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各地で、奇妙な事件が相次いでいた。

名の知れたプロハンターや、莫大な財を持つ富豪たちが、ある日を境に突然おかしくなる。
それまで大切にしていたはずの地位も、誇りも、理性も、まるで熱に浮かされたみたいに手放して、ただ一人の少女だけを盲目的に崇め、守り、囲い込もうとするのだ。

最初は、ただの噂だった。
どこそこの依頼人が若い娘ひとりのために全財産を投げ打っただの、冷酷で知られた賞金首ハンターが任務を放棄して姿を消しただの、酒場や裏市場で囁かれる与太話のひとつにすぎなかった。
けれど、似たような話はひとつでは終わらなかった。
都市をまたぎ、海を越え、まるで見えない糸で結ばれたみたいに、同じ異常が何度も繰り返されていく。

彼らはみな、壊れ方がよく似ていた。
怒りや猜疑心のような剥き出しの悪意だけが不自然なほど薄れて、その代わりに、ひとりの少女へ向けられた歪な献身だけが異様に膨れ上がっていく。

誰にも触れさせたくない。
傷つけさせたくない。
奪わせたくない。

その願いはやがて執着に変わり、庇護は信仰じみた熱を帯び、ついには彼女を世界から切り離してでも手元に置こうとする。

まるで、心の奥に白い花でも咲かされてしまったみたいに。

それが、生まれつき彼女に宿った特質系能力――
周囲の悪意を削ぎ落とし、狂信的なまでの庇護欲を強制的に芽吹かせる
『心に咲く白百合(ピュア・リリィ)』の仕業だと、まだ多くの者は知らない。

けれど、その力の価値にいち早く気づき、彼女を利用しようとした人間たちはいた。

そして彼女自身もまた、自分の内に咲いたその白い呪いを、ずっと前から知っていた。







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