「陣」

「今のは陣くんが悪い」

「僕もそう思う」

「私も同意見だわ」

「はぁ!?なんだよ全員で…!」


自室へ駆け込んでしまった湊を見送った直後、全員から一気に責められた。

ダイニングの椅子にため息混じりに腰を下ろしたのは瑞樹だ。呆れた、と言わんばかりのその顔に、俺はどこか納得できずにいた。

それでも、何となく、言い過ぎたか、とは思った。となれば、ケツを拭うのは俺の役目だ。


「行ってきて。湊のところ」

「陣くん」

「行ってこい」

「……クソ、めんどくせぇ……」


他の3人に後押しされ、湊の部屋へと赴く。

足取りが重い。






ドアを開けて、金髪の小さい影がベッドの隅に丸まって泣いているのを見て、「これはやらかした」と思った。


(あー、こりゃ……)

(やべぇな……)


鼻をすすりながら、湊が俯かせていた顔を上げる。真っ赤になったその目を見て、俺はすぐに直感した。


(これはめんどくせぇことになる)


そしたら、案の定だ。

行き詰まったときに何もかもぐちゃぐちゃにしようとする、コイツの悪い癖が出た。


「もういい。もうどうでもいい。なんかもう、バカバカしくなっちゃった」

「………」

「そもそもさ。陣のことが好きかもしれないなんて、そこからしてやっぱりおかしかったんだ」



(なんで今その話が出んだよ……)


これだ。コイツの悪い癖。

パニックに陥って頭の中がぐちゃぐちゃになると、あれやこれやと話を持ち出してきて、全否定するパターン。

ガキの頃からの付き合いで慣れてはいるが、いざ直面すると、女みたいで「めんどくせぇ」としか言いようがない。


「………」

「……ごめん」


しばらく沈黙する。

やっぱり予想どおりめんどくせぇことになった。

が、コイツをこのまま放置しておいても仕方ない。

俺はそっとベッドに片足を乗せると、湊を抱き締めようと手を伸ばす。

とりあえずの応急処置だ。

だが、それがまたいけなかった。


俺が伸ばした手を弾き、湊は俺をベッドの外へと押し戻す。

思いもよらなかった拒絶反応に、俺は目を丸くした。


「おい、ミナッ…!」

「やめろよもう!!俺が!!惨めになるだけだろっ…!!」


……惨め?


何言ってんだ?


(お前を抱きしめようとして手を伸ばして、その手を弾かれた俺の方が)


(惨めだろ……)


「ッ……うっ……」


呆然とする俺を前に、湊はさらに泣き出した。

予想だにしなかった湊の反応に耐えかねた俺は、湊の部屋を後にしようと踵を返す。


「………」



−−−−バタン、



そのまま振り返ることなく、俺は湊の部屋から出て行った。


……溝。


俺と湊の間に、決定的な溝が生まれた瞬間だった。



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