再会

女の子からチケットを貰ったその日の夜、自宅に帰りチケットをぼーっと眺めていた。公演日、意外と1週間後なのかあ、割りと急だなあ。
演劇かあ…最後に見たのはいつだっけ。中学3年か高1だった気がする。授業の一環で演劇教室というのがあった。ただ演劇を見るだけなので、普通の授業とは違って楽だった。
当時は思春期というか何というか、演劇を純粋な目で真面目に見る生徒なんてあまり居なくて。真剣に見てたら周りから馬鹿にされる、という勝手な思い込みでいつも寝たフリをしていた。
相手の目を気にして、周りと合わせなきゃって…友達と居てもいつもそう思ってた。
平凡が良かったから、これでいいんだって思ってたけど…大人になった今、学生時代を振り返ると何とも味気ないなと我ながら思う。
まあ、それが地味に心のどこかで引っ掛かっていて、今こうして地元を離れて一人暮らししている訳なのだが。

とりあえず、せっかく貰ったチケットだ。大人になってから演劇を見るのは初めてだけど…周りを気にせず見れたらいいな、と小さな期待を込めて。公演までの日を楽しみに待つのだった。



――1週間後

早いなあ…もう当日か。劇場まで来たが、女性のお客さんが多い様だ。当日になってからフライヤーを貰ったので、どういうストーリーの演劇なのか直前になって知るとは…やはり自分は演劇に疎い。

演劇が始まると、1週間前モヤモヤしていたのは何処へやら。これでもか、という程見入ってしまっていた。
不思議の国のアリスをモチーフにしたストーリーも独特で、役者さんの演技も素敵で、演劇ってすごいんだ!って、人生で初めて知った。鳥肌が立った。
やばい。どうしよう、すごく面白かった!こんなにドキドキしたの久しぶりだ。

公演終了後、興奮冷めやらぬままロビーに出る。そうだ、お手洗い行って一旦落ち着こう。そうしよう。
トイレを出た後、ロビーの自販機でお茶を買って一口飲んだ。なんだかまだお話の中にいる様な、ふわふわした気持ちだ。
ぼーっとしていると、いつの間にかロビーに居たお客さん達が捌けていた。そうだ、そろそろ出ないと…と思い、ドアに手を掛けた時、

「!あ、」

…ん?後ろから声が。やばい、いつまでも居座る迷惑な客だと思われたかも…!
そーっと恐る恐る振り返ると、見覚えのある人が立っていた。

「あ、君は…」
「やっぱり。ちゃんと見に来てくれたんだ」
「この間はありがとうございました。チケットまでくれて、すごく面白かった!」
「楽しんでくれたみたいで何より。ま、オレは出てないけどね。前も言ったけど」

フリマで私のアクセサリーを買ってくれた女の子。改めて見るとほんと可愛いなあ。

「そういえば君もこの劇団の役者さんなんだっけ?」
「そう。この劇団、春夏秋冬の4つに組が分かれててさ、アンタがさっき見た舞台は春組ね」
「へぇ、そうなんだ。君は何組なの?」
「オレは夏組。あ、でも役者兼衣装係だから」
「え!?衣装君が作ってるの!?」
「まあね、作るの好きだし」

役者兼衣装係ってすごいなあ…でもすごく大変そう。若いのにすごい!まあ、この子の名前も歳も知らないけども…
ていうか、こんな喋ってる場合ではない。声を掛けられたとはいえ、もう他のお客さんはとっくに帰った訳で。
いつまでも居たら劇団の方に迷惑だろう。早く帰らないと…

「あれー?ゆっきーなにしてんの?」

チャラそう(失礼)な第三者の声が聞こえた。