1:新しく生まれ変わるの


たぶん私は死んだんだと思う。
だってあんな大きな車、たぶんトラックだと思うけど、あんなのに撥ねられたんじゃ一溜まりもないもの、きっと死んしまったんだと思う。家族には申し訳ないけれど、さようなら。









私はあの時死んだと思ったのでけれど、なぜか真っ黒な空間に立っていた、一人で。何も感じない、寒いとか熱いとかも何も。死んでしまった時の服装でそこに立っていた。不意に声が聞こえる。
「あなたの死は偶然が招いた悲劇、かわいそう。」
あぁ、わかった。小説サイトとかでおきまりの展開だ。どこか希望の世界に飛ばしてくれるんでしょう。なら願うことは一つ。私が死んだ世界、元いた世界に返して欲しい。他の世界なんて行く価値がないもの。死んだのならそれを受け止めて幽霊として彷徨うのも悪くないと思う。



「かわいそう、かわいそう。」



「さっきから、かわいそうかわいそうって酷くない。もうちょっと励ましたりしたらどうなの。」



「あなたは他の世界で生きてく権利を持っている。」
ほらね、おきまりの展開。わかっていたから。



「別の世界は選べない。」



私が望む世界は・・・ひと・・・つ。



「代わりに願い事を3つ叶えてあげよう。」



「ちょっと待って、行く世界を選べないってどういうこと。」



「死んでしまったのは偶然が招いた悲劇、しかし、生き返ることができるのにさらに生き返る場所まで選ぶとはなんたる傲慢な態度。」



傲慢って。酷くない。励ましてもくれない上に傲慢とは本当に失礼な人だわ。



「あなたはこれから行く世界で重要な役割を持っている、役割は一つではない。」



「一つではないって何個も世界をうろちょろしろっていうの。」



「あなたの願いを3っつ叶えてあげましょう。」



話を聞けよ、おい。



「あなたの願いは?」



普通に考えてこれから行く世界は多分危険に満ちていると思う、人が死んだりすることもある世界もあるかもしれない。行く世界は一つじゃないようなことも言っていたし。もしそうなるようなら必要なことは一つ。



「力が欲しい、一人でも、危ない世界でも生きていける力が、頭脳が欲しい。」



「頭脳は私ではどうにもできない。」



このやろう.



「だが、生きてくために必要な力なら分け与えることができる。これから生きてく世界での出会いは一つではない、その力が必要な時も、必要ではない時も時として存在する、それを理解できるか。」



「見くびらないでよ、空気は読める方なの。」



「それを聞いて安心した、あなたにならあの世界を任せられる。」



「願いはあと二つ。」



二つ、容姿を変えるか?でもこいつさっき「頭脳はどうにもなりませ〜ん」とか言いやがったからな。作りの問題はダメなのか。でも頭脳って鍛えればどうにでもなるもんだと思うんだけど・・・。鍛えればどうにかなる問題がダメだとしたら容姿はなんとかなるんじゃないか。あ〜、だめか、昨今整形技術がすごくてまるで別人なんてこともあるし。イケメンとかわいこちゃんの間に生まれた子はなぜかブサイクでした。遺伝子に嘘はつけないね、って展開もあるし。



「二つ目の願いは・・・」



「ちょっと待ってよ、考えてるんだから。」



「願いを。」



「容姿を変えるとかはできないの?」



「容姿は生まれ持った・・」



「わかったわかった、みなまで言うな、悲しくなるわ。」



「容姿を変えることができる力なら授けられる。」



おいおい、どこの変装漫画だよ。



「本当にできるの。」



「この力を授けられるものは数少ない、私に感謝するがいい。」



「はいはい、感謝感謝。」



「願いはあと一つ。」



あと一つ、あと一つは。



「あと一つはまた今度でいいかな?」



「・・・よろしい。願いが決まったら私を呼べ。」



「何て呼べばいい?」



「なんとでも、呼べば必ず現れる。」



それって私のことずっと見ているって事じゃない。新手のストーカーよりタチが悪いんじゃない。



「では一つ目の世界へ。」



やっぱり、行く世界は一つじゃないってわかってたけど。まさか本当にいろいろな世界を生きていく事になるとは、とんだフィクションね。


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