体中を甘い刺激が支配していく予感に身震いした。まだ触れられてすらいないというのに、身体の奥底から何かが沸き上がるような感覚に小さく息を吐く。それだけで精一杯なのがこの男には分かっているのか、くすりと笑う気配がした。
私は、彼の熱を宿した瞳にどうやら滅法弱いらしい。見てしまえば最後、思考を奪われ時間が止まったかのように身体に痺れが走る。怖いのではない、残酷なほどに、酷く、艶かしく、甘いのだ。
一瞬目を開けた時に垣間見た、彼の熱に侵された瞳が、頭にこびりついて離れない。
「また目を瞑っているね」
この男はいつもそうだ。普段は飄々としており掴みどころのない性格で何を考えているか分からない。そして飽きもせず一緒に心中してくれる美女を探している。そのくせふとした瞬間に誰よりも鋭い眼光で人を射るように見るのだ。瞳だけで人を捕らえ、全てを見透かすように圧倒させる眼力がある。ーーーそして、その瞳はときおり私だけを執着に狙い打ちしているように追っている。
「目を、開けてはくれないのかな」
「...っ、....やだ」
「んー、まあ、それはそれで無防備だと思うのだけれどね」
「っは、ん..っ!?」
唇が押し付けられ、誘うように舐られる。感触を確認するように、あるいは唯々楽しんでいるのか、何度も噛み付かれ、その度に漏れそうになる声を抑える。シーツをきつく握りしめていれば指を一本ずつ解すように絡めとられ、じっとしていられないほどの熱と羞恥心で身動げば吐息を零すように笑われるのだ。
上唇も下唇もご丁寧に啄まれ、力が抜けた瞬間を見計らい薄く開いた隙間からぬるりと舌を侵入させられる。舌で包むように撫でられるとジクジクと甘い疼きがして、負けじと握られた手を強く握り返した。
「ほら頑張って、ワタシを焚き付けた、たった一人の悪女なのだから」
恋人相手に悪女なんていうやつがあるか。咄嗟に目で訴えようと開けた視界の先で、褐色の瞳が至極愉しそうに意地悪く吊り上がった。
「そんな睨むような目を向けてもね。事実だろう、心中を望んでいた私を、ーーーーー呪ってみせた」
「...」
「困ったことにね、私の予想を遥かに越えた想定外ことを、君は私に教えたのだよ」
ふと、彼の人差し指が私の唇に触れる。纏う空気が変わった。
「愛することは、いのちがけなのだとね」
艶やかに揺れる瞳が、ふわりと揺れた柔らかな髪が、息が止まるくらい濃厚な色香を漂わせている。静まり返った広い部屋で悩まし気な息遣いのみがかすかに響いた。目が、逸らせない。
ーーーやはり、目を開けなければよかった。
「だから恋人の君は全身全霊で、死ぬまで私に愛されなくてはならない。手加減なんてしてあげない」
ーーーーこの男...太宰こそ、私を呪い殺す気だ。
「お、お手柔らかに、、」
「やだよ、 人の話聞いてた?」
「....す、すこし、くらい....てかげ「しない」
懊悩が頭を支配する間もなく、私の視界は太宰によって天井さえも遮られてしまった。
ー−−−−
腰が溶けそうなほどの快感に爪先が伸びて、震えるように息を吐く。深く呼吸をしたいのに、息をしようとするだけで口からは嬌声が漏れてしまい、それが更に自分自身を追い詰めた。甘い快楽が煮え滾るような迸りとなって駆け巡っていた。
ぐっしょりと濡れた入り口を掻き回されて、掬い上げたどろどろの液体を敏感な突起に擦り付けられれば、抵抗の言葉は全て意味をなさない。既に太宰の色香に嫌というほどあてられた私の身体はすぐに火が灯り、奥の方から乱暴なまでの快楽と熱が湧き上がってくる。その熱をどうにか逃がしたくて腰を捻り足でベッドシーツを蹴るも、太宰は愛しそうにこちらを見るだけだった。どうにかなりそうで何かが堰を切りそうで涙が頬を伝うと、それさえも唇で吸い上げた太宰は、あの瞳で私を見た。
「かわいい」
「もっ、だ、めっ…だざ、!」
「....おかしくなりそう?」
彼の腕に必死にしがみつきながら頭を縦に振る。これ以上達したら身体が壊れてしまいそうなのだ。だからだめだとそういったのに、この男は困ったように眉を下げて笑うだけで。何度目かの軽い絶頂に両手で顔を隠せばベッドに沈んでいた身体を起された。力の入らない身体ではそのまま逃げることができず足を跨がせて太宰に背を預け膝に座るような形になってしまう。足が、閉じられない。
「私はとっくにおかしくなってしまっているよ」
「っ、ぁ、」
「私の部屋可愛い可愛い恋人がね、私をそうさせたんだ、狡いと思わないかい?」
「ーーーーッ!」
首筋に歯を立てられ甘く噛まれながら、胸の先端は爪で引っ掻くように刺激される。同時にぐちゅりと大きな水音を鳴らして指が中に入り、中で一番感じやすかった部分を擦り上げられる。逃げようにも逃げられず、胸を突き出す形になれば太宰は先端を嬲るように責め立てる。それに耐えられなくて無意識に腰を引けば、それを追うように太宰の指が中で奥を擦りつける。
「あ゛ッ ん、 ぐぅ…………イっく、」
「ねえ、私の瞳を見て」
「う.....ぐ、っ、」
「はやく」
執拗な愛撫が訳が分からないほど気持ち良くて苦しい。びりびりとした未知の感覚が奥底から広がって、どこかに逃げたいのに逃げられない。襲い来る快楽と熱を制御する術も知らないのに止まらない。焼き切れた思考では、太宰の声ですら絶大な媚薬だった。
あまりの快楽に背中が弓なりになり、どうすることもできず視線を上に投げればこちらを見下ろす太宰の瞳とぶつかる。それだけでーーーーまた達してしまった。
イっている最中にも敏感な部分を指の腹で擦られたり、ぐるぐると掻き回されたり、とんとんと小刻み叩かれる。それだけじゃない、掠れた声を塞ぐように上からは唇が奪われる。呼吸ができない。まるで自分だけがぐずぐずに溶かされていくようだった。
やがて唇を離した太宰はそのまま胸やへそをたどり、太腿を押し上げて濡れた蜜穴を舌先でなぞった。ゆっくりと花弁を割くように上へと舐めあげ、深く口付けるように唇を押し当てる。それに耐えられず腰を揺らせば太股を固定されたまま執拗に膨らんだそこを思い切り吸われた。
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