amulet

右脚用のケア用品を片付けていると、ポーチのサイドポケットに何か入っている事に気が付いた。
なにか入れてたっけ、ケア用品の取説か何か?と思いながら取り出すと、ポストカードが1枚入っていた。
「これ……!」
赤やピンクを主として様々な色がせめぎ合うような絵がプリントされたポストカードを握る力がぎゅっと強くなる。
「なに、その絵」
隣で動画を見ていた凪が、俺の手元を覗き込んだ。
「俺の、恋人が描いた絵、だよ」
「千切の恋人?画家なの?」
「今、美大通ってる」
「へぇー」
あの鼻に付く油絵具の匂い、鉛筆を一心不乱に擦り付ける音、彼女の絵が様々な感覚刺激を思い起こさせる。
「千切の恋人ってどんな人なの?」
「え?あー……なんか、凪に似てるかもな。あんま表情変えねぇし、マイペースだし、何考えてるかわかんねぇ」
「……俺ってそんなに分かりにくい?」
「うん」
まーいいや、とあまり深く気にしない所も、少し似ている気がする。
「……千切の恋人は、千切のこと、よくわかってる人なんだね」
「は?」
「その絵、千切みたいじゃん」
凪に言われて、絵を見る。昔から彼女の描く絵を見てきたけれど、ただそれだけだった様だ。
凪に言われて始めて、この絵が俺を表現してると理解した。そして、彼女が思っていたよりも俺をよく見ていた事も。
「あれ、裏なんか書いてるよ」
凪がポストカードの裏を覗き込む。ひっくり返すと、彼女からのメッセージだった。
『豹馬がどんな選択をしても、私は君を応援してる。次会った時、君の見た物、感じた事、沢山聞かせて欲しい。待ってる。』
大和田珀亜、と達筆なサインと共に綴られた言葉は、俺を熱くするには十分すぎて。
「……俺も、頑張らねーとな」
「まず明日、だね」
「あぁ」
持っていたポストカードは大事にポーチの中に直した。彼女はきっと、いつか気付くと読んでこのポストカードを入れていた。そう思うと、やっぱりずるくて、賢い、斜め上を行く人だ。
そんな、どれだけ一緒に居ても全く掴めない彼女に、思いを馳せて。