暗殺騒ぎ

ジメジメして薄暗い梅雨が終わって、本格的に暑い夏が来た。
この前ビアンキさんがリボーン様と結婚式を挙げるからと招待状をくれて、びっくりしつつもお祝いするべく結婚式に参加したらリボーン様が偽物なんていう騒ぎがあった。
結局リボーン様とビアンキさんは仲直りしてたけど、あの2人は入籍した……ことになったんだろうか?
まあ、あの2人の関係にいちいち首は突っ込むまい。
いつも通り沢田家を監視していると、丸い球体の乗り物に乗った人がリボーン様に招かれていた。
誰かは知らないけれど味方のようだ。
ツナ君の部屋にありとあらゆる武器を出しているから、武器チューナーだろうか?

そんな風に見守っていると、獄寺君が沢田家へ入って行った。
次に現れたのは京子ちゃんだ。
あの部屋の状態じゃ、ツナ君は冷や冷やするだろうな。
助け舟を出しに行くか。
そう思って僕は冷蔵庫にお母さんがストックしていた肉じゃがのタッパーを持って沢田家の前に行った。

「あれ?京子ちゃん?」
「優希ちゃん?優希ちゃん家ってこの近くなの?」

京子ちゃんは何の疑いもなく尋ねてくる。

「うん、ツナ君の向かいの家に住んでるんだ。」
「そうだったんだ!」
「京子ちゃんもツナ君ん家に用が?」
「うん、一緒に課題やるんだ。」 

課題……ああ、あれか。
班で何か調べるやつ。
僕は一応獄寺君で組んでたけど、彼はいつもあんな調子だから宿題なんかやる気ゼロって感じで、僕も勉強嫌いだからやる気ゼロで、すっかり忘れてた。

「優希ちゃんは?」
「僕もお母さんにツナ君ん家にお裾分けするよう頼まれてさ。」

手に持ってるタッパーを見せると京子ちゃんはなるほどと頷いた。

「ツナ君と優希ちゃんって仲良いんだね。」

うん、ツナ君が嫌がりそうなフラグ。
僕が彼女だと誤解されたくないとかツナ君は思いそうだから、ちゃんと一線を引いた関係であることは伝えておこう。

「ただの幼馴染というかご近所さんだよ。正直僕はツナ君よりツナ君のお母さんと仲良いかも。」

何でだろう、自分でそう言いながら、喉の奥に何かがつかえているような感じがした。
今日はお魚食べてないのに。

「あはは!確かに良いお母さんだもんね!」

京子ちゃんは天使のような可愛らしい笑顔を浮かべる。
そんなタイミングでガチャリとドアが開く。

「いらっしゃい、京子ちゃ…って優希も!?」
「うん、肉じゃがお裾分けするようお母さんに頼まれたんだけど、ちょうど京子ちゃんとタイミングが合ったみたい。」
「そ、そっか」

案の定というかツナ君は青い顔で冷や汗をダラダラとかいている。
京子ちゃんには絶対バレたくないんだろう。

「大丈夫、ツナ君?汗すごいよ。」

流石に天然な京子ちゃんでも顔色の変化には気付くらしい。

「いや…何でもないよ!今日台所でいいかな?」
「うん、いいよ。」

京子ちゃんは頷く。

「僕もお邪魔するね。肉じゃが、冷蔵庫に仕舞っとくよ。ついでに偵察させてよ。僕獄寺君とペアなんだけどまだ何もしてなくてさー。」
「あ、そうなんだ…」

ツナ君は少し断りたそうな雰囲気を醸し出す。
こんな状況でも京子ちゃんと2人きりにはなりたいみたい。
うーん、主人の意向を汲んで帰るべきかな?

「いいよ!ね?ツナ君!」

僕が帰る決断をする前にそう答えたのは京子ちゃんだった。
さすが本物の天然少女。
花ちゃんがいればここで呆れたようにため息をついただろう。

「う、うん!いいよ!」

そしてこういう時に流されてしまうのが僕の主人である。
まあ、いるからには京子ちゃんには秘密がバレないよう最善を尽くしますとも。
正直そんなのバリエラの仕事じゃないけど。

早速2人は課題に着手した。
まずはツナ君が小2の時の作文を読み上げる。
当時の綱吉君の将来の夢は巨大ロボだった。
そして僕はもちろん気配には気付いていたけれど、獄寺君が途中から降りてそれを聞いてて、感動の余り涙を流す。
どうやら彼は改造されて武器をツナ君に見せたくて降りてきたらしい。
ダイナマイトなら花火と言って京子ちゃんには誤魔化せるなと思って止めはしなかったけれど。

「クルックー」
「クルックー」

なぜか庭先に飛び出たのはなぜか鳩。
そして青い芝生を汚したのはパーティー用のリボンと紙吹雪。
いや、さすがにこれはもう武器じゃない。
どういうこと?

獄寺君はジャンニーニさんとやらに話を聞きに2階へ上がって行った。
今度は入れ替わりでリボーン様が降りてくる。
リボーン様も改造した武器の威力を確認したいのだと言う。
さっきのパーリナイッな光景を思い出して、僕はとりあえずリボーン様とツナ君のやりとりを見守った。
やはり、改造死ぬ気弾はツナ君の眉間を貫くことはなく、ぴょこっと落ちた。
リボーン様も2階に上がっていき、2階から酷い音が鳴り振動が1階にまで伝わってきた。

「な…何の音だろ?」
「ランボ君あたりが喧嘩してるんじゃないかな?」
「た、多分そうだよ!ちょっと見てくるね、待ってて2人共!」

そう言ってツナ君は2階へ上がる。
少し音が落ち着いたかと思えば衝撃的なことが起こった。
リボーン様やランボ君並みに小さくなった獄寺君が現れた。
目を疑ったけど、あれは間違いなく獄寺君だ。
多分ジャンニーニさんとやらが10年バズーカを改悪して若返りのバズーカにしちゃったんだ。

京子ちゃんは獄寺君だと気付いてなくて、ランボ君やイーピンちゃんと接するように獄寺君に話しかける。
いつもなら温かく見守る光景だけど、さすがにこれは獄寺君のプライドを刺激しそうだ。
案の定、獄寺君はキレた。
そしてその獄寺君を止めたのはツナ君だった。

「ちょっ、たんま!?」
「うわっ」
「ちょっ、あっちで話し合わない?ね?」
「さすが10代目、すげー怪力!!」

あれ?
何か獄寺君の言動に違和感がある。

「あっ、10代目!!電信柱に怪しい奴が!!」

獄寺君の言葉を受けて慌てて彼の指す方を見たけれど何もない。
なんだろ、少なくともツナ君に対してこういう冗談を言うタイプじゃないはずなのに。
ツナ君も何も見えないと言うし、京子ちゃんもスズメだと言う。
なぜ獄寺君だけ?
でもバリエラとしては見逃せない発言だ。

ツナ君から半ば強引に獄寺君を奪い取った。

「なっ」
「僕可愛いねぇ」
「はぁ!?守屋、テメーまで!?」

怒る獄寺君に少し申し訳ないなと思いつつ、彼を肩に乗っける。
そしてこっそり尋ねた。

「僕には何も見えないけど、獄寺君には何が見えてるの?」
「! 緑色の全身タイツみてーな妙なスーツを着た2人組だ。」
「了解。僕には見えないカラクリがあるんだろうね。妙な動き見せたらすぐ教えて。」

僕達がコソコソ話している間に山本君が現れた。
彼は偵察で来たのだと言う。
そしてランボ君も2階から降りて来て、獄寺君に絡み出す。
獄寺君は一発でランボ君をのした。

「いつの間に!」

獄寺君は天井を見て叫び、タバコとダイナマイトを構えた。
僕も警戒態勢には入る。
ただ獄寺君の言う敵は僕には見えない。
幻術なんだろうか。
獄寺君は幻術に耐性があるんだろうか。
山本君は獄寺君からタバコを奪う。
子供に対する対処としては正しいけど、今は困る。
獄寺君の目が頼りなのに。
そして獄寺君は自分が縮んでることに今気付いたようだった。
さっき感じた違和感はこれだったのか。
獄寺君小さくなってることに気付いてなかったのか。
獄寺君は意識を失いかける。
でも何かに気付いた様子で叫ぶ。

「やばい!!10代目が!!」
「え!?オ…オレのせい…!?」

ツナ君は狼狽えるけど、僕的にはそれどころじゃない。
獄寺君は直接ライターを点けてダイナマイトを投げた。
てもそのダイナマイトはパァンと音を立てて、鳩とリボンと紙吹雪を散らす。
おかげで京子ちゃんと山本君は危機に気付いていない。
肝心のツナ君もだ。

「10代目、まだです!」

どうやらまだいるらしい。
僕は獄寺君に視線を送る。
山本君に捕まっている彼は視線でどこに敵がいるか教えてくれた。

「あっ!虫!」

僕は獄寺君の視線の先を挟むように叩いた。
何かに触れる瞬間、ツナ君達には見えないように両の手のひらにスクーデを張って。
手のひらは合わさることなく、べキャッ!バチバチ!と音がして緑色の何かが点滅した後、ドサリと落ちた。

「んなーー!!?」
「守屋!次こっちだ!」
「ほい!」

僕は再度虫を潰す要領で獄寺君が指す場所をバチンと叩いた。
同じように緑色の何かが点滅してドサリと落ちた。

「なんなのー!?この人達どなたー!?」

ツナ君が叫んで彼らは自分達の姿が視認されてることに気付いたようだ。

「しまった!ダメージで光学迷彩が」

光学迷彩?
なんだっけ、それ。

「えれーぞ、獄寺。見直したぞ。」

リボーン様が現れる。
彼曰く彼らの光学迷彩はアルコバレーノのヴェルデが発明したもので、彼の身の安全のためにある年齢より下だと見えるように設計されているのだと言う。

「こうなったら!」
「直接殺しましょう!!」

彼らは銃を構える。
リボーン様の死ぬ気弾はダンシング中。
獄寺君はその小ささゆえに弾かれた。
守るなという命令ではあるけれど、こればかりは守れそうにない。
僕はツナ君の前に庇うように立った。

「優希!!」

ツナ君が叫んだ時、ズガンと銃声が聞こえて後ろでドサリと人が倒れる音がした。
目の前の2人に引き金を引くモーションはなかったので死ぬ気弾らしい。

復活(リ・ボーン)!!!死ぬ気で優希を守る!!!」

ツナ君は僕の前に出て、まずは発砲したゴーグルをつけた刺客を蹴る。
次に小さい方の刺客にアッパーを食らわす。
2人はあっさり伸びた。

山本君と京子ちゃんは彼らを泥棒だと思い、ツナ君を褒める。

「いや…今日のはオレじゃなくて、真ん中分けの小っちゃい子のおかげだよ。」

ツナ君は穏やかに答えた。
けれど、僕の方を見た途端顔を怒りで歪めた。
付き合いが長いから間違いない。
絶対怒ってる。

「優希!」

ツナ君は僕の両肩を掴んだ。

「危ないだろ!あんな真似して!」
「ご、ごめん…」
「次からはやるなよ!」
「うん…」

ツナ君の勢いに圧倒されてつい頷いちゃったけど、まだまだこれから先もやるだろうな。
その度にこうやって怒られると思うとちょっと憂鬱だな。
僕が頷いたことに満足したのか、ツナ君は手を離した。

結局先に京子ちゃんと山本君は帰った。
僕はなんとなくツナ君の家にまだ居座ってた。
ツナ君が警察に怪しい2人を引き渡している間に獄寺君が話しかけてくる。

「そういや何で守屋はオレの言うことを信じたんだ?10代目ですら信じなかったのに。」
「だって獄寺君はツナ君に嘘や冗談でそんなこと言わないだろ?それにツナ君も信じてなかったというより、京子ちゃんの前で暗殺者騒ぎが起きるのが嫌だったんだと思うよ。」

この程度で獄寺君の忠誠心がブレることはないと知りつつも、念の為フォローしておいた。
実際のツナ君は普通に信じてなさそうだったけど。

「なるほど、10代目は女子供が巻き込まれるのを嫌がられて……さすが10代目、お優しい…」

獄寺君は少し自信を取り戻したようだ。

「そういえば優希、帰らないの?」

引き渡しが完了したツナ君が話しかけてくる。
確かに目的は果たしたしお暇するか。

「そろそろ帰るよ。また明日学校でね。」

結局獄寺君はしばらく体が戻らなくて学校をサボることになり、班員がいなくなったことで課題の手の付けようがなくなった僕は課題を免除されたのだった。

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