@街でしのび逢い?
「(……あれ、あの姿って名前さんと朔さんじゃないか。珍しいな、二人が休みに会ってるなんて……。というか平門さん知って……るワケ無いだろうな、多分。名前さんが朔さん贔屓なの知ってて快く見送るなんてことはあり得ないだろうし……面白そう。ちょっと後つけてみよ)」

「……これなんて如何です?」
「お、良いデザインじゃん。俺好み」
「これなら仕事中でも大して邪魔にはならないでしょうし、見た目もシンプルだから悪目立ちすることは無いでしょ?」
「だな。……これにすっか」
「……とはいえ、そんなアッサリと即決してしまって良いんですか? もう少し他のお店も見て回ってから決めたって……」
「んー? せっかく名前が選んでくれたモンだしな。他の気に入ったらそれも購入すりゃいいし、ケチるなケチるな」
「……全くもう。いい加減なんだから」
「どうせなら大らかって言ってくれよ。んなことより、お前もその仕事口調そろそろ止せよ、かたっ苦しい。今は俺ら二人だけなんだから……さ」
「、長年のクセなのよ。つい畏まるの」
「別に今更緊張するような関係でもねーのにな。俺の前でくらい肩の力抜けよ、今日はうんと楽しませてやっからさ」
「うーん……なら、あなたの気遣いに素直に甘えとこうかしらね」
「大船に乗ったつもりで任せとけ」
「ふふ、じゃあ遠慮なく」
「んじゃお手をどうぞお姫さん?」
「エスコートお願いね、王子様」
「うわ、なんかむず痒いなこれ」
「振ったのはそっちのくせに」
「ハハッ、まあご愛嬌ってコトで」

「(……え、なんだあの二人。まるで付き合いたての恋人同士みたいな会話じゃないか。まさか僕らには内密でくっついた? いや、確かにいつそうなってもおかしくはない仲だったけど、本命の平門さんや対抗の燭先生でもなく大穴の朔さん? ナニコレ抜け駆け? どんでん返し? 朔さん一体どういう手を使って名前さんオトしたの凄い気になる)」
「……とりあえず写メって送っとこ」
(騒動の大元)


@思いもよらぬ混乱の火種が
「……與儀。携帯震えてるけど……」
「あ、そういえば昨日からずっとマナーモードにしっぱなしだったんだ……喰くんからメール?」
「……あれ、アイツ今日は街に降りてったんじゃねえの?」
「うん、貴重な苗が入荷するからーって言って朝早くに出掛けたハズだけど……なにか添付されて………え。」
「、與儀? どうしたの?」
「……………………これって……………」
「料理長、……と朔さん……?」
「ハ? おい、ソレ見せろ」
「…………」
「……………」
「……………花礫?」
「………………マジかよ……」
「……えぇぇえ!? なんで朔サンと名前さんが手ぇ繋いで歩いてるの!? しかも顔っ、近い! 近い近い近い!!」
「っ與儀落ち着いて! 今そんなに取り乱したってどうしようもないわ」
「っだってツクモちゃん!! こんな写真見せられたら冷静でなんて居られないよっ。相手はあの朔サンなんだよ!? 爽やかな顔して百戦錬磨の朔サンなんだよ! いよいよ名前さんまで魔の手にっ、毒牙にぃい〜」
「ひゃくせん……朔さん、毒……?」
「……あー、とりあえず无が理解出来てねぇって顔してっから止めろバカ。そんな気になんなら喰に連絡取って、直接問い質しゃあイイだろ」
「花礫君もソワソワしてるけど……」
「っンなことねえよ。オラ與儀もたついてないでさっさとアイツに電話しろ!」
「う、うん……!」
「…………」
「…………出た?」
「……出ない……ひょっとして尾行してたりするのかな、電源落とされてる…」
「肝心な時使えねぇヤツだな…」
「でもどうして名前さんが朔さんと一緒に居るのかしら……今日は必要な食材や雑貨を買いに行くって言っていたのに……」
「途中で会った……とか?」
「その線は薄いんじゃね? この写真の様子だと前から約束してたっぽいけど」
「……私達に内緒で付き合い始めた?」
「……」
「…………」
「…………」
「………それなんて血祭りフラグ?」


@一同戦慄
「どどどどうしようっ!! こんなこと平門サンや燭センセにバレたら朔サンの安全どころか命までもがっ」
「ってかそんなことはどーでも良いんだよ! 朔と付き合い始めたからって名前がココ出て壱號艇行くとか言わねぇよな!?」
「この前家出未遂事件(SS料理長が壱號艇に〜参照)もあったぐらいだし、必ずしも無いとは言い切れないかも」
「……料理長のご飯、もう食べられなくなっちゃうの……?」
「……」
「……」
「……」
「そしたら俺、名前についてくから」
「全力で阻止するからね!!」
「俺も花礫と料理長についてく!」
「无君もダメなの……ごめんね」
「……いずれにせよこの会話もデジャヴだし、由々しき事態だよこれぇ……ああもうどうすればいいの神様仏様平門サマ〜っ!!」
「…………呼んだか?」
「」


@来ちゃった(はぁと)
「バッカお前、よりにもよって面倒なヤツ召喚してどーすんだよ…!」
「だってまさかホントに来るとは思ってなくて……クシャミした訳でも無いのに!」
「某大魔王じゃねぇだろアイツは!」
「何コソコソしている」
「何でもないっスいやホントに!!」
「ほう……隠し事か。寂しいな、俺だけ蚊帳の外か。のけ者か。ん?」
「スミマセンデシタ此方ご覧ください」
「與儀……今の姿凄く……その」
「皆まで言わないでツクモちゃん……自分でも情けないって分かってるから……」
「すげえドス利いた声だったぞあれ……」
「與儀……泣かないで」
「ありがと无ちゃん……俺じゃ太刀打ち出来なかったよ……」
「……………………」
「……ひ、平門?」
「(バキャッ)」
「あぁぁあ俺の携帯っっ!!!」
「ものの見事に真っ二つ……」
「……ああ、すまない。うっかり手に力が込もってしまって。新しいの買ってやるから安心しろ」
「ええっ、そういう問題じゃ……!」
「まだ何か文句あるのか」
「出過ぎた真似をしました」


@かくかくしかじか
「で、何故こんな合成写真が?」
「信じたくない気持ちは分かりますけど、こんなタチの悪い合成は見たこと無いですよー…」
「喰ならやらかし兼ねないだろう」
「アイツどんだけ信用ねぇんだよ」
「ヒント、日頃の行い」
「良く分かった」
「……合成じゃないとしたら、時間を見ると名前が出掛けてから一時間くらい経った後に撮られたものか……朔は?」
「キイチちゃん曰く今日休みで名前さんと同じく街に降りてるそうです」
「……へえ」
「(今の声こわっ!!)」
「(急に寒気がしてきたわ……)」
「(こ、こんな怖い平門さん見たことない……)」
「(眠くなってきた)」
「(……帰ったら詰問だな)與儀、」
「はいっ!!?」
「名前が帰って来たら、寄り道せず至急俺の部屋に来いと言え。いいな?」
「………はいぃ……!(ジーザス…!)」


@思わず回れ右
「平門さん? 失礼しま………、した」
「待て、人の顔を見るなり扉を閉じようとするんじゃない。おとなしく入れ」
「………何でそんなに機嫌悪いの?」
「自分で理由が分からないか?」
「分からないから、こうして問い掛けてるんですけれど」
「そうだな……強いて言うならお前が俺に行き先を偽って出掛けたことに問題がある」
「別にウソは吐いていませんよ?」
「言葉を誤った。誰と、街に行った」
「……」
「都合が悪くなったら黙秘か。そうやって黙り込むのはなにか後ろめたいことがあるからだと解釈するが、間違いでは無いよな。もっとも異論は認めないが」
「というか一つ疑問なんですが、どうして私問い詰められてるんです?」
「お前が俺ではなく他の男にうつつを抜かしたからだろう?」
「寝ぼけてんのか」
「しっかり起きてる頭も冴えてる。いっそ夢だったのならどれほど良かったか」
「……あのね、話の軸が掴めないのだけど、回りくどく嫌味ったらしい言い方しないで率直に言ってくれます? 喧嘩売ってんなら特別に高値で買いますよ」
「……朔と交際を始めたのか」
「………は。誰が」
「名前しか居ないだろう」
「……………………」
「で、どうなんだ」
「………無いわぁー……」
「…………」
「…………無いわぁー」
「………んとに、お前という奴は…」


@脱力感
「だろうと思った」
「(……の、割りにはたちまちご機嫌になったわねこの男)」
「しかし結局事の真相は何だったんだ」
「普段頑張ってる子供たちにご褒美をと思って、たまたま休みが被った朔に買い物に付き合って貰っていたんです。皆個性バラバラで好みも違うし、男の子は独特にこだわるセンスとかあるでしょう? だから彼に相談しつつプレゼントを選んで、ついでに私にも朔が身に付けるアクセを選んでほしいからとあちこち順番に回って……持ちつ持たれつですよ」
「だからといって手まで繋ぐ必要は無いだろうに」
「ちょっと待ちなさい、何でそこまで知ってるの」
「喰から與儀にメールが送られてきたらしい。ご丁寧にお前達の仲睦まじい姿の画像付きでな」
「あの子はほんっとにパパラッチ顔負けの働きを……情報官じゃあるまいに」
「とにかく今度出掛ける時はちゃんと詳しく言って行け。與儀達も先ほど酷く肝を冷やしていたようだから」
「(それは恐らく別の理由でじゃないかしら)……不本意ですが了解しました」
「因みに俺への土産は?」
「朔の間抜け面ショットで良いなら」
「よし燃やせ」



――――――
「朔さんと街でデート→喰くんが目撃からの貳號艇パニック」ということで存分に詰め込みました楽しかったです
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