夢伽莉斗-男ver.
ようやっと待ち合わせに現れた男を見て、俺は盛大な溜息をつく。いつもこれだ。
ぴかぴかの宝石をこれでもかというほど装い、ピチッとしたジュストコールを羽織り、男のくせに高いヒールブーツを履いてくる。
たしかサファイアがいちばん好きだと言っていたな。そうなんです、本日のコーデも青が基調にございます。銀の鎖をそこかしこにぶら下げ、細い肢体に合わせてシルエットの引き立つ黒いパンツを履いている。風に揺れる長いサファイアピアスは引きちぎってやりたい。
はてさて、服だけなら許してやってもいい。酷いのは顔だ。人間のフリをする気はあるのか?
そんなお姫様ご愛用ビスクドールごときご尊顔じゃ、騙せるものも騙せねぇ。人間サマはそんなに肌が透きとおってはいないし、男の指はそんなに靱やかじゃない。瞳の色は鮮やかすぎる。目ん玉にコバルトブルーの絵の具でもぶちまけてきたか?
「おい、人間に見えねぇぞ。宝石も付けすぎだ」
人外代表みたいな顔したこの男──ラムズ・シャークは小首を傾げ、銀糸の髪をさらと揺らした。
いい、いい。俺にまで媚を売らなくていい。
「付けてても問題ねえだろ」
「顔は? 人間に寄せる気あるか?」
男はしばらく考え込むような素振りをした。
素振り>氛氓「えす、フリってだけだ。こいつが首を傾げるのは単に、ふむ、なんと言えばいいものか……あれだ。人間の女がわざとらしくてらてらの唇に指を当てるのと同じだ。
「ない」
はい、一刀両断。
「いやいや、魔法でもなんでもいいから黒子でも雀斑でも足してこい。化粧するか? 顔に生気がないからまずはチークだな。黄金比すぎる顔は見てると不安になってくるぞ。オレサマがもうちっと人間になるようにしてやる。それから──」
彼は呆れたように手を振り、澄んだ視線を気怠く放る。
「いらん。今までもこれでやってきたんだから問題ねえよ」
「はぁ? そもそもお前、そんなに見てくれがいいと宝石が泣くぞ。だってどう見ても宝石よりお前のほうが美し……」
あ。しくった。
碧玉の中に轟々と青炎が蠢き、色のなかった表情が嫌忌に染まる。鋭い声が脳天を貫く前に、俺は光さえ度肝を抜かれるスピードで一目散に逃げてやった。
どうすんだろ、あいつ。俺がいなくて大丈夫かな。
腕を背中側で組み、夜空を見上げながらひゅうひゅうと口笛を吹いた。あの星、今日のラムズの服に似てるな。コートの裾や襟にまばらに煌めくダイヤモンド、特に本人と似た規則的で整然としたカットが視界をチカチカさせるところ。
「……っと、見つけた」
ふむ、追いかけっこはまだ終わってなかったらしい。
@Rito_mythA