見覚えのある鮮やかな赤いコートが執務室に吸い込まれていくのが見えた。耳を澄ますとうっすらガションガションと鉄が軋む音もする。・・・どうやら例のでこぼこブラザーが年末の挨拶に来ているようだ。後を追うように執務室に入ると、やはりロイへ挨拶をしているふたりの姿が──と、思いきや、私を見るなりなんなりズカズカこちらへ歩み寄ってくるのは、エドワード少年。

「どうも久しぶり、エドモンド」
「誰がエドモンドじゃ!!エドワード!!アンタそれわざとやってるだろ!」
「にっ、兄さん落ち着いてよ・・・すみません大尉」
「うーん。元気そうで何より。」

ポンポン、と肩を叩くと今にも噴火しそうなエドにしつこく絡まれそうな予感がしたので、そそくさ退散しようと背を向けた。
しかし、ガションガションガション・・・とても明確に私の後ろを着いてきている音がする。珍しい事に私に用があるらしい。観念して振り返ると、ロイがそれはそれは愉快そうなにやけ顔をこちらに向けていた。

「鋼のは先日のクリスマスの件での君の活躍をじっくり聞きたいそうだよ。ヒーローインタビューってところか。」
「そう!大尉が錬金術使えるなんて一言も聞いてねえし、しかもあれ、発動のモーションが無かったように見えたんだ。もしかして大尉って──」
「はい、ストップ。質問はアルフォンス君からのみ受けつけます。はいスタート」
「はぁあ!!?」

そう言って自席の椅子にどさっと座り、非常に高い位置にあるアルの頭部を見上げた。エドはといえば小言をブチブチ言うのをハボックから「うるせぇ」と一喝され大人しくしているようだ。
錬金術の事を聞きたいわりには質問までにえらく時間をかけた彼は、少しもじもじしながらこう言った。

「兄さんの話の前に、気になってた事があるので聞いてもいいですか?」
「なんでもどーぞ」
「クリスマスマーケットの日、大尉がおみやげ屋さんで安産祈願のお守り買ってるの見ちゃったんですけど・・・・」

ピシャリ、執務室に電撃走る。といった感じで、みんなの動きがピタリと止まった。まさかそれを突かれるとは思ってなかった。これならエドの質問に真剣に答えていた方が得だったなと考えながらも、動揺は心臓の何層も奥に閉じこめて。何もないようなポーカーフェイスで。

「あぁ、あれは友達に買ったやつ」

はぁ、とみんなから安堵の息が漏れる。
しかしここで死角から現れた中尉の追撃。

「あれ、そういえば大佐の車にもありましたね。安産祈願のマスコット。」

これが天然由来の発言だから私の親友はかなりタチが悪い。アルは女の子みたいに口元を押さえ、エドは顔を真っ赤にして眉を釣りあげている。執務室のメンバーは・・・・冷や汗をかいているに違いない。そして顔は見えないが、ロイはきっと満面の笑みだ。

「いやぁ、本当はヒューズにあげるつもりだったんだけどね。ロイがどうしても元気な女の子を産むんだって言って聞かないから・・・・」
「えっ!?大佐が・・・?」
「それ以上デタラメ言ってみろ。減給するぞ。」


end.


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