※奴隷時代
「今日の飯なんだと思う」
奴隷兵達は今回の戦線が終わり、皆が目を閉じて血に飢えすぎている身体を抑えていつもの静かなる自身に戻していたときに、入り口に一番近い男がポロっとこぼした。
この奴隷たちは貴族飼いの兵だ。
戦うために生きている奴隷が故に命の値は驚くほど軽いが、兵の奴隷であるが故に身の回りのことはある程度尽くされている。たとえば身なり、実力のある兵達には上等な武装が与えられる。
たとえば住処、狭くぎゅうぎゅうではあるが奴隷に大部屋が3つほど開放されており1人が横になって寝れるぐらいのスペースはある。たとえば食事、長い戦いや、一区切りついたら貴族であるご主人から大層な食事が与えられるのだ。
「今回の戦線は長かったからなぁ」
「そうだなぁ」
「俺はスープがほしい。この前の干し肉のふやかしたやつ」
「まじかよ、あれ塩辛い」
「腹にたまる肉が食いたい」
「魚ァ!」
「丸焼き、丸焼きいこう。肉も魚も」
「骨噛み砕くつもりかよ」
「骨はスープの出汁行きだろ、この前アンナが言ってた」
「アンナかぁ、結婚したんだろ?」
「しらねぇよ」
「まだ働くらしいぜ、甲斐性のない夫をもったもんだ」
「メイドの作る飯は不味くてかなわん」
「じじいが、いつの時代の話してんだよ」
食事についての軽口は部屋を広がり、血に飢えていた獣達を自身に返し戻してゆく。その飢えていた兵達に隔たりなどなく、地上で繰り広げられていた差別的な戦線などないように種族など気にせず、皆が思い思いに口を開いては思い思いに生きてゆく。
ここはそういった奴隷兵の塊なのだ。
「AAAよ、お前、何食いたい?」
「あー、じゃあ、肉」
「だよなー!」
「ばっか!魚にしろ、魚!」
「わたし甘いものも食べたいわ」
「でたよ!ババアむりすんな」
「失礼ですよ」
端で眠りに落ちかけていた女がふふと笑いながら問いに答える。女とともに眠りに落ちかけていた数少ない女兵達も薄眼を開け口々に魚や肉やを騒ぎ出す。
あまりにもうるさくなったために主人である貴族が食事を予定より早く出してくるなど、今を生きる兵たちにはわからぬことでもある。
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