4日ぶりの登校に足は竦んでいた。

入学当日。急な体調不良で早退を余儀なくされる不運に見舞われた。それから。一週間の半分を休んでしまった私に訪れたのは入学日以上の不安だった。
友達のグループは確実に出来上がっていることだろう。そこへ飛び込む勇気を全く持ち合わせていない私は眠れない夜を過ごしたせいか頭痛がする。
祝福された門出が霞みそうだと同じ制服が多く見え出した通学路を憂鬱に歩いた。けれど暖かな日差しに照らされた桜の花びらがきれいに見えてほんのすこし前向きになれたような気がした。

・・・というのは錯覚だったらしい。
Dクラスへ足を踏み入れると予想通りの現状に帰巣本能が遺憾なく発揮しそうだった。出オチにつまづきながら初日ぶりの席に着く。
この空間は息がしづらくて落ち着かない。楽しそうな雰囲気に入り込めない寂しさからまた体調が悪くなりそうだ。早く1日が終わらないかな。来て早々帰宅を願いながら鞄を開けたその時。一人の男子が元気よく教室に入ってきた。

「おはよー!」

鞄の中身を机に入れながら明るい声の方へ自然と向かう。人が次々とその笑顔に引き寄せられるように集まっていてすごいと率直に驚いた。クラスの中心はどこかと聞かれたらこれで答えられるだろう。
引っ込み思案な私にはない爽やかさを羨望の思いで見ているとそんな彼がこちらにやってきた。目が合って心拍は急上昇。思いもしない出来事に顔を伏せると前の席から音がした。

「おはよう桐野」

私の名前、聞き間違いでなければ。顔を上げると遠くで見つめたあの笑顔があって目を丸めた。前の席は彼だったのか。なんという、幸福だろう。
挨拶をされたうえ名前を知っていた驚きで声がのどに貼りついてうまく出なかったがそれでも彼はにっこり笑ってゆっくりでいいと言ってくれた。その言葉のおかげで初日にできなかった自己紹介を済ませるとチャイムが鳴った。
担任の荒井先生が黒板の前に立つと日直が号令をかける。

(かぜはやくん・・・、いい人だなぁ)

どんな漢字だろうか。教卓から今日についての話をする先生を彼越しに見ながら『かぜはや』という文字に漢字を想像する。はじめは『風』だろうか。
さっきまでの不安が薄らいでいるのは、彼の後ろ姿が安心を生み出してくれているのではないかと、そんなことを本気で思う。
なんという幸福だろう。これからの学校生活もまだまだ捨てたもんじゃないな。がんばれる。この後ろ姿を見れる幸福がこれから楽しい日々になるような予感を与えてくれるから。がんばれる。ありがとう、かぜはやくん。
気さくに話しかけてくれた笑顔が勇気をくれたこの日の私はまだ知らない。この先わすれられない輝きが待っていることを。




(急激な不安に陥ると体調が悪くなる内気な女の子が前の席の風早くんと仲良くなる)
(本当は四月馬鹿ネタで連載しますよ!というのを考えてたんだけど間に合いそうになくてこちらに置きました)

16.04.01 20:43 kimitodo(bun)
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