主人公編



昔話を少しだけしましょう。




私の両親と兄は4年ぐらい前に死んでしまった。仕事を終えて工場に行くと私たちの工場に普段では想像もつかない人だかりができていた。目の前に広がる炎を見ながらいったい私の何が悪かったのか、いい子にしていなかったからどうか。もしあの時両親のいう事を聞いていれば、とか子供に戻ったようにそんな事考えていた。




かろうじて見つかった母親の遺骨、頭に銃弾を撃ち込まれたような跡があり、それを隠すために工場すべてを焼いたのだろうという警察の話などあまり耳に入ってこなかった。どうして両親は殺されたのか、一緒にいた兄までも。




3人は焼かれてしまい、何一つ残っていない。お葬式で燃やす骨も、3人が好きだった有名歌手のサイン入りCDもすべて燃えてなくなってしまった。




何も残っていない。遺骨の無い葬式をあげて、お墓に入れる3人の所持品はあるけれど、それを好きだった彼らはいない。彼らを形作っているすべてのものが、あのお墓には入っていない。




家族が望んでいるかもわからなかったために事件の事を調べようにも一歩が踏み出せ無いでいた、けれど、死んでしまった人間に「私はあなたたちの死の真相を調べたほうがいい?」と聞いても帰ってくるのは何も発し無い空気だけ。聞いたって帰って来ない。だったら自分が納得するほうを行くのが最善だと思い。私は家族の死の真相を調べることにした。




調べていくうちにやはりというべきか、あの組織が関わっているのではないかという情報を手にいれた。別段うちの家族は組織と関わりのある仕事をしていたわけではない。どちらかというと警察に関わる仕事をしていた。




それが原因なのだろうか。




そもそも、組織に殺されなければいけないほどのことを両親がやっていたとは限らないし、もしそうだとしたらなぜ、私は殺されていないのだろうか。




あんな殺し方をして葬り去った家族の生き残りなのにも関わらず、私を殺しに来ないのは些かおかしいのではないだろうか。




私は、待ち合わせをしている彼を尋ねるべくあるお店に足を向けた。


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