言詠紅華
そんな彼を見て、ある者はこう呟いた。
「あの人が身に着ける宝石は、どれも輝きが失われている」と。
優雅に佇む彼を照らすように、窓から差し込む月の光。
彼の周りにある宝石も、月光を受けてキラキラと静かな輝きを放っている。
どんな場所に居ようとも、宝石そのものの状態に変化がない限りは、その美しさが失われることはない。
にも関わらず、輝きが失われている≠ニいう言葉。
傍から見れば、何を言っているのかと疑問に思う言葉だろう。
しかし、彼のことを真に理解する者は皆言うのだ。
──彼自身の美しさに勝る存在など、この世に在りはしない≠フだと。
「Bonne nuit et fait de beaux rêves.」
(おやすみ、いい夢を)
彼は身に着けていた指輪をひとつ、装飾箱に仕舞う。
そしてまた別の指輪を取り出した。
今日もまた、新たな宝石に彩られ、彼の輝きは増していく。
@_____kotoyomi