「あれ、梨沙さんは?」
「情報収集、つってどっか行ったけど」
「ふーん」

そうは言ったもののなんだか気になる。アシリパさんと白石に声を掛け梨沙さんが居そうなところに向かった。


***


「ありがとうね」

聞き覚えのある声がした、が周りを見ても梨沙さんは居ない。どういうことだ。

「一旦戻るか……」
「…………梨沙さん?」
「……杉元?どうした?」

目を疑う、いつも洋装に身を包んでいる梨沙さんが女性の着物を着ている。

「おーい杉元?」
「あっ、えっ、と」
「あんまりいい情報手にいられなかったから戻るけれど、杉元はどうする?」
「……戻る」

いつも無造作に纏められている髪も下の方で綺麗に纏められ簪も刺さっている。
ジ、と無意識に襟元に目線が行く。色白いな、細いなと関係ない事ばかりが頭をよぎる。

「梨沙さん、その、着物持ってたんだ」
「一枚だけね。こういう時使えるし」
「……簪も似合ってる、綺麗だ」

すり、と梨沙さんの手に指を寄せる。そのまま軽く手を握れば拒否もされなかった為しっかりと握りなおした。

「杉元」
「ごめん、ちょっとだけ……」
「……ちょっと散歩するか?」
「えっ、うん!」

やばい、俺手汗が気になってしようがない。絶対ぬるぬるだよ、梨沙さんにバレてるって!どうしよう!

「杉元、お前露骨に態度に出過ぎだ」
「ご、ごめん……」
「着物女子が好きなんだな」
「待ってそういうことじゃないんだけど」
「えっ?」
「梨沙さんが着物だから」

口を一文字にして梨沙さんを見る。本気で勘違いしていたようで目をぱちぱちと数回、瞬きしていた。

「いつもの、梨沙さんも……良いけど」
「はは、ありがとうな」

くっそー!華麗に流されている気がする、心の中で大きなため息を吐くもちらりと横目でみた梨沙さんの耳が仄かに赤くなっていて。

「梨沙さん」
「よし!帰るぞ杉元!」

パッと離された手。ちょっと、悲しくなった。