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そんな幼き頃のほんのりと甘い思い出から十数年。
幼く、感情的だったエディルも、今では立派な青年となり、新しい町の住人に慕われる存在となっていた。
普段は学者や教師として働きつつ、時折畑に降りて来る害獣の駆除をする等、彼は意欲的に働いていた。
これも全て、「リドに似合う男になるために」ということが原動力となってしていたことである。
やがて、そんな彼の日々に一筋の光が射した。
エディルは、ほとんど無駄に使うことなく貯めていた金で、一対の指輪を買ったのだ。
幼い頃のリドを思い出すと、女の子が好むような可愛らしいものがいいのでは、とも思ったが、今のリドは恐らくすっかり綺麗に成長しているのだろう。
そんな彼女には、きらびやかなものよりも、シンプルなものがきっと似合うだろう。
そう推測しエディルは、銀色のシンプルな指輪を選んだのだ。
指輪が入った箱を懐に仕舞い、部屋を出た。
両親だけでなく、エディルを知る町の住民という住民と熱い抱擁を交わし、エディルは必要最低限の荷物と指輪だけを持って、生まれ故郷の町へと帰っていった。
家族と共に引っ越した町よりものどかな、自然の風景が広がる田舎町に一歩踏み入れて、大きく肺を膨らませて懐かしい空気を堪能する。
気が済むまで深呼吸を続けるエディルの元へと、かつての友人達がぞろぞろと集まってきた。
昔の頃の面影を残した友人達と軽く会話をし、エディルは着々とある場所へと向かっていく。
リドはこの町の自警団団長の子供であり、半分以上が屯所と化した、そこそこ広い屋敷に住んでいた。
かつてしつこい程に遊びに行った屋敷への道を辿る。
随分と高くなってしまった目線で見える景色は、子供の頃に見たそれとはかなり違うため、道に迷ってしまうことも危惧していたが、不思議と、体は覚えていた。
体に染み付いた記憶を辿りながら、エディルは成長したであろうリドの姿を想像し始めた。
あの可愛らしいリドは、もしかしたら誰もが見惚れてしまう程の絶世の美女になっているかもしれない。ブロンド色の、腰まで伸びた艶やかな髪と白く透き通る肌を惜し気もなく晒して歩く姿が容易に想像できた。
または、昔はやや男っぽい性格だったリドだから、きっと、髪を大雑把にまとめ、よく日に焼けた肌を太陽に照らさせながら、町中を人のために駆け回っているのではないのだろうか。
少し考えるごとに姿を変えていく愛しい人を想像し、エディルは自分の顔が緩むのを感じた。
やがて、エディルの足がピタッと止まる。
彼の目の前には、ブロンド色の髪の美女が待っているであろう自警団屯所が待ち構えていた。
少し震える手で呼び鈴を鳴らすと、程なくして心地好い低さの男の声が聞こえてきた。
しばらくして、扉が古臭い音を立てて開いた。
「…エディル?」
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