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「服部さんっていつも余裕があるといいますが、焦っているところ見た事がないです」
「俺は…ありますよ。目の前にいるのは誰なんだろうと疑問を持つほどに焦燥を隠せずに顔に出していた服部さんを見たことが」
「え、そんなことが、」
「鴉真さんが毒ガスにかかったことがありまして」
「!?犯人が毒を使って抵抗したということですか?」
「ええ。ですが、身体は痺れても意識は保っていられるのほど少量で、他の刑事達は命に別状はなかった。ただ、鴉真さんだけが違ったんですよ」
「…どうして、」
「分かりません。ですが彼女はすぐに倒れたんです。顔面蒼白、呼吸も不定期、病院に運んでも脈拍が安定せず2日は目を開けませんでした」
「!後遺症とかは、」
「いえ、もうすっかり回復したんですよ。…九条家の新堂という男にかかってから」
「えっ、…新堂さん!?」
「その時服部はんは二度、表情を歪めていましたね。一度目は彼女が倒れた時、二度目は新堂に助けられた時」
「…そんなことが、」
「鴉真さんは恐らくですが、ら服部さんでも分からない何かを持っていると思います」




「服部さん、これ」
「ラブレター?」
「ええ、貴方に、交通課の子から」
「なんだ、鴉真じゃないの」
「私から欲しいんですか」
「そりゃあねぇ…ストレスが溜まった時破いて捨てる材料になる」
「今度大事な書類渡しますので是非そうして絶望に駆られてください」
「怖いねぇ」
「どっちがだよ」
「で、どう返答すればいいの」
「いや何故私に聞くんですか」
「鴉真はなんて答えて欲しいのかなって」
「色恋事に巻き込まないでください」
「おや残念」
「服部さんもさっさと相手見つけて落ち着けばいいんじゃないですか。きっと性格も今より丸くなりますよ」
「じゃあ相手になってくれる?」
「稽古の相手なら喜んで」
「つれないねぇ、…餌を蒔かなきゃだめってことか。何がいい?ミミズ?」
「魚じゃねえよ」
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