誰にも話していないことがある。
男性アイドルという、未開拓の分野の前線で、僕らが生き残っていくために、僕が為したこと。
僕にしか出来なかったこと。
僕だから出来たこと。
地べたを這うような思いをしてでも。
跪き足の先を舐めてでも。
僕は【BUCKS】を第一線に置いておきたかった。
僕らのあとに続く湊と志朗のためにも、しっかりとした基盤を築いておきたかった。
だからこそ、僕は。
僕にしか出来ない事をしてきた。
「瑞樹。そろそろ時間だ。起きなさい」
「……はい」
高級ホテルの一室。
ベッドに横たわる僕の髪を撫でたのは、芸能界でも屈指の権力者と囁かれる、某脚本家の男。
一糸纏わぬ姿でシーツに包まる僕は、男の声にやおら起き上がると、ベッドの下に散乱した服に目をやった。
脱ぎ散らかされたそれらを着るのは、正直億劫だと思う。
「…シャワーだけ浴びてきます。いいですか?」
「あぁ。いっておいで」
男の言葉に笑顔でもって返す。
だが、僕の表情とは裏腹に、バスルームへ向かう足取りは、重たかった。
今夜も反吐が出そうなほど抱かれた。
突っ込まれて中で出されると、後処理が面倒だ。毎回思う。
熱いシャワーを頭から浴びながら、僕はそっと指先を双丘に沈めた。
ゆっくり息を吐きながら指を曲げると、何か粘り気のあるモノが指にまとわりつく。
「………」
指先をゆっくりと其処から抜いて、眼前に持ってくると。
中指と人差し指の間に、体液が糸が引いていた。
僕は無表情にシャワーの飛沫に指先を曝して、すぐさまそれを洗い流す。
(……汚い。)
初めて僕が寝た相手は、今夜相手をした脚本家だ。
彼とはもう何度目だろうか。回数なんてもはや覚えてもいない。
夜中に寮を抜け出して、ホテルで落ち合い。
明け方にランニングでもしてきたかのような涼しい顔をして、寮の門をくぐる。一人部屋だから出来ることだ。
(尤も、二人部屋であるはずの陣でさえ、クラブだ飲みだ、夜な夜な放蕩しているけれど。)
僕が業界の物好きを相手にする目的。
それは、業界におけるコネクションの構築。
それ以外に理由はない。
僕が為しているのは、必要な足場固めだ。
陣、亮介、僕の3人が、まずは業界に顔を売らなければ意味がない。僕ら3人の働き次第で志朗と湊の誠真学園への入学が決まるとなれば、尚更だ。
誠真学園に入学して、アイドル候補生になって、2年生になってから。
陣と亮介と僕の3人は、少しづつメディアに取り上げられるようになってきた。
でも、まだ足りない。
まだまだ足りない。
もっともっと、テレビに出なければ。
歌わなければ。踊らなければ。
売れなければ、僕らに未来はない。
その為には。
どんなことでも、しなければ。
身体を求められれば、涙を浮かべて身体を開こう。
足を開けと言われれば、恥じらいを装い足を開こう。
16の頃。
僕の身体は、すっかり汚れきっていた。
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