・4話2ページのボツ 今行ってみてもいるかどうか。とりあえず彼らがいるところは案内図を見たらすぐにわかった。同じ学年の1組。 行くだけ行くだけ。でもまだいればいいな。そう期待を込めて渡り廊下を小走りで進んでいると前方の曲がり角から頭の大きなカエルの着ぐるみがやって来るのが見えて意図的に速度を落とした。その目立った姿を見ていると手に持ったプラカードにも自然と目がいった。どうやら今から行ってみようと考えているクラスの宣伝員らしい。(1−1・・・) 値段が何度も変更されたカンバンには『あの蓮くんも来た!』と付け加えたように貼られていて思わず感心してしまう。これが、一ノ瀬くん商法。・・・なんちゃって。 (やっぱりすごいな・・・。あれ?) すれ違う時に手を振るかわいさに、つられて振り返した私は視線を前に戻してカエルの着ぐるみが来た角を曲がる。と、一瞬だけ視界に入った人が気になって足が止まった。すぐそばの階段に吸い込まれるように消えて行った姿が、どうも知っている人のように見えたわけで。けど違う気もするからはっきりしない。 その人だと断定するには自信がいまひとつ、だけど考えるより先に足が動いた。 だからこの時。近くの階段に走り出した私は廊下の先すら見えていなかった。 (あ! やっぱり!) 上り下りしていく人たちの中で、下におりて行くその人はやっぱり安堂そのもので。私の見間違いじゃなかったことが証明されてほらね!と廊下の上で上機嫌に思う。けれど考え事でもしているのかそのまま折れ曲がった階段下へ行ってしまうので慌てて声をかける。 安堂。でも少し大きめに意識したその呼びかけはヤツには届かなかったようだ。顔の高さにまで上げた手が急に恥ずかしくなって、誤魔化すように後ろの髪を弄ってすぐに下ろした。 (むっ安堂のくせに聞こえないなんて) もう一度。今度は追いかけて耳元で叫ぶように呼んでやる。意地になった私はもう見えない安堂を追いかけるように階段に足を踏み入れる、その直後。 「飴谷っさん!」 耳を突き破って入るその声が思考を吹き飛ばす。そして瞬間的に怒られるとイメージした私は素早く声がした方に振り向いた。「っあ、れ?」先生かと思って構えていた私は予想とまるで違う相手を気が抜けたようにぽかんとしながら見ていた。 相手も自身の行動に驚いてるみたいにあっと半開きの口のまま私を見ていた。・・・ 「一ノ瀬くん・・・」 ぽつりとつぶやいた自分の声にはっとしてびっくりする。思っていただけなのに口に出ていたことが恥ずかしくて視線が彷徨った。 それより、さっきの一ノ瀬くん・・・(怒ってる?)そう思ったら、顔の熱がさっと冷えて今になって状況を把握する。 あの時離れていたからそれらしい言葉は交わさなかったけど、一ノ瀬くんは私が来ると思ったに違いない。 それで待っていたのに違うところへ行こうとした私を見つけて、それで、これで。 (怒って当然だよね・・・! ど、どうしよう) さっきから何も言わないのがその証拠。心臓が全速力で走った後みたいにバクバクしたままおっかなびっくりに視線を一ノ瀬くんに向ける。「!?」 背けられた顔がどうしようもない事実を突き立てていた。 「・・・・・・・・・」 (怒ってる・・・!) 青い顔をして泣きそうになっている私と、ずっと黙ったままの一ノ瀬くんを訝しく見やる周りのことも、一ノ瀬くんの後ろでおなかを抱えて笑っている男子ふたりのことも、気にする余裕なんてあるはずもなかった。 <div align="center">★</div> 「蓮のヤツあんな大声出してはずかしくなったんだよ」 どうしたらいいのかわからなくて駆け寄ることも躊躇う私に、一ノ瀬くんの後ろから来たふたりの内の――後で名前を教えてもらった寺田くんはそう言っていた。 なるほど。だからびっくりした顔をしてたのかと納得すれば、ならあれは?と浮かんだ疑問が次第に熱を帯び始めて、なかなか顔が上げづらい。そんな私をよそにもう一人の、さっき窓から手を振っていた三好くんはまだ笑っている。人の気も知らないでいい気なものだと俯いたまま少し恨みがましく思う。それにしても、とほっと思うこともあった。 怒ってるんじゃなくて本当によかった。もちろんよかったんだけどそれはそれで、勝手に思い込む私もテンパりすぎてだめだな。ここまで余裕のないなんて、きっとさっきのせいだ。あれだって私の妄想で決まっているんだけど、そのせいで一ノ瀬くんの前で失態を犯す始末。穴があったら入りたい。 出そうになったため息を何とか噛み殺して顔を上げる。「腹イテー」「笑いすぎ」まだ笑う三好くんの頭に寺田くんは空手チョップを入れていた。ああ痛そう。 今度は頭を抱えて痛がる三好くんがおかしくて堪らず笑えば「そこ笑っちゃうー?」とそれを三好くんにばっちり見られたのかそう言われた。 「あはははっ」 「裕くん手加減してよー!」 「次からそうする」 気分は打って変わって楽しげな雰囲気にほうっと落ち着いていた。笑いあう彼らからふと何気なく視線を一ノ瀬くんに向けると穏やかな表情を浮かべていて、意識は先ほどの出来事に飛ばされた。 聞いたことのない声が響いて、不快とは全く違う耳鳴りがする。 (・・・・・・耳が熱い) (安堂くんもカエルちゃんも名前だけ出番があったんだけど、ここから先の話が浮かばなくてこのページ丸々カットしちゃったんだ^^) (ゴミ箱から拾ってきたので汚いです) 16.04.15 19:32 candygirl(×) |