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今日は順調な一日だったはずなんだよ。本当に。
だってね、いつもは絶対直らない寝癖がすぐ直ったり、朝食が好物のハムサンドだったり、いつもは時間が合わないのに
お父さんがついでだって学校まで車で送ってくれたり、苦手な数学で当たりそうになったけどギリギリ前の子でチャイム鳴って回避できたり…お昼も好物だったりした。
そのあと、友達がケーキ作ってきたんだとデザートだってあったのに。
私はどうして他学年の廊下で膝をつけておでこを床にくっ付けているんだろうか。
「名前次移動教室だよ」
「えっと、何だっけ」
「今日の日本史何か知んないけどB教室でやるんだって」
「えーめんどくさい。B教室って二年生の階だよね?」
「そうだよ」
机の中から日本史の用意を取り出して顔をしかめる私に友達は苦笑いした。
他学年の階ってなぁ…何か視線が気になるというか、気まずいというか…何だっけ、あれ、えっとアットホームな感じがしないからかな?たぶん。
「あーねむい」
「もう名前はお昼食べたらすぐそれだよね」
「だってねむいお腹いっぱいだし」
「赤ちゃんか」
「え、ひどい」
階段を下りて左に曲がる。そして二年生の階の二組の隣がB教室だ。
校舎は三階建てで、上から一年生、二年生、三年生に順になっている。
基本的に一組二組と三組それ以下の教室の間には階段とB教室のような移動教室専用の教室が挟まれている。
そして、六組のすぐ近いに階段を挟んでまた移動教室専用の教室。
うちの高校は成績によってクラス分けをして少数で授業をすることがあるから、こんな風にA教室などがあるらしい。
私は六組だからその階段を下りて、二年生の階の六組から二組までを突き抜けてB教室へ向かう。
正直のところ一年生の階の六組から二組までを突き抜けて階段を下りてB教室まで行きたいところだが、何故か一年の階には一組二組と三組それ以下の教室の間にあるはずの階段がない。
だから、仕方なく他学年の階を突き抜けるしか方法はないのだ。
ああ、なんでこんな理不尽な構造なのだろうか。
上級生の階を歩くだなんて心臓に悪い。誰だ大げさだと言ったのは…私にとっては大げさではないのだ。
私はとってもとっても嫌なのだ。
しかも何かバレーを初めに結構運動部が盛んな学校なので、ガタイがいい男の子が結構居て何か怖い。てかむさ苦しい。
私は可愛い女の子が好き。大好き。良い匂いがして柔らかくてぎゅうって抱きしめて癒されるようなのがとってもとっても大好きです。
変態じゃないです。純粋に好きなんです。
たぶん、兄がむさ苦しい筋肉馬鹿だからこんな変態くさい子になったんだ。私の所為ではない。
「名前」
「うん?」
「何か顔変だよ」
「え」
「にやにやしてる」
「え、いや、ただ可愛い女の子はいいなって思って」
「私の話全然聞いてない」
むうと膨れる友達。
可愛いつんと突こうとしたら勢いよくぶすっとやってしまい。殴られた。ごめんなさい。わざとじゃないんだ。
つい、可愛いと思ったら何か勢いがね、そのね
言い訳をしながら早歩きで行ってしまう友達を追いかけた瞬間足が何かに引っかかった。
たぶん、自分の足に。よくにそれで転ぶから今回もそれだ。
私の手から教科書たちが飛んでいく。なぜなら友達の肩を掴もうと両手で持っていた手が片手になって、転ぶ瞬間何かぶわってなった。
なんだろう。
転ぶとき何故か腕を広げちゃうんだ。そして私はべちっと地面に思い切り顔面からもろ転んで行った。
あともう一つ何故か転んでべちってなってほんの少しして、ぱこって聞こえてそれからカンカーンって高い音が響いた。
「ちょ、名前だいじょうぶ!?」
「う…うう」
「うわあ、もろ顔から行ったよ…」
友達のリアクションにショックを受けつつも何とか顔を上げる。
「膝痛い……あれ?ない」
少し滲む視界。目元を軽くこする。
廊下でぺたんと座りこむ姿は無様だろう。だがしかし、膝が痛い。膝を見てみると可哀相に赤く擦りむいているではないか。
それよりも教科書…あと、何か変な音したし…と自分の周りも見渡すもののない。
あれ?ないぞ?私の缶のふでばこ。
少し顔を青くして自分の周りを見ている私の腕を友達が突く。そして小声で話しかける。
「…ねえ、名前」
「わ、私のふでばこ知らない?」
「ま、まえ」
「まえ?」
友達に言われた通りに前を向くと二メートルちょっと先に私のふでばこが見るも無残に開いて中身が飛び散っていた。
そしてそのふでばこの傍にはふた組の足が見えた。ず、ずぼん。スカートではない。
見たくない見たくないと思う心と裏腹にゆっくりと視線が上がっていく。
「…Oh」
無表情で何故か後頭部を手で押さえてこちらを見る男子生徒とその後ろで若干笑っている男子生徒。
私の中で一つの答えがでる。さっきの謎の音と散らばるふでばこと後頭部を押さえている男子生徒。
「…も、もしかしなくても私のふでば」
こ当たってしまいましたか?と続くはずだった言葉は私を追い詰めるように大きな笑い声にかき消された。
「ハハハハ!赤葦お前マンガみたいに見事に当たったな!」
…やっぱり!当たってた!
後ろから聞こえてくるよく通る大きな声。
あああ、顔から血の気がさあっと引くのが分かる。
私の顔色は完全に青くなっているに違いない。そしてその横で立ち尽くす友達。
ちらり、と助けを求めて見上げてみると最初こそやばいでしょみたいな雰囲気だったけど、もうどうでもよくなったのか
いつものクールな無表情で窓の外の景色を見ていた。
きゃー!完全に私無関係ですみたいな空気醸し出してるー!
私が固まってしまっていると、あかあしと呼ばれた上級生がおもむろに屈んだ。え、その上級生はちらばった中身を集め始めた。
え、あ、私は上級生にふでばこを当ててた上に(しかも缶で出来ている奴)、拾わせてしまっている。
うあ、なんてことをしてしまったんだ。
頭がパニック状態になって私は本能的に動いてしまった。それと同時にふでばこのふたが閉じる音がした。
「すみませんでした」
「えっ」
「ちょ、名前」
小さな声の私の謝罪と上級生の驚きと戸惑いが混じる声と友達の驚く声が順々に耳に聞こえた。
冒頭に戻る。
傍から見ると、たぶんこう。
下級生の女の子が上級生男子に廊下で土下座。
私と友達と上級生の間に微妙な空気が流れる。その間も笑う声が聞こえる。後ろから。
ああ、後ろの人そのバカみたいに明るい笑い声でこの空気も吹き飛ばしくれ。
「(…この中で一番不憫なのふでばこ当たった人だよなぁ。名前青い顔で半泣きだし傍から見れば上級生がいじめてるみたいだ)」
友達がそんなことを考えてるとはつゆしらず。
「…とりあえず顔上げてくれないと」
「…」
そろりと顔を上げると困った顔をした上級生。
私と目が合うと余計にバツの悪そうな顔になった。
「怒ってないから。はいこれふでばこ。」
「…あ、ありが」
差し出されたふでばこを受け取ってお礼を言おうとした瞬間、私と上級生の間に誰かが瞬時に来て大きな声で割って入った。
「赤葦目つき良くないけど良い奴だから!怒ってないぜ!」
え、だれですか。
顔を見上げるとこれまた大きい男子…う、あ、この色のスリッパって三年生っ!?
「木兎さん…誰の目つきが悪いんですか」
「あ、ごめんごめん。悪気はない」
ぼくとさんとあかあしさんは知り合いなのか会話を続ける。
そんな中友達が未だに座り込んでいる私に話しかけた。
「名前いつまで座ってんの」
「あ、う、うん」
教科書を拾って立つと友達がぱんぱんとスカートのほこりを払ってくれる。
「ありがとう」
「別に」
そう言うわりに友達は呆れた顔なんだけど、どこか心配したような顔を私を見た。
えへへ、と苦笑いをしていると、私は視線を感じで首が痛くなるくらい上を向いた。
少し引いた青ざめがまた戻ってきた。
「気にしな」
「す、すみ」
あかあしさんと私の言葉に重なるように、予鈴が鳴った。
「あっ、名前行こう!時間やばいっ!」
「えっ、あっ、うん!ま、まって…!」
焦った綾が私の腕を掴んで走り出す。
私は何とか後ろを向いて、失礼しますっ!と叫んだ。
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