「だいぶ派手にやってくれたな」
学園の会議室に、俺たちは横一列に並んで整列している。
正面の上座に座っているのは、呆れ顔で俺たちを一瞥する真哉さんだ。
「…スンマセンした。カッとなって」
「カッとなって顔面を集中狙いか?腐ってもお前たちと同じアイドル候補生を」
「……スンマセン」
俺が頭を下げると、それに続くように他の3人も頭を下げた。ただ1人、湊を除いて。
それに気付いた俺が、湊の頭をグッと押さえ込むと、ようやく湊も頭を下げた。
「陣は悪くない……」
湊のその呟きは、俺の耳にしっかり届いていた。
頭を上げると、ため息をついた真哉さんが、湊に言葉を促すようにその眉山を上げた。湊は少しだけ俯くと、ムッとしたように口を尖らせた。
「…血が繋がってないことをバカにされて、最初にキレて手を出したのは…俺です。…陣も亮介も瑞樹も、志朗も。悪くないです」
「………」
湊の言葉に、真哉さんが黙り込む。
俺たちはどうしようもできない事実に何度も打ちのめされてきた。
血の繋がりがないこと。
それなのに、同じ『神名』の姓を名乗ること。
5人の義理の兄弟として扱う大人たち。
施設上がりの5人兄弟として扱う同級生たち。
今更どうしようもない事実を、俺たちは、何度も突きつけられ。そして何度も陰で嗤われてきた。
……それを黙らせるには力でねじ伏せるのが1番手っ取り早いことを、いつの頃からか、俺たちは学んでいた。
俺たちには親がいない。
親がいないから、施設のある地名から、姓を授かった。
『神名』
血の繋がりのない俺たちをつなぐ、たった二文字の名字。
真哉さんが、俺たちが暴れた理由をおもんばかってくれるかどうかはわからない。
俺たちは、真哉さんの前で、言い渡される処分を待った。
「神名陣。神名亮介。神名瑞樹。神名志朗。神名湊。今回の事件は、校内の生徒に、多大なる影響を及ぼした。暴力沙汰だ。…事の重大さは分かるな?」
真哉さんが上座からこちらへと歩み寄ってきた。そうして、俺たち5人の顔をそれぞれじっと見ていくと、厳しい顔で告げた。
「…残念だがお前たちを退寮処分とすることが決まった」
「た…退寮って…」
「そしたらオレたち、明日から…どうなっちゃうの…?」
瑞樹に続いて志朗が動揺する。
退寮、ということは。
寮から出ていけ、ということだ。
行くあてのない俺たちにとって、それこそ死活問題になる。
「待ちなさい。まだこの話には続きがある」
真哉さんは腕を組むと、俺たちの前に並ぶ長テーブルに腰を乗せ、やおらそこへ腰掛けた。
そして、肩を竦めて俺たちの顔を見回す。
(話の続き……?)
「確かに退寮は退寮だ。アイドル候補生の顔面を潰したとなると、看過、放置してもおけない…」
「………」
「そこで君らを、他の生徒から隔離処分とする、ということにした」
「隔離…処分……?」
隔離という言葉に眉根を寄せると、人の悪そうな笑みで、真哉さんが笑った。
「…ここからそう遠くない。歩いていこうか。…ついてきなさい」
真哉さんはそう言うと、会議室のドアを引いた。
いったい何が起ころうとしているのか、皆目検討もつかない俺は、ただ呆然とその背中を見送っていたが。
「…行こう、陣」
「お、おう……」
湊に背を押されて、俺も会議室を後にする。
(隔離処分……)
想像を超える処分に、俺は絶句していた。
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