話し合い

これからの自分の生活を考えたら、バイトしながら劇団のお手伝いなんて器用な事出来ないけど…

「ていうか、銭ゲバヤクザと監督は賛成な訳?そこもハッキリさせたいんだけど、」

なかなか言葉が出てこない私に、幸くんが切り出してくれた。

「私はもちろん賛成だよ!あっ、名前ちゃんが良ければだけど…左京さんは?」
「まあ、瑠璃川の負担を分散させるのは同意だな。後は本人がどうするかだ」

眼鏡の人がまた私に視線を移す。ここまで来たら逆に断れないな。この人怖そうだし…

「やります!」

勢いで言ってしまった。もう後には引けない。掛け持ちしてたバイト、1つに絞らないとな…

「名前ちゃん、ほんとにいいの!?すごく助かるよ!」
「は、はい…私で良ければ頑張ります」
「じゃあ、早速団員の皆にも自己紹介しなきゃね!あ、そういえば左京さんもまだでしたね」
「はあ…古市左京。秋組だ」
「あ、改めまして名字名前です。よろしくお願いします」

幸くんが、「職業ヤクザ」とボソッと呟く。ま、まじなのか…

そのまま古市さんと監督さんから寮の仕組みや説明などをされた。材料費は劇団の方から出してくれるらしい。製作期間だけ寮に通う、という感じだ。ボランティアに近いのかな。
今は空き部屋がないので、倉庫に作業スペースを設けて貰う事になった。「倉庫なんかでごめんなさい!」と監督さんから申し訳なさそうに言われたが、1人の空間の方が集中出来るので都合がいい。
次お邪魔する時に団員の皆に話と自己紹介をするらしい。監督さんからも、名前で呼んで!と言われ、この劇団はフレンドリーだなあとしみじみ思う。

帰宅の時間、古市さんといづみさんに挨拶をして玄関のドアを開ける。あれ、そういえば幸くんどこ行ったのかな。古市さんの部屋出る時居たのに…忙しいのかな。
いづみさんから、家まで送ると言われたがそこまで遠くないので断った。外へ出て帰ろうとした時、塀の前に幸くんが立っていた。

「あれ?幸くんここに居たんだ」

幸くんが私の目を見るがすぐ逸らされた。

「ごめん…」
「え、」
「いきなりお願いして、振り回してごめん」
「いやいやそんな!まあ、ちょっとびっくりしたけど…幸くんの負担が減るなら、喜んで協力するよ」
「…アンタ優しいね、普通怒るよ」
「え、そうかな…?」

幸くんの中で罪悪感があったのかな?私は別に気にしてないんだけど…謝りたくて外で待ってたのかな、と思うとなんか可愛い。

「幸くん可愛いね」
「ハア!?…人が真剣に謝ってるのに」
「ごめん!ありがとう、心配いらないよ」
「……」
「んじゃあね、おやすみ」

1歩進んだ所で手を掴まれた。思わず体がビクッとする。

「ど、どうしたの!?」
「名前が作ったネックレス、」
「ん?ああ、フリマで幸くんが買ってくれたやつ?」
「あれ監督に見せたら気に入って、衣装で使いたいって…だから、」
「いづみさんはそれ私作ったって知ってるの?」
「まだ言ってないから知らない。でも勘付いてると思う」
「そっか。いづみさん、団員の皆に慕われてるから考えてる事が分かるのかもね」

そういう裏話があったとは。でも自分が作った物を気に入ってくれるのはすごく嬉しい。幸くんは気にしてたみたいだけど、逆にアクセサリーを作る時間が増える事は私にとっての楽しみだから。
だから、そんなしょんぼりしないで欲しい。

「幸くんこれから頑張ろうね。私楽しみになってきちゃった!」
「え、…」
「ありがとう幸くん。何かあったらLIMEして下さい。おやすみ!」
「あ、ちょっと!……いっちゃった」

わくわくしちゃって、なんとなく、家まで小走りで帰った。