02
「公子いつもありがとうねぇ〜。今日もご飯が疲れた身体に染みるわぁ。どこにでもお嫁に行けるわねぇ」
「なっっ!まだ嫁にはやらんっ!!!公子にはまだ早かろうて!」
「えっ!姉ちゃんお嫁に行っちゃうの!?」
「お姉ちゃん行くならあたしも行きたぁい」
「なっっっ!結も行くだと!?だめだ!だめだ!!あまりにも早すぎる!」
「もーお父さん落ち着いて。お米が飛んでるから。お母さんも簡単に言わないでよ〜。大丈夫よまだ行き先ないから」
「公子は料理も上手いし裁縫も火おこしも家の事なんだって任せられるからな!その時期が来たら、うんと男が押し寄せるに決まってる!!」
「あらあなた、公子がすぐにお嫁に行ってしまうわよ?」
「〜〜〜っ!それはならんっ!!」
我が身ながら親バカだよなぁ〜とお米を継ぎながら思う。
百姓の家に生まれて、幼い頃から家を任せられる事の多かった私は父が言うように家のことなら、何でもできる。
しかし、それだけで嫁に行けるほど世の中は甘くないことを知っている。器量が良くなければ男はやってこない。街に行けば傘を差したご婦人に目が釘付けの男性陣を見かける。そのご婦人に比べたら、いや、比べなくても自分の顔が地味であることは自覚している。鏡を見る度にもう少しだけ瞳が大きければ、もう少しだけ鼻がつんとしていれば、とため息をついてしまう。自慢出来るのは髪の毛くらいか。
▽▲▽▲▽▲▽▲
「さあ火を消すぞ。みんなおやすみ」
おやすみなさーい、おやすみなさい、おやすみぃ
真っ暗になった空間で、それぞれ父に返事を返す。
さぁ、明日も早いぞと目を瞑るとゴソゴソと隣に動く気配がした。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
「ん?2人ともどうしたの?」
「しーー!」「姉ちゃん小声で喋って」
しーーと人差し指を立てて口元に当てながら、そこそこの声量で2人が話すもんだから、ふふっと声を出してしまう。
「「しーーー!!」」
「んふっ。…ごめんごめん、しーだね。しーしてどうしたの?寝れない?」
「んーんー」
違う、と頭を左右にふる。
それぞれ一つの布団で寝るようになったし久しぶりに寂しくなったんだろうか?と、2人からの返事を待つ。
2人とも神妙な顔つきで、しかしもじもじしながら「朔があげてよ」「結がいいだしたんだろ」とお互いをどついている。
「どしたのー明日も早いからお姉ちゃん寝るよ〜?」ぽんぽんしようか?
布団を手で叩くと、またふるふると左右に首を振ると2人で顔を見合わせて頷くと意を決したように、これ!!とそこそこの声量で手を突き出される。
「んー?なあに?」
くんっと匂いを嗅ぐと草と土の香りがした。
「あのね!あのね!お父さんがお姉ちゃんお嫁さんに行くって言ってたでしょ?お嫁さんって綺麗にしなくちゃいけないでしょ?お姉ちゃんに綺麗になって欲しくて朔と話してお花を沢山とってきたの!」
「木になってるやつもとってきた!俺たち姉ちゃん綺麗になってほしくて!!!」
夕飯の時の話を本当に私が嫁ぐと思ってしまったらしい。
どこに隠していたのだろうか、両手いっぱいの野花たちは触る限りクタクタにしおれている。春先とはいえ、夕暮れはまだ暗い。そんな中で届く範囲見える範囲で一生懸命に私を思って取ってきてくれたのだろう。
「ふふっ。朔、結ありがとう。お姉ちゃんまだお嫁には行かないのだけれどね。せっかくだから2人が1番お気に入りのお花を髪にさしてくれる?」
「うん!あたしはこれが1番お姉ちゃんに似合うと思う!」「俺はこれ!!高いところにあってとるのも大変だったんだ!」
左右の耳の上に、ちょんと2人から花をさされる。ちょっと土がついているのはご愛嬌だ。
「似合う?」
「「似合う!!!」」
薄暗い中で、はっきりと見えてないだろうにうんうんこれだよこれと、2人は腕を組み満足気に頷いている。
「さ、明日も早起きだからね。2人とも寝ようか」
「「はぁ〜い」」
母のしのび笑う声と父の鼻を盛大にすする音の中、もう一度目を瞑った。
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