寮で暮らすの、オレ結構楽しみにしてた。
けど実際暮らしてみてわかったけど、男オンリーで、しかも全員が上昇志向の集まりって。
…結構ツライんだよね。
「あーあ。いいよなぁ、アイドル特待生様は。今日もレッスンで午後から授業サボりだもんなぁ」
「そうそう。おまけにアレだろ?3年に自分の兄貴がいるとかなんとかで、調子こいちゃってんの。どーせ血なんか繋がってねーくせにさぁ」
…もうね、本当。
……色々、ツライ。
「ッ…!!」
「ぐぁっ!!」
「うわぁっ!?やめろ湊!!おい!!湊ッ!?」
通りすがりの小言にブチ切れたのは、オレじゃなくて湊だった。
振り向きざまに上級生の頭めがけてカバン振り回して。
(あとで真哉さんから聞いたけど相手は2年だったらしい)
一発食らった先輩は、ここぞとばかりに湊をボコボコに。仲裁しようと割って入ったオレも、ついでのようにその辺にいた上級生にタコ殴りにされ。いや、一部やり返したよ!?そりゃ。
(でも本気出して一発顔面殴ったら、先輩の頬からメキッて音したから、オレ止めたんだよ反撃すんの!!)
だけどさ。
「俺は悪くない。向こうが喧嘩売ってきたんだ」
「だとしても湊。先に手を出したらこっちの負けだ」
医務室に駆け込んだオレと湊、そしてそんなオレ達の騒動を聞きつけ駆けつけた『血の繋がってないお兄ちゃん達』3人。
憮然とした表情の湊に、瑞樹くんが語りかける。その背中に湿布を貼りながら、心底困ったようにため息をついた。
勤務時間を終えて帰った医務室のおばちゃん先生曰く、オレも湊もしばらく背中と腹に軽い打撲痕が残るだろうってさ。
オレ、一応、カラダも商品なんですけど!!
(勘弁して!!)
「これが下級生相手にやることかな…」
「名前は分かってるのか?相手の」
医務室のベッドに腰掛ける湊の腕の痣を、瑞樹くんの指先がなぞる。亮介くんの問いかけに、オレは首を傾げた。
名前。名前。わかるわけない。ていうか、ついでに言うと。
「ぶっちゃけ誰に殴られたかもよくわかんないんだよね……」
そりゃ不特定多数に囲まれて袋叩きにあえば、誰が誰だか分かりませんて!!
あはは、と乾いた笑いで誤魔化そうとするけれど、それで誤魔化せる3人じゃない。
「………」
無言で医務室のドアを開けたのは、陣くんだった。オレはその横顔を見ながら何か嫌な予感を感じたけど、湊は顔を俯かせたまま。陣くんの方を見ようともしない。
きっと今回のことで、誰にも迷惑かけたくなかったんだと思う。
「陣……?」
「…わりぃ、ちょっと喉渇いた。食堂行ってくる」
そう言って、陣くんが後ろ手に医務室のドアを閉める。それを腕を組んで見ていた亮介くんが、後を追うようにそのまま医務室を出ていく。
それを見送った瑞樹くんが、深い深いため息をついて、湊の隣からその腰を上げた。
そうして、「ここから出ないでね」とオレたちに向かってにっこりと微笑んで、陣くんと亮介くんの後を追った。
湊と二人、取り残された医務室で、オレは目を細めた。
あぁ、この後の展開。
(オレ、なんとなく、分かるなー…)
……イヤーな予感。
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