荒んだ心
「ねえトム」
「…………」
「ねえってば、トム」
「………うるさい出て行け」
トムの部屋に入り、わたしはトムに話しかけたがかなり気がたっているようで、強い力で体を押されよろめき転ける。
そんなわたしを一瞥すらくれないトム・リドルは、本当に冷たい人間だと思った。
床に転けたままのわたしは、懲りずにまた立ち上がってトムの隣に腰を下ろした。
「ねえトム、さっきの窓ってトムがやったの?」
「……………」
トムは黙り込んだまま窓の外を見ている。
「トムも、魔法が使えるの?」
何となく歯痒く感じて、思わずトムにそう聞けばトムは驚いたように素早く此方を見た。
「なんだって?魔法?」
「そうよ、魔法、物を浮かしたり動かしたり出来るの」
そう言いながらわたしはゆっくりと本を浮かしてトムの前に落とした。
「あまり、上手じゃないんだけど、」とわたしがそう零せば、そんなの関係ないというようにトムはキラキラとした深紅の瞳でわたしを見た。
「これは、魔法なのか?」
「そうよ、魔法よ。トムも使えるんでしょ?だって貴方、パーセルマウスだし、」
わたしがそう言えばトムは「そうか、」と濃く輝く目を細めた。
「僕も、実は物を操れる」
もっと小さな頃からだ、そういってトムは部屋の端に置いてあったロッカーを見つめた。
そうするとその扉が開き、本がトムの手から離れロッカーに閉まった。
この一連の流れは全てトムが魔法で行ったものだった。
「トム、貴方って、凄いわ。わたしお母様に聞いたのよ、幼いときから物を浮かしたり移動させたりするのはとても才能あることだと言われたわ」
興奮したようにわたしが「貴方特別なんだわ」とそう言えばトムも嬉しそうに少し顔を綻ばせた。
「これまで何度も医者が僕を訪ねてきたけどやっぱり僕はどこもおかしくないんだ、」
僕は特別なんだ。
そう言ったトムの目は、先程収まっていたのにまた紅く染まっていた。
「…ねえトム、貴方のその目、どんな時に紅くなるの?」
わたしがそう聞けばトムはまた無表情に戻り、知らない、と顔を逸らす。
「……みんな僕のこの目を見ると悪魔みたいだと言うんだ」
「悪魔?どうして?そんなはずないわ。だって、…」
トムが逸らした顔を手で挟み此方に向けさせる。
「だって、…貴方の目、本当に綺麗なんだもの。」
そう言ってトムの瞼にキスをすれば、もう紅くない瞳でトムはわたしを見つめた。
「名前」
その時、初めてトムはわたしを名前で呼んだ。
「明日君に、面白いものを見せてあげる」
次の日、ビリーのウサギが首を吊って死んでいるのをビリーの泣き声でわたしは知った。