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エイプリルフールネタ



直「なあ、慧」
慧「なに」
直「今日何の日か分かる?」
慧「?、……ああ、エイプリルフールか」
直「そう! ということで嘘吐いて回ろう!」
慧「ええ……?(面倒臭い……)」
直「これを機に皆と交流しとけって。ただでさえ友達いないんだから」
慧「……」
直「じゃ、報告よろしくな」
慧「え、俺一人でやんの?」
直「俺は忙しいからパス〜」
慧「(こいつ……)」

慧「ふ、藤咲……」
初「ん? どうした?」
慧「俺、付き合うことになった……」
初「は? 誰と。……あ。あいつか? 皇彼方」
慧「えっ……あー、うん、そう。彼方先輩」
初「……」
慧「(やばい。藤咲の顔がとんでもないことに)」
慧「……藤咲?」
初「そっか、分かった。ありがとう、教えてくれて」
慧「えっ」
初「今から殺してくる」
慧「(目が据わっている)」
慧「ちょ、ちょっと待って。嘘! 嘘だからその包丁しまって」
初「何で。あいつ水瀬に何したか覚えてねえの?」
慧「い、いや。覚えてるけど。その……う、嘘だから! エイプリルフール!」
初「……」
慧「(と、止まった)」
初「ははは!」
慧「(うわ、笑い始めた。ついに頭おかしくなったか?)」
初「俺も嘘だよ。騙された?」
慧「へ?」
初「騙してきたから騙し返した。焦っただろ?」
慧「な、何だよ……お前もそういうことすんのかよ……」
初「ははは。……もうこんな質の悪い嘘吐くなよ」
慧「う、うん」
初「よし、じゃあちょっと出かけてくる」
慧「うん……って、どこ行く気だ! 包丁をしまえ!」

慧「(酷い目に遭った……)」
彼「あれ、慧ちゃんじゃん」
慧「(うわ、このタイミングで彼方先輩かよ)」
彼「何でそんな嫌がってんだよ」
慧「いえ……ああ、そういえば」
彼「ん?」
慧「俺、恋人出来ました」
彼「……へえ?」
慧「(ニヤニヤしてる……)」
彼「ひっどいなあ。彼氏の前で浮気宣言?」
慧「は?」
彼「構ってもらえなくて寂しいからって嘘吐くなよ。可愛いな」
慧「いや、先輩と付き合った覚えは……、んんっ……!?」
慧「(ギャー! ディープキス!)」
彼「……寝取られもなかなか興奮するな。ちょっと付き合え」
慧「は!? ちょ、腕引っ張んないでください! トイレに連れてって何する気ですか!」
彼「……」
慧「な、何か言ってくださいよ! も、離し……っ、ん、あっ……!」

慧「(結局最後までやってしまった)」
永「あれ、慧くん」
慧「あ、会長……こんにちは」
永「こんにちは。調子悪そうだね。大丈夫?」
慧「え、ええ。先輩は調子どうですか」
永「うん……実はそんなに良くないんだ」
慧「え! 大丈夫ですか?」
永「まあ……ッ、ごほっ……!」
慧「(え!? と、吐血!?)」
慧「えっ、そ、それまずくないですか!? え、えっと、こういう場合は保健室? 救急車は呼んでも来るのか? えっと、えっと」
永「……っ、ふふ」
慧「……え?」
永「慧くん、素直だね。これは――」
叶「永久!?」
慧「(うわ、セコム)」
叶「大丈夫か!? 早く保健室に行って休むぞ。だからいつも無理するなと……」
永「え? え?」
叶「喋るな。苦しいんだろう。早く連れていってやるからな」
永「あ、うん……? えっと、じゃあまたね、慧くん」
慧「は、はい……」
慧「(お姫様だっこだ……)」
慧「……」
慧「(あの吐血は嘘、だよな……?)」

慧「(疲れたからもう戻ろうかな)」
隆「あ!」
慧「げえ!」
隆「何だよ、その反応は」
慧「いえ、別に」
隆「……まあ、いい。それよりも話がある」
慧「(どうせ騙してくるんだろうな)」
慧「何ですか?」
隆「好きだ」
慧「は?」
隆「付き合ってくれ」
慧「(古典的だ)」
隆「……何だよ」
慧「ああ、いや……奇遇ですね、俺も好きです」
隆「……は?」
慧「付き合いましょう」
隆「え?」
慧「初デートはどこにしますか? 外に出れませんから、学園内になりますけど。俺の部屋でも来ます?」
隆「あ、いや」
慧「あと俺、初めてじゃないですけど大丈夫ですか?」
隆「え」
慧「じゃあ早速部屋行きますか。優しくしてくださいね」
隆「……」
慧「あれ? 逃げちゃった。まあ、いいか」
初「次はあいつが相手か?」
慧「うわ! いつの間に!」
初「質の悪い嘘吐くの止めろって言っただろ」
慧「あ、ああ……うん。ごめん……」
初「帰るぞ」
慧「はい……」



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