「1年の神名殴ったヤツどいつだ」
嫌な予感は的中した。
食堂につくなり声を上げた陣に、連中は水を打ったように静かになった。
相手の名前がわからないと分かった時点で、陣がこうするであろうことは、なんとなく予想がついていた。
誰かがクスクスと笑っている気配を感じる。
そして聞こえた一言は、陣と俺の理性を断ち切るには十分すぎる一言だった。
「どっちの神名かわかんねーよ」
「ッ!!」
声のしたテーブルの方へ、陣が勢い振り向いた。
すると、鬼のような形相の陣に恐れをなしたのか、小さく声を上げて、椅子を倒した馬鹿がいた。
「ヒ、ヒッ…!!」
「テメェか!!!あぁ!!??」
椅子を倒しながら逃げようとした男のジャージを後ろから掴んだ陣の右手が、その場でその男を引きずり倒した。
椅子が倒れて、食器が散乱して。夕飯時の食堂に派手な音が響く。
陣は引きずり倒した男の胸ぐらを掴んで、揺すり上げている。
「テメェかあいつら殴ったのは」
「は、放せよ!!顔なんか殴ってみろ!!俺だってアイドル候補生なんだ!!お前もタダじゃすまねっ…!!」
言い終える前に、陣の拳がその男の頬にストレートを食らわせていた。
「テメェかって聞いてんだろうが…質問に答えろよ」
「陣ッ!!よせっ!!」
陣が二打目を食らわせたところだった。
これはただ事では済まないと感じて、俺はその2人の間に割って入ろうとしたが。
「スカウトされたからっていい気になってんじゃねーよ!!」
「ぐっ!!」
突然どこからか飛んできた野次と、どさくさに紛れて投げつけられた食器。
プラスチック製の平皿をぶつけられた俺は。
「今皿投げたヤツ出てこい……」
陣と同じかそれ以上に、青筋を浮かべていた。
「今皿投げたヤツ出てこい!!!」
……それから記憶はない。
気がついたら――…
「やめろ!!!やめなさい!!!これ以上は警察を呼ぶぞ!!!!」
監督官の先生の叫び声に、俺はピタリと動きを止めた。
俺と陣が手当たり次第殴って蹴って。
足元には死屍累々。
「…やり過ぎたね。左手が腫れた」
「お前…いたのかよ…」
瑞樹の細い左手が赤く腫れ上がってるのを見て、陣と俺はようやく、我に返った。
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