赤の衝撃


私は今、すべての女性に降りかかるであろう月に一回の苦痛と全力を持って戦っている。何が楽しくてと文句を言いたくもなるがこればかりは女性に生まれてしまった以上避けては通れない道なので文句も言えないし、文句を言う元気もない。幸いなことに今日は何も予定がないので薬を飲んで布団に入りゆっくり休んでいよう。そう、寝てしまえばこんな痛みも感じなくて済むのだ。




この独特の痛みを痛感している女性と、はたまたそんなの出たことがないという女性がいるのだから世の中不思議なものである。私が苦痛で顔を歪ませている間も、同じように月に一回の出会いを果たしている女性の中には今日も元気に会社に言っているものもいるのだろう。その元気を分けて欲しい。




多分私が特に酷いだけだとは思うがこれはなかなか、上からも下からも出るような苦痛は今日も元気に私の腹を痛めつけている、普段あれだけ美味しいものを入れてやっているのに月に一回は顔を表し私を痛めつけているこの痛みによもや悪態を付く元気なんてない、




台所に行き薬を飲むがその痛みは治まらず、布団に行くという気合も空しく寝室へとつながる廊下の真ん中でヘナヘナと力なく倒れこんだのは良いのだが。




「床が冷たい。」




冷え、というのはこういったものに一番よくないものだ。だが今の私の腹の中は一頭の大きな大きなサイが荒れ狂うようには地響きを轟かせて走っている。もしくは、現役のお相撲さんがこぞって集まり一斉に四股を踏んでいるような感じだ。わかっていただけるだろうか。




あれから何分この冷たい床と相対しているのだろう。もう目を開けているのも嫌だ。このまま寝てしまおう。幸い薬を飲んでいるのだからどこで寝たって30分もすれば聞いてくるだろう、硬い床が今日の私の寝床だ。よろしく、床。




ガチャ




玄関が開いたような音がしたが気のせいだろう、私がこの家の鍵を渡しているのは一人だし、その彼は今日は仕事が山済みだから夜も寝られないとかなんとかいっていたようだし。




「何をしてるんだ?」




あれ?この声もしかして彼なんじゃないか。もしかして彼女の危機を察知して仕事を切り上げてきてくれたとかそんなかっこいいこと言っちゃうんですか、いけめん。




「誄?」




「赤井さん。」




「大丈夫か?」




「こんな姿で申し訳ないのですが、いらっしゃい。」




「・・・あぁ。」




「すみません、今なんとも起き上がれないのでこのまま放置してください。」




「そうもいかんだろう。」




さすが日頃から鍛えていることだけはある、私なんて本当になんて体重なんだとは言いたいし体重増加に気をつけていないわけがないわけだがやはりそこは、女性として気にしないわけがないのだがそんな私を尻目に軽々と抱き上げられた体は、今まで冷たく私を迎え入れていた床と違い赤井さんの体温が一気に流れてくるような感覚がする。




「赤井さん、あったかいです。」




「そういうお前は冷たいな、床になんか寝ているからだ。」




「返す言葉もございません。」




「熱は?」




「ないです。」




「痛み止めは飲んだのか?」




「・・・よくわかりましたね。」




「慣れているからな。」




「女慣れてやつですか、さすが、イケメンは違いますね。」




「・・・一度、寝たほうがいい。」

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