少しだけの変化
「あっ、大倉、おはよぉ」
「おはよ、ヤス」
「早いなぁ。練習してん?」
「うん。なんか上手くいかへんから」
あっ、前回と会話ちょっと違う。俺、確かこの日にみんなに遊びいかへんこと伝えたんやっけ。この日の練習、二回目や。ちょっと面白くなって、ふふっと笑うと、ヤスは不思議そうに首を傾げた。
「大倉ー! DVD観た?」
「おん、観たで。おもろかった」
「せやろー! どれ観たん?」
「えっとなぁ……」
あ、なんか違う。そっか、過去が変わると未来も変わるんや。典型的。
マルとヤスと話していると、亮ちゃんが入ってきて、ピッピッとエアコンの温度を下げた。強まった冷たい風が肌を撫でる。でもずっとドラム叩いとった俺も暑いし、ちょうどええ。
先輩三人も入ってきて、みんなでチューニングとか準備して、俺は個人練習。どうしても上手くいかない部分があって、自分で納得いかへん。誤魔化し誤魔化しやればそれっぽいけど、それってちゃんとリズム取れてんのかな。
「一回合わせるか」
すばるくんは部屋が寒いのか鳥肌を立てていた。あ、そういや、前回もそうやったな。寒いなら、上着ればええのにって思ったんやけど、上着、持ってきてないのか。まぁ、外は暑いもんな。
────
「来週の月曜、よこちょたちもお祭り行くん?」
「あー多分な」
「じゃあ、みんなで合流できるかもなぁ」
「男だらけで祭りってのもつまんないやろ」
「大倉の彼女見れるで?」
「はっ!? お前もう出来たんか!」
「ないない。祭りも行くか分からへんし」
「えっ、そーなん?」
「あーでも行くかも……」
「どっちやねん」
ああ、でも祭りがループの原因かもしれんし、行っといたほうがええんかなぁ。でも、外にいるのって絶対に死ぬ気がする。前回のオブジェとかなんか別もんの力が動いた気がするもん。脱線電車とかもそうやんな。あ、でも家にいても心臓発作起こして死んだって言うとった……。絶対に死ぬんや、何しても……。
あかん、弱気になったらあかん。絶対に助けるって決めたやんか。今回は死なせへん。
でも、どうやって? どんなに名前が回避しようとしたところで死は襲ってきた。俺一人が加わったところでそれに抗うことって出来るんかな。
「……、……ら、…………大倉!」
「! ……なに?」
「さっきからぼーっとしてどうしたん? もう駅やで? 俺ら反対方向やろ?」
「あっ……ほんまや」
「風邪? あんま無理せんといてな」
「うん、ありがと。じゃあ、みんなお疲れ様」
「バイバーイ!」
みんなと別れて、亮ちゃんと二人きりになる。今日の亮ちゃんの機嫌はあまり良くないから、黙ってそばにいるだけ。別に沈黙は苦やない。昔からそうやったから。一緒にいるだけで相手のことがわかって、寄り添える。そんな関係。
「なぁ」
電車から降りて、駅の喧騒の中を歩いていると亮ちゃんが話しかけてきた。
「もしかしてやけど、十五日ダメなん、名前と一緒におるから?」
「えっ……」
「…当たりやんな。なんで誘ってくれへんの」
「えっ、ちょっと待って。なんで亮ちゃん分かったん?」
「なんか、勘? いつもお前ええ子おったら名前すぐ言うくせに今回言わんし。分かりやすいねん」
「うわ、気付かんかった……」
やっぱそうなんやーって、さっきまでの機嫌の悪さはどこに行ったのか、亮ちゃんはくしゃっとした笑顔で笑っていた。さっきからずっと黙ってたんって、これ考えてたんか。
「なんで俺誘ってくれへんのー」
「んふ。だって、デートやもん。誰にも邪魔されたないやん」
「えっ!? そんな関係になってたん!?」
「や、まだやけど」
「うっわ! うっわ! まじか! なんでそうなったん? それだけ教えてーや!」
「全部上手くいったらな」
ごめんな、亮ちゃん。俺らが十五日一緒にいるの、話せないねん。だって、話したら亮ちゃん悲しむやろ。悲しませたくないから言えないねん。今回で終わらせる。そしたら、こんな夢見たって、三人で集まって話そうや。