涙が、見たことの無い綺麗な、きらりと彼女の瞳から涙が流れ落ちる、それが、見たことのある綺麗なものの中で一番綺麗だと思った。この世に生まれ落ちて初めて、前の世で見た美しいものたちなんか比じゃないほどに、とても、とても、死んだと思っていたこころとやらが震えて、息がしにくくなった。紙面で見ていた平面の世が、こんなにも美しいのかと、綺麗なあの涙が。綺麗なものが目にとまった私のこの世は色が溢れたかのように輝いて、しかし、これから死ぬことはわかっている行動を起こす興味を沸かせた。だから、心底楽しくなって笑いながら藍染に拳を振り上げたのだ。







「話せるかい、AAA」
「…どーも、隊長さま」
犯罪で捕まっているのに面会者とは意外と尽きないもので、ガラの悪いしかしよく馴染む同僚や好奇心が押さえられない者、救われたと擦り寄る狐、そして、元隊長さま。羽織も相まって白すぎて光でとんでるだろ、と思わなくもない隊長さまはにこりと笑ってみせた。
隊長さまとはとくに関わりを持ったことはない、たぶん。事務的な会話はした気がするが、平面の、インクで書かれたそれらを認識するには昔の私は微妙な心境だったために覚えていることは少ない。そして、その反動か、はたまた元からの私の性格が影響したのか、世間で言うがらの悪いやつらとする下せた会話がなにより馬鹿らしくなにより現実だった。もちろん今も。
「怪我の調子はどうだい?」
「上々ですよ、もとから治ってますし?」
「はは、そうかい」
は〜〜この、清廉潔白みたいなのが苦手なんだよな。京楽隊長殿と一緒だった時間が長かったらしいためそうではないだろうが、だが、しかし、白い見た目に病弱な身体といわれれば感じるものは変わってくる。男にマワされとけって思ってしまったのは何回かあります。すまない。
「時間はまだある。だからこそもう一度言うねAAA」
相変わらずこの人は付き人すらつけないでこの牢にくるのだから困ったものだ、その対応や声に含ませた真剣さをこちらは受け取る気すらないのに。
「本当のことをつつみ隠さず話してくれるかい」
愛染に加担していたこと、そこでなにをしていたのか、誰を殺し、誰を消して、生者を死に追いやったのか。ざっくりと私が任されていた仕事については話しているが、詳しいことは話す気すらない。だってそれは「原作」だ。理解されないし、してほしくないもの。
「ははっ話すかよ」
それに、これは私だけの綺麗なものだ。愛染に加担して終わるはずだった私が得たものだ。誰にも渡してなんかやらない。

end


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