理解されない

切原赤也side

 俺の手をグイ、と引っ張ったままテニスコートに向かう丸井先輩に「なんで?」という疑問しか浮かばなかった。
 先輩達は何故、あんなにも工藤先輩を嫌っているのだろうか。
 工藤先輩に近づいたのはただの好奇心からだった。あの優しいテニス部の先輩達が揃って悪く言う人はどんな人なのだろうかと思った。
 けど、実際に会って話した工藤先輩は、悪い人には見えなかった。普通の人。それが最初の印象。で、多分、すごく、寂しい人。だからあの工藤先輩が、テニス部の先輩達に媚を売っていたなんて信じられなかった。

「丸井、どうかしたの?」

 テニスコートには幸村部長がいて、俺と丸井を不思議そうに交互に見る。それがなんだか居心地悪くて、俺は視線を足元に移した。

「コイツ、工藤と話してやがった」

 普段は聞かないくらいの丸井先輩の低い声に俺はビクリと肩を震わす。
 丸井先輩の言葉に幸村部長は険しい表情をして、「工藤とは関わるな、って言ったよね?」と言った。

「で、でも!」

 顔を上げて反論しようと口を開いても「赤也」、と鋭く言われて黙るしかなかった。
 でも、でも。
 工藤先輩が俺に媚びを売っている? ただ、猫被っているだけ? そんなこと、ない。
 実際に会ったのはまだたったの2回だけれども、わかった。あの人はいつも一人で、孤独だった。たとえ昔、本当に先輩達に媚びなんかを売っていたとしても、きっと今は違う。
 どうして敏い先輩達がそんな簡単なことが、わからないのか。

「先輩達に、工藤先輩の何がわかるんっスか」
「少なくとも工藤のことは赤也より知っているよ。俺達のほうがずっと工藤と関わってきたんだ」
「でも、今は変わったかもしれないじゃないっスか!」

 部長と口論みたくなっていると、それまで黙って俺達の話を聞いていたジャッカル先輩が口を開いた。

「赤也、工藤だけは、アイツとだけは、関わるのをやめろ。お前が傷つくだけだ。アイツは今も昔も、変わらない」

 そう言ったジャッカル先輩は今にも泣きだしそうな表情をしていて、俺は黙ることしかできなかった。

 どうして、先輩達はわかってくれないのだろうか。それが、ただ悲しくて。

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