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「黒尾君って、かっこいいよね」
『・・・は?』



黒尾鉄朗という人間について、私の思う限りで考察をしてみることにしよう。

黒尾鉄朗。音駒高校男子バレー部主将。バレー部なだけあって身長は高い。三年連続同じクラス。何故かよく隣の席になる。そのせいか私達の仲は良い方だと思う。私はあまり社交的とは言えないタイプなのだが、黒尾がよく話しかけてくれたからだろうか、男女の垣根を越えて仲良くさせてもらっている。

普段の黒尾はクラスの人気者の輪にいる気がする。でも、大勢で馬鹿みたいな事をする男子とは少し違って、盛り上がりつつも一歩引いて周りを見ているというか・・・大人びている、というのがしっくりくるだろうか、そんな感じだ。
ちょっと待て・・・大勢といる時はそんな感じだけど、私に対してはたまに小学生じみた悪戯もしてくるな、そう言えば。
性格は・・・どうだろう、よく身長の高くない夜久をいじったり、私の事も小馬鹿にすることが多々ある。
でも、先日の授業中のアシストのように、私を助けてくれる事も多い。私の身長は女子の平均くらいだけど、黒板の上の方とか届かない所はいつも綺麗に消してくれる(小さいって馬鹿にしてくるけど)。
部活が忙しいだろうに日直の仕事を任せっぱなしにしない。クラス全員分のノートとか重たいものはいつも黒尾が運んでくれる(僕が優しいのはいつもの事ですとか言いながら)。一見適当そうだが、ちゃんとする所はちゃんとしている。案外真面目な人間なのかもしれない。

ここで、何故私が黒尾について真面目に考察しているか。それは冒頭の一言から始まった。



「悪い、今日は部長会議があるから」

そう言って黒尾は、いつもは2人でやっている放課後の日直の仕事を私に頼んだ。
月に一度ほど、各部活の部長が集まって色々話をするらしい。部活に所属していない私には無縁の話だから、たまに黒尾に話を聞く程度で内容は詳しくは知らない。
ただでさえ忙しいバレー部なのに練習時間を削られて大変だなあ、という思いから、こういう日は私が放課後の仕事を請け負い、黒尾にはそのまま部活に行くように伝えている。
部長会議が何時に終わるのか知らないが、そもそも日直の仕事は学級日誌を書いたり黒板を消したりとそこまで大変な仕事ではない。だから普段も、私がやっておくから黒尾は部活に行けばいいと言うのだが、なかなか黒尾は折れてくれない。その厚意を無下にするのもなあ、という思いから、2人で早く終わらせられるように仕事をするのが私達の決まりになっている。

さて。そういうわけで日直最後の仕事である学級日誌にいざ一日の振り返りを書こうとペンを握るが、なかなか話題が出てこない。いつも黒尾はスラスラと書いていたなあ、どんな事書いてたんだっけ、なんて思い返していると、ふと放課後の教室に残っていたクラスメイトに冒頭のように声をかけられたのだ。

黒尾君はかっこいい、と。

果たしてその言葉にはどういう意味があるのだろうか。
純粋な感想?これ以上仲良くするなという女子特有の牽制?
いや、このクラスメイトは後者のような性格は持ち合わせていないはずだ・・・と日頃のやり取りや振る舞いから想像する。
けれども私自身女子のそういう面倒事には巻き込まれたくないのだが、と思いつつそんな私を置いて、クラスメイトの口からは次々に彼女の思う“黒尾君のかっこいい所”がわんさか出てくる。

イケメン、優しい、バレーが上手い、レディーファーストをしてくれる、球技大会で応援をしてくれた、等々。
黒尾君て女子に人気だよね、と。
・・・どうやら黒尾君はおモテになるようだ。

ひとしきり黒尾のモテ要素のPRをしたら満足したようで、クラスメイトは「あ、私次の電車に乗るから」と身支度を始めた。
一体彼女は何がしたかったんだろうか・・・天然と名高いうちのクラスの人気者の考えることは、私には分からない。
そして最後、またも意味不明な、そして爆弾発言を残し、彼女は教室を後にした。

「黒尾君がかっこいいのは私もすごく分かるよ!でも私は別に黒尾君の事が好きとかじゃないから安心して!」
『はあ』
「倍率高くて大変かもしれないけど、上手くいくといいね!」


・・・はあ?