その壁を押せば
トムは分からないことがあれば全部聞いたり調べようとしたし、世間知らずなのかと思っていたが意外にそうではなく、トム自身も色々なことを知っていた。
知識欲が凄い男の子なんだな、と思った。
しかし、それでもトムはわたしから少し距離を置いていた。
トムからの見えない壁を、わたしは感じていた。
けれど、これは意外にもすぐに壊されることになる。
その日わたしは部屋に籠り、1人で本を読んでいた。
仲良くなった小さな蛇が擦り寄ってくるのを感じながら本をゆっくりと捲れば、外から声が聞こえた。
それは決して大きな声ではなかったけど、わたしにはすぐトムと、ビリーという男の子だということが分かった。
そうっと部屋を出て、外に出てみればビリーとトムが口論していてビリーは今にも手が出そうだった。
ビリーの方が体格が大きくて強そうに見えたのでトムが心配になり、この口論を止めようと一歩踏み出そうとすると、トムの深紅に光る目が見えた。
それを見たビリーがすかさず、「悪魔だ、悪魔だから捨てられたんだオマエは」と罵った。
気味が悪い、とビリーが言ったところでトムの様子がガラリと変わった。
トムの手に力が入ってるのが分かった。
すると、すぐ側の孤児院の窓が大きく音を立てて割れ、破片が辺りに飛び散りビリーの頬を裂いた。ビリーは恐怖と驚愕で目を見開いた。
これ以上は、危ない、と思ったわたしはたまたま近くの廊下を歩いていたミセス・コールを呼んでこの喧嘩を止めた。
ミセス・コールは心配そうな顔で2人を部屋に送りわたしに喧嘩の原因は何かと聞いたがわたしは分からないとだけ答えた。