こだまの子の凄腕職人の彼女との話
こだまの子に、シロネンに頼んでいた備品を取りに行く。
生憎シロネンは休憩中だったらしく、戻ってくるのを待っている間に持ってきたお菓子とお茶を食べながら、ニペカと通りかかったカチーナも誘っておしゃべりをして時間を潰す。
ニペカは勉強を頑張っていて、最近は興味の幅が広がってきているらしい。
竜の手入れ道具は壊れやすい。自分でも手入れはするが、常に予備を数本持っておかないと仕事が成り立たない。申し訳ないけど壊れにくい道具を望むならシロネンに頼むのが一番だった。
休憩から戻ってきたシロネンはいろんな荷物の山の中から依頼の品を出してきた。
「まぁアンタの依頼は頑丈ってだけでそこまで複雑じゃないから、いい息抜きになってるよ」
炎神マーヴィカからは、炎神の炎に耐える大剣とか、水上を走れて空も飛べる双駆輪とか頼まれてるそうだ。
しかもしょっちゅう破壊してシロネンに修理の依頼をしてるらしい。
それで対応できるシロネンもすごいが。
「はい、頼まれてたやつ、これね。ヤスリとニッパーの予備、五本ずつ」
「ありがとうシロネン! すっごい感謝してる! さっすが最高の職人!」
「はいはい、じゃあその最高を保つために、マーヴィカに居場所訊かれても教えないでくれると嬉しいんだけど」
「えっ……それはちょっと」
「秒で裏切るじゃん」
「マーヴィカ様に見つめられて嘘つけると思う?」
感謝の証として、依頼品の配達を任された。
直接取りに来られない場合は懸木の民の配達サービスに頼むこともあるそうだ。
今日はアディレがいるので、ついでとばかりに三つほど荷物を渡した。
「オッケー任せて。謎煙の主と……流泉の衆……うわ、遠回りじゃん……こっちは花翼の……あれ、これイファの?」
「そ。イファに頼まれたやつも出来てるから、アンタから渡しといて」
「いつもホント助かってるよシロネン……」
厳重に梱包されているから中身は見えないが、イファからの依頼ということは竜の医療器具だろう。
他の二つもそうだが、大切に持ち運ばなければ。
シロネンはまた休憩という名のサボりに行ってしまった。
いつも責任ある仕事をしているから休息は大事だ。
というより炎神の無茶振りが来そうな、嫌な予感から逃げるためではあるが。
「さーて、あたしも行かなきゃね……」
アディレは流泉の衆に寄ることで遠回りになる帰りの道程を思い浮かべる。
近くにいる竜が運良く乗せてくれれば助かるのだが。
竜の機嫌が良いことを祈りながら、歩き出した。
シロネンは昼寝にちょうどいい木の、下からは見えづらい枝の上からアディレの後ろ姿を見送った。
(……ホントはイファからアディレ宛のプレゼントなんだけどね……本人から配達されたらどんな顔するんだか。……ま、中身は見えないようにしてるけど)
⋆20260207