いきなり外から聞こえた声に、驚いて振り向けば女がいた。これ見よがしに制服を着た、何人かの騎士団員。
間延びした口調がイライラする。
「ど〜も、イージス領長の命によって身柄保護に参りました。キキと言います〜。これより〜出国まで、身柄を保護したいと思います」
「しゅ、出国…?」
「んんん〜、はい。もしかして、あなた〜このままこの国で暮らせると思ってます?」
思ってるわよ、当たり前じゃない。
なんで追い出されなきゃいけないのよ。
「話、途中から聞かせてもらいましたが〜あなた〜、本当に何も学ばなかったんですねぇ〜?」
「だから何?」
「同じ様に、まぁその時はナイジェル副官にでしたけど〜、暴言を吐いた人がね〜居たんです。翌日広場で瀕死のボッコボコにされてました。商店街の方々に」
「な、なんで…」
「この国で筆頭神官とその副官は重要な存在なんですよ〜自分達の宝とも言うべきですか〜?ムカつきますよね、そんな人に何も知らないぽっと出が身をわきまえず色々言ったら〜」
だから、こういう事が起こったら、だいたいは強制出国になるんです。
人命優先で私達が来たんですよ〜。
そう言われても、異様としか思えない。
ちょっと顔がいいだけの男じゃない。何がいいの。なんで私がこんな思いしなきゃいけないの。
「いいんですよ、別に〜。私達は命を受けて来てますけど〜、義務ではないんですよ、断られたら帰ります。まぁ、どうなっても知りませんけど〜」
「な、」
「ババア、諦めて出てけよ。もうこの国じゃ暮らしてけねぇって言ってんだよ」
頭に来る!頭に来る!!!
意味が分からない!
異常でしかない、あの男、神様じゃないのよ?!同じ人間じゃない!なんでそんなに私ばっかり責めるの!?
うるさい!信じられない!
嫌よ!
「煩いのはそっちですよ〜、いいんですよ、一応ボク達は執行権あるんで、殺してあげても」
言葉が通じない。
分からない。
なに?こいつら。
「さ、荷物纏めてください。ご家族には連絡を先に出しましたから」
「きゃっ!ちょっとやだ!放して!自分で歩けるわ!」
「逃げられて明日川に浮かばれても困るんで〜」
嫌よ!出ていきたくない!
やめて!放してよ!放してぇ!!!
「…ナイジェル、」
「はい、イージス様。お早いお目覚めですね」
ベッドに沈んだまま目線を横に投げれば、ナイジェルがお茶を淹れていた。
「頭が、割れそう、なにか悲鳴が聞こえる…」
誰か知らないが、ばらばらと大きな声が聞こえる。何を言っているかも分からないほど、酷い声がたくさんする。
だから嫌だったんだ。
あんな大待合室で。
またあんなことになるのが目に見えた。
「こればかりは何もして差し上げられないのが悔やまれます…もう一度眠られますか?」
起こされてみるが、身体が自分じゃ支えきれず結局支えられる結果に。
「あぁ、まだダルいし…変に力が入らね…」
わざと薄く淹れられたお茶は温かい。反対に額に当てられたナイジェルの手は冷たかった。
「ナイジェル、手、冷てぇけど…」
「僕は平熱ですよ」
「あー、まじで…」
ナイジェルは南領出身だからか知らないが、体温が温かい。ナイジェルの手を冷たいと思うのはまだ何かが効いてる証拠だ。
「まだ休まれた方がいいですね、お茶はもう良いですか」
「おー…」
背中の腕さえひんやり感じて思わず震えたら、首元に1枚毛布を足された。
「寒くないですか?」
下りてくる目蓋に逆らえず頷きだけ返せば、ナイジェルの手のひらが目を覆ってきた。
「おやすみなさい、良い夢を」
どうだろうな、見られるだろうか?
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CURIOUS