僕はあの時ほど、あいつ……アルハイゼンがキレたのを見たことはなかった。
ひとつ言えることは、その日僕はティナリに泊めて貰った、という事かな。
─────── カーヴェ
***
「君はお酒が好きだな」
「程よい酩酊状態は心地いいよ」
「程よいと言えるのか?」
「言えるさ、なぁ!カーヴェ!」
「悪いことは言わない、そのくらいにしておいた方がいいと思うぞ」
昔ながらの知り合い、それこそアルハイゼンとカーヴェが幼い頃からの知り合い。……私はほぼ歳を重ねてはいないが。
すっかり大人になった2人をみて柄にもなく笑みが漏れる。
「ふふ」
「何を笑っている?気でも触れたのか?」
「おい、アルハイゼン!」
「いやー、2人とも大人になったなぁって……」
机に腕を乗せてその上に顔を乗せて目を閉じる。何だか今日は酔いが回るのが早いみたいだ。
「……君は、何故親のような感想を言うんだ」
「こーんなときから見てたじゃない」
「おい、それ手のひらサイズなんだが」
「恋人とかも出来た?でも2人とも忙しいもんねえ……」
2人はいつか恋人を作り、結婚して、家庭を築いて、死んでゆく。もう何人も見送ってきた長寿の身体には少し、悲しい。
涙腺が弱っているようで目には涙が張る。見られまい、と顔をそのまま腕に埋めてしまった。
「そういう君は居ないのか」
「……居ないねえ、もう何十年……いや何百……居ないねえ」
「なんだか凄い桁が聞こえた気がするんだが」
「気のせい気のせい」
「ほぼ初物なのか、君は」
「お、おい!アルハイゼン!」
吃驚した。アルハイゼンから初物、なんて言葉が出てくるとは思わず顔を上げてしまった。
なんだ?と言うように咎めるカーヴェを見るアルハイゼンはいつも色の無い頬をほのかに染めていてああ、アルハイゼンも酔ってるのか。と認識した。
「……アハハハ!……アルハイゼンもそういう事への知識はあるんだね」
「俺をなんだと思っている」
「性欲皆無そう」
はわ、はわはわ、と視界の端でカーヴェが狼狽えている。
アルハイゼンは手に持ったグラスを一気に飲むと机に叩きつけた。
「心外だな」
……なんだか地雷を踏んだようだ。
カーヴェを横目で見れば静かに首を振られた。
「……アルハイゼン、僕はティナリの家に行くよ」
「あぁ、是非ともそうしてくれ」
「え。カーヴェ帰っちゃうのか」
「あぁ、君の無事を祈っているよ!」
これは恩だからな!と捨て台詞を吐くカーヴェに「代金でチャラだ」と言うアルハイゼン。2人にしか分からないことがあるのは確かだが、このまま私はここに居たらアルハイゼンの怒りをモロに喰らいそうだ。
「……っとお、私もそろそろ帰ろうかな……」
「何故だ?明日は休みだと意気込んでいただろう?」
「いやー、その……長く生きてるから、こう、良くない感じなの分かるというか……」
「それならば話は早い。君の生態について詳しく聞きたいのだが、良いな」
こちらの返答を聞かずに立ち上がるアルハイゼン。
目をパチクリとさせていれば「立たないのか」と言われくそ〜!私の意見は〜?!となりながらも従ってしまったのは無意識下の許しなのだろう。
しれっと代金を払ったアルハイゼンに口を出そうとするもスタスタと歩いていってしまい、こいつ本当に酒飲んでるよな?と背中を睨みつけた。
このまま帰れるんじゃ?と考えていれば「逃げようなどと思わない事だ」と言われてしまった。先回りが上手いことで。
「ところで君は性欲はあるのか」
「歩きながら言うこと……?」
「誰も聞いては居ない」
「そうだけど……。性欲ね、あるにはあるよ。でも程度はよし、ちょっと発散しとくか。くらいだからそんなに感じたことは無いね」
「そうか。経験は?」
「……これ医者の問診……?経験は……興味で、2回ほど……もう何百年も前ね」
「…………そうか」
慣れた手つきでアルハイゼンは家の鍵を開ける。そう言えばここまで着いてきてしまったのだが。
「入らないのか、俺は入るが」
「……なんかこう、まんまとアルハイゼンに着いてきて……カーヴェも居なくて、なんか……」
「まんまと食われに来た、のように感じるのか?」
「……まぁ」
「君の危機感は正解だよ、俺は今から君に告白しようと思う」
躊躇いがちに家に踏み込めばガチャン。と伸びてきたアルハイゼンによって閉められる扉。
……今、なんて?と顔を上げればいつもと変わらない無表情のアルハイゼンと目が合った。
「君は俺が好意を抱いていることを露にも思っていないだろう」
「そ、れは、……まぁ」
「君のことが好きだよ、所謂初恋であり一目惚れだ。幼少期に埋め込まれたものと言うのは中々抜けない」
「……私が、性癖開花させたみたいな言い方」
「あながち間違いではない。なにせ俺の性欲の発散には君を使っている」
「そんなこと堂々と言わないで」
身体中に血が巡る。こんな感覚久しぶりすぎて、どうしたらいいのか分からない。
アルハイゼンの事は嫌いではない、むしろ好意的な方ではあると思う。が手放しに嬉しい!付き合いましょう!とは至れないのは私のせいだ。
「君の考えていることは分かる。どうせ俺の方が先に死にゆくのを危惧しているのだろう」
「……ぐうの音も出ない」
「数々の生き物を看取った君だ。その考えは当たり前だ。しかしそれを棚に置いて俺は言おう。……俺と今を生きてはくれないか」
足元が、崩れる気がした。
頭が混乱して何も考えられない。勝手に涙が出る、アルハイゼンの指先が頬を伝う涙を掬った。
「リサ」
抱き寄せられた、と同時にアルハイゼンの肩口に顔を押し当てる。じわ、と涙によって滲んでいくアルハイゼンの服なんて気にしてられない。
私の髪の毛を指で梳く様にアルハイゼンの手が動く。時たま顔を寄せられるのに気づいてからは体が固まってしまったが。
「返事は後でで構わない」
どうせ答えは分かりきっているのだから。と言わんばかりに含んだ言葉を言うアルハイゼンにこいつ、と睨みつけようと顔を上げた。
────言わば砂糖を煮つめたような、蜂蜜の塊のような。
そんな目をしたアルハイゼンと目が合い、言葉を失った。
その目が段々近づいて来て、距離はゼロになった。
今何を。と私が理解する前にアルハイゼンの唇が幾度となく振ってくる。
何をされているのか理解して手でアルハイゼンの肩を押しやるも両手首を握られてしまい微かな抵抗になってしまった。
元素力をぶっぱなせば逃げられるのはわかってる、けど、しないのはそういう事なのだろう。
「んん?!」
下唇をやわく食まれて開いた一瞬の隙に舌をねじ込まれる。
これ、やばい……!なし崩しに、食われる……!
「待っ、ん!!息……!」
「ん、……は」
聞いちゃいない!
息が出来ない、ただ長生きしてるだけのほぼ処女やぞ!大事にしろ!
どっちのかも分からない唾液が顎を伝う。唇が離れた時には月あかりで銀糸が見えたのを覚えている。酷く、煽情的だった。
「手が早いのは、謝ろう。しかし止められるほど出来た大人ではない」
ごり、と押し当てられるアルハイゼンの腰に言いえぬ悲鳴が漏れた。どうしてこんな、立派になってるんですか……!
***
「ぅあう……っ、あっ、あ……!」
ぐち、と酷く淫らな水音がする。私の下腹部ではアームカバーも外し、上半身を裸にしたアルハイゼンが指を入れて前戯をしている。
どうして、こうなっているのか。はく、と口で息をしながらまともに回らない頭で考える。
「また余計なことを考えているな」
「んん!そこ、やめてって、……!んぐ……っ!」
「唇を噛むな」
声を出すまいと唇を噛んでいれば阻止するようにアルハイゼンの唇が降ってくる。
縋り付くようにアルハイゼンの頭に手を回せば微かに笑んだ気がした。
ぐちぐち、と淫らな音は止まらない。もうこの前戯で何回イったか分からないし、中に2本、もしくは3本入っているアルハイゼンの指にもうやだ〜!と半泣きである。
「っ……ふー……」
「……ッ……しぬ……!」
「こんな事で死なれては困る、な」
ぎゅうぎゅうにズボンに詰められていたアルハイゼンの陰茎が取り出されて、死ぬ。と確信した。
多分、デカいほうだ。そりゃ身長もあり体格もいいアルハイゼンのことだから、とは思うがこれはデカい。
「死んでしまう」
「腹上死は男の方が多いから安心しろ」
「収まらない」
「……収まるよ、その為に念入りに解したんだろう」
スキンは、と思ったがまぁいいか。と考えを放棄した。
多分アルハイゼンはこれで妊娠したとしても受け入れるだろう。……そもそも妊娠する身体なのかも、分からない。生理は来るが。
ぴと、とアルハイゼンのものが下腹部に添えられる。
やはりデカい。ヘソ下まで入ってしまいそうだ。
「……アルハイゼン」
「なんだ。止めろと言われても流石に無理だが」
「……好きだよ、一緒に居てね……」
「……ッ、君というやつは……!……ハハ、柄にも無く嬉しいな、この気持ちは」
下腹部に質量のあるものが宛てがわれる。そのままグ、と緩やかに中に入ってくる。
「ッは、力を抜け……!」
「む、り……ッ!」
だって、挿入だけで甘イキが止まらない。
腰を掴んでいるアルハイゼンは分かるだろうに、奥に行く事にビクッと体が震える。
口からは言葉にならない吐息がハー、ハー、と漏れる。
「ッ……君は、酷く敏感だな」
「誰の、せいだと……ッ!」
「俺のせいのようだな……ッ」
ごちゅん、と奥まで一気に挿れられて目の前がチカチカする。
やや下がっていた子宮口にアルハイゼンのものが当たり、微かに目を見開いたアルハイゼンと目が合う。
「……降りてきてるのか……」
「ん……ぐっ、押さな……いでッ!」
「このまま中に幾度となく出せば、孕むのか」
「わがん、なッ……!」
腹部を押される。外側から。
アルハイゼンの形が分かってしまう感覚に頭が、狂う。
ずろ、とギリギリまで抜かれ、最奥まで貫かれる。
もう言葉が出ない、汚い音しか口から出てこない、死にたい。
「ぐっ、あ、んッ……ぐぅッ……!」
アルハイゼンも顔を顰めて何かに耐えるように、腰を動かす。
あ、やばい。私今、アルハイゼンとセックスしてるんだ。
「ッ……!急に、締めるな……!」
「ご、め……ッ!ぁう……ッ……はは、私、いま、アル、ハイゼン、と……えっちして、る……!」
「ッあぁ、そうだとも、俺は今」
君を犯してる。
顔の横にアルハイゼンの両腕が逃がすまいと添えられる。ばちゅっと打ち付けられる腰の動きに耐えられず顔を左右に振るもアルハイゼンの顔が、口が首元に容赦なく歯を立てて来る。痛い、気持ちいい、もうやだ。
もう何度達したか分からない、私もアルハイゼンも。
外が白くなり始めた頃、体のベトベト感に不快感を覚えて体を起こした。
誠に非常に不本意だが、体の相性はハチャメチャに良いみたいだ。
「……ッ、腰痛い」
「すまないとは思っている」
「わぁ!見て!アルハイゼンの手形!どんな力で掴んだんだよ!もう!」
「そう言う君もやたらと跡を残してくれたようで何よりだ」
「ごめん」
お互いが裸なのを気にせずに自分の体を見ていると横になっていたアルハイゼンが上半身を起こした。
「リサ、君は休みだったな」
「うん、アルハイゼンは仕事じゃない?」
「…………」
「行きたくない顔してる。お風呂入って仮眠取って」
「……帰ってきたら君は居ないんだろう」
「居るよ!……でもほら、ここは……カーヴェ帰ってくるから」
「追い出す」
「やめといて。…………その、お風呂一緒にはい」
「る。有言実行だ、行くぞ」
「ちょ、ま……!動きが早い!」
言い終わっていないのにも関わらずシーツごと抱き上げられてギャー!と悲鳴が漏れる。
……でも目にわかるくらい、上機嫌なアルハイゼンに私は何も言えなくなってしまった。
─────── 小話(カーヴェ視点)
アルハイゼンの長い片想いは成就したようだ。
あの日家に帰れば綺麗に掃除された家と対面してお?と思ったがどうやらリサが掃除して帰った様だった。ついでに僕の寝具も丸洗いされていたからな。あのアルハイゼンは絶対にしない。
あれからと言うものの、アルハイゼンは露骨だった。
リサを見かければ隣をキープ。距離も近い。リサは丸め込まれているのか「距離」と咎めても「俺が隣に居たいんだが」と言われて降参していた、もっと頑張れよ!
リサの項の所に噛み跡を見つけた時にはアルハイゼンの胸ぐらを掴んだ。マーキングが露骨すぎるだろ!