す。
それは学生時代に一度だけ着た切りでもう着る気もないのだと。
「わかりました。ありがたく頂戴します。」
そう言って羽織と刀を携えて長屋を出る。
後ろは振り返らない。
振り返ったらきっと私は迷うから。
「生きて帰って来いよ。」
師匠の言葉を胸に私は試験会場へと足を進める。
 
【つづく!】
 


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