知らないけど知っている他クラスの男子が目の前で泣いている。そりゃもう、感動ものの映画100選連続視聴でもしたのか?といわんばかりに涙を溜めて、流して、を帰るために下駄箱にいた私にむかって繰り返す。私を見た途端に涙腺を決壊させたらしい彼は金の染め髪をして制服を着崩した所謂不良というやつで、私は彼に喧嘩を売った覚えもなければとやかく言われたり顔を見て泣かれる筋合いは無い。
というか、知らない。
さて?私は彼に、なにか嫌なことをしただろうか?と考えてもそれほどかかわりがない。彼は、うちの学校のマドンナ的存在の「タチバナヒナタ」の恋人の「ハナガキタケミチ」。それくらいしか知らない人だ。なのに、なぜ?泣いているんだろう。
赤いリーゼントの彼の友人らしい人が隣でギョッとして「どうしたんだよタケミチ?!」と言っているが、それには反応しないらしい彼。向こうのほうから3人で固まった不良が歩いていているのもみえて、たしか彼らは5人ほど集まって行動していた不良だったな、とぼんやり思い出す。
「なにか」
自分でもあんまりなほど冷めた声が出た。泣いてる人間にかける言葉ではない音声の、なんの感情ものらない声。赤リーゼントの彼はそれにもギョッとしてこちらを見て、なにがなんだかわかっていない顔で彼を見て、また私を見てを繰り返している。こういう赤ちゃんいるよね、あっちこっち見てるの。
ズルズル鼻水の音をたてて、鼻声の濁声の、泣いているからバカになっているらしい音量の「ぁ゛っのっ」という声が彼の口からこぼれ落ちてくる。
「はい」
「お友達に゛っなっでぐだざいっ!」
下駄箱から廊下までウワンと響くような涙にまみれた大声と、営業マンでもそこまで直角に曲がらないだろう頭を下げながら、ビシッとこちらに伸ばされた手。隣で意味がわからなすぎて表情を無くす赤リーゼントの彼。3人の塊の不良たちの行動停止。地獄絵図かなにかか?
「は?」
私の口も正直すぎるけどね。うーん、これは仕方なくない?
← →
戻る TOP