清き夜の誓


星辰の節25の日。地上では、舞踏会が行われる日らしいが、アビスではそんな事全く関係ない。今日も私は、彼の隣で膝を抱えていた。
「ルスラ、そろそろ落ち着いたか?」
「う、ん……ごめん、ユーリスくん……忙しいのに……」
「構わねぇよ、まあ、これも仕事みてぇなもんだろ」
そう笑って、私の頭を撫でた。その気持ちよさに身を委ねていると、不意に彼は立ち上がった。
「なあ、ちょっと外、出ねぇか?」
「え……う、うん……」
「心配しなくたって、どうせ上の奴らは舞踏会で浮かれてるよ」
行こう、と私の手を引く彼。連れられるがまま、地上に出た。
久しぶりに見た空は、星が輝いていた。
「星、綺麗だね」
「そうだな、確か…あれが女神の星…だっけか」
「あ、ほんとだ。1番輝いてる」
彼が指した方向を見ると、一際輝く星があった。
「この前、ハピに教えて貰ったんだよ。すげぇよな、空じゃなくて、地面が動いてるから季節ごとに違う星が見えるんだってよ」
「ハピちゃん、天文詳しいんだね!私も習ったけど、もうあんまり覚えてないや」
苦手だったし、なんて苦笑いする。そして、またゆっくり歩き出した。
「どこまで、いくの……?」
「……女神の塔」
「?あそこは、立ち入りできないんじゃなかったっけ……?」
「あ〜、そっか、ルスラは結局士官学校に通ってなかったのか……まあ、なんで女神の塔かって理由は着いてから教えてやるよ」
いたずらに笑った彼の半歩後ろを歩く。ふと見た彼の横顔は、やはり、芸術品のように綺麗だった。
しばらく歩いて、件の塔についた。入口の辺りまでくると、彼は私の方に向き直り、口を開いた。
「士官学校から広まった噂なんだけどさ、星辰の節25の日にこの女神の塔で交わした誓いは女神様が叶えてくれる、なんていうのがあるんだよ。まあ、恋人らの聖地ってところだな。俺は、これっぽっちも信じてないんだけどさ……」
「ルスラとの誓いなら、女神様の力か、俺らの自力か、どっちにせよ成就させてぇな、なんて思って」
はにかみながら言った彼は、私の手を取った。
「俺は、これからもお前と生きていきたいと思ってる。どんな未来だとしても……」
ルスラは?と尋ねられ、まだ何も理解出来ていない頭は更に真っ白になった。
「あ……えと……」
「わ、わたしも……ユーリスくんの隣にいたい、これからも、ずっと……」
きっと、この暗がりでも分かるくらい顔は紅くなっているだろう。彼は、満足したように、私の手の甲にキスをする。そして、その手を絡めて、私を近くに引き寄せた。
お互い、至近距離で目が合う。恥ずかしくて、咄嗟に目をそらす。
「おい、目、逸らすなよ」
「うぅ……」
渋々と彼の方を見ると、唇が奪われる。驚いて、離れようとしても、彼の手が後頭部を支えて動かない。
「ン……」
「ゆ、りす…くん、」
「ルスラ、」
熱っぽい、お互いの目は見詰めあったまま、今度は私からキスをした。彼のように、上手では無いけれど。
「ユーリスくん、大好きだよ……」
「ルスラ……俺も、愛してる、」
甘い言葉を囁き合って、少し恥じらって。
きっと、2人きりだから、少し溶けて居られる。

ああ、女神様。どうか、この闇に生きる私達に、幸福を。



HOMEtop next