繰り返したその行為が何度目かなんて、もう数えるのもバカバカしいレベル。
著名な脚本家の先生直々に指名があって、ぜひ一度会ってみたいとリクエストをされたことくらいしか覚えていない。
蓋を開けてみたらその先生がかなりの好き者で、美少年ばかりを好んで抱く男色家だったっていうだけの話。
よくあるでしょう?
「仕事が欲しくないかい?」っていう、あの囁き。
あれはね、本当にある話だよ。
「おめでとう、亮介。決まったんだって?ドラマの出演」
学園の食堂で、陣と亮介とテーブルを囲む。
昼食の最中亮介にそう声をかけると、亮介はどこかバツが悪そうに箸を止めて笑った。
「あぁ、どういうわけだか…一応な。決まったよ」
亮介の言葉を聞いて、僕は内心ホッとする。脚本家のメールは嘘ではなかった。
これでまたひとつ、実績が出来る。
「なんで亮介なんだよ!俺の方がどう見てもドラマ受けしそうなカオしてんだろーが!おまけに刑事モノとか!」
「やりたかったの?連ドラ」
「そりゃあ…主演ならな」
「お前らしいよ陣」
主演でなければドラマは出ないと言わんばかりの陣に苦笑いをしつつ、賑やかな昼休みはあっという間に終わってしまい。
午後のレッスンへと続く。
午後のレッスンはダンスレッスンとボイストレーニングだ。
幸い首の鬱血痕も薄くなってきたので、トレーニングウェアにも着替えられる。
午後1時から6時まで、みっちりトレーニングをされる。体幹の基礎を作るトレーニングから、歌うための筋肉作り。発声方法をレクチャーしてもらいながら、実際に音源を歌ってみる。
終わる頃には3人とも汗だくだ。
「お疲れ様ー…」
「あーー…今日も容赦なかったな…makkoの野郎…」
「makkoのレッスンが1番しんどい…」
スタジオの真ん中で3人で大の字で寝転がった、午後6時過ぎ。
僕たちの踊りの振り付けやボイストレーニングを担当するのは、makko(マッコー)という、うちのプロダクションでもNo. 1の実力派ダンサー。ちなみにmakkoは身長180cmくらいあるオネエのゲイ。見た目は…もういい、疲れるからやめておこう。
「僕、先に部屋に帰るよ…」
汗だくの体を引きずりながら、スタジオの扉を開ける。
まだ動けないでいるのか、陣は寝転がったまま「おー」とだけ返すと、そのまま亮介とスタジオに居残った。
陣のことだ、直に寮へ帰ってシャワーを浴びたら、そのままどこかへ出かけるだろう。
(そう、僕と同じように。)
今日の夜は、ペットの日だ。
例の脚本家先生の待つ高級ホテルへ行かなければならない。
(面倒だな……)
寮へと続く廊下を歩くその足取りは、決して軽くはなかった。
乗り気ではないのは昔からだ。
願いがひとつ叶った直後は、ただでさえないヤル気が余計に削がれる。
(今夜は体調が悪いとかなんとか言って…早く済ませて帰ろう…)
だが、のらりくらりと逃げおおせられるほど、現実はそう甘くはなかった。
「お前、昨日の夜中、繁華街にいたろ。…何してた」
まさか。
よりにもよって、寮を抜け出していた陣に見つかるだなんて。
思ってもいなかった……。
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