(相性27・・・)

雑誌に載っていた占いページを黙々と読み込んで、試しにやってみた結果は知りたくない数字を叩きだした。気になる相手との相性数値は、イマイチ・普通・抜群の3つのカテゴリーに分けられて、見事にイマイチの枠入り。順位で言えば一番下である。
たかが占いだと読んでいた雑誌を取り上げたエリーはそう言うけれど、気持ちはずーんとへこむ。小学生のかわいい占いならもっとマシな結果じゃなかろうか。パラパラパラと前のページのほうを捲って秋冬トレンドファッションを眺めるエリーにそうぼやいた。

「思ったんだけど運悪いよねぇ私って」
「今更か。てか運が悪いって言うよりタイミングが悪いわね」
「それってどう違うの?」
「・・・さぁね」

とりあえず近所の同級生に誘われたバイトを快く承諾した2週間前の私! 呪われろ!


別の高校に進んだ友達から一緒にアルバイトをしないかとメールで誘われ、2回くらいの短いやりとりのあと『いいよ』と返した。バイトをしていなかったし、一緒ならいいかなと短絡的な考えで。
地元にいくつかあるうちのひとつ――滅多に行かない駅近くのコンビニ。そこで少し先に働いている同級生の紹介という名のコネを使い、あっさりとコンビニ店員となった。
ぎこちない接客も慣れないレジ打ちも友達のフォローのおかげでなんとかこなし、それから2週間ぐらい経ったある日。入店音の幻聴が聞こえ出した私に、学校で会ったがっちゃんは言ったのだった。

「一緒にバイトしない?」

2週間前と同じセリフを聞いたあと、今のバイトだけで手一杯という理由もあって苦く笑って断った。私の答えを想像していなかったのだろう。ええっと声を上げて驚くがっちゃんは次いで「蓮も一緒だよ?! あとエリちゃんも!」と言って、・・・・・・えっ?


エリーの言うとおりタイミングが合わない現実は意気込んだ頑張るという気持ちがしぼんでいくようだ。何度か試みた挨拶もわざわざ一ノ瀬くんが通る廊下で待ち伏せているのに失敗しているし、校内で会っても目が逸れて気付いてくれないし。これまでのことを思い返すと諦めろって神様に言われているみたいでまたへこむ。

「あんまり深く思いつめるなって」
「え?」

机に突っ伏してため息をこぼすとページを捲ったエリーは雑誌に向けた目を私に移した。

「はるは自分本位でいいんじゃないかな」







体操着に着替え終えて一人先に体育館に移動の途中。エリーのあの言葉を考えていると向かいから一ノ瀬くんが歩いてくるのを見てぱっと嬉しくなる。今日はまだ会えてなかったからこんなふうに偶然会えると嬉しさがすこし違って広がる。じわりと逸る感覚もそこに混ざって、唇をきゅっと結んだ。
だけどやっぱりにやけてしまう口元を伸ばしたジャージの袖で隠して、早歩きで近づいた。上がった視線に手を振ると笑顔で応えてくれてつられて私も笑う。「飴谷さん」「一ノ瀬くん!」そばまで近寄って声をかけて、そこで見えた一ノ瀬くんの後ろにあっと思う。こちらに向かって走ってくる女子二人が目に入り、位置的にぶつかると思って強引に一ノ瀬くんの腕を引いた。「ごっめー・・・ん!?」スカッという効果音が聞こえた気がしてまたしてもあっと思う。
彼女たちが何事もなく横切るときぽかんとした顔をしていたが、パタパタと走り去る音と一緒に不穏当な言葉も聞こえたので、どうやら一ノ瀬くんに故意でぶつかるつもりだったらしい。接触する機会を阻止されたことに腹を立てる彼女たちを呆れ返りつつも目の前の一ノ瀬くんに声をかける。

「大丈夫? ・・・っ!」

自分でやったことだけど、思いのほか近くで見上げた一ノ瀬くんに胸が高く鳴る。けど一歩後ろに下がって距離を開ける一ノ瀬くんを見て、気持ちが落ち着いた。

「ありがとう。大丈夫だよ」
「・・・そっか、よかったぁ。一ノ瀬くんは次の授業なに?」
「数学。そっちは体育?」
「うん。卓球やるんだ」
「がんばってね」
「ありがとー。じゃあね」

何てことない会話をしてそのまますれ違って少し歩いてから立ち止まる。首だけ振り返れば淀みなく進んで行く後ろ姿が映って、胸の前で手をぎゅうっと握りしめた。
おかしくない。なのにどうして心臓までもがぎゅうっとするんだろう。

(そうだよ。これが正しい)

今までの馬鹿げた思い込みがまだ残っていたみたいで距離が曖昧になっていたけど。私の立ち位置はまだこの程度なのだと改まる思いはちょっと苦味を感じた。だから前より、遠くなったように思ったのは気のせい。そもそも近くもないんだから思い上がりは跡形もなく消えてくれ。・・・・・・。でも、なんだかなぁ・・・
甘くない現実を見せつけられてはっきり言われたみたいだ、諦めろって。

(相性のほかに距離なんかも数字でわかればいいのに)

あの幻想はなんて甘ったるかったのだろう。