限界が近かった


結局、何も分からないまま十五日を迎えた。三回目の一週間はもうそろそろ飽きてきた。亮ちゃんが遊びに誘ってくる。断る。練習はいつものとこがやっぱ上手くいかへん。すばるくんには何か他に考えてることあるやろ、と言われた。音楽に向き合う気持ちには到底なれへん。何調べったって結果出てくるものは同じ。焦りと不安で何やっても空回ってる気がする。


「大倉、なんか、……大丈夫? 相談乗るで?」

「……平気」


ヤスが心配して俺のこと覗き込んでくるけど、言えるわけない。ヤスは優しいから多分ちゃんと信じてくれるし、解決策考えてくれる。でも、この一回だけ? ヤスにも目の前で人の死を見せてまうん? もしかしたら、何も関係ないヤスを巻き込んでまうかもしれん。そんなん、出来ひんやん。
それと、俺の独占欲と使命感があって、誰かに二人だけの秘密を明かしたくない気持ちがあった。絶対今回で終わらせたる。確信のない自信だけが前回もあったけど、今回も……いや、ないな。多分、名前は目の前で死んでいく。どうにかせんといけんけど、どうしようもできなかった、今回も。


「……忠義、大丈夫?」


大丈夫やないのはお前やろ。これから怖い思いまたする名前にまで心配されるとか、俺、情けな。



そして、無情にも十八時の呪いには勝つことはできひんかった。



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声が、きこえる。


──嫌や! 嫌や! なんでなん!?


馴染みのある関西弁はノイズで聞こえづらい。けど、多分そんなこと言うてる。


──あかん、あかんよ。なんで……


泣いてるん?

どうしたん?


話しかけたくても、何も言われへん。

真っ暗な世界にぼんやりとした灯りが点々と輝いていた。


なんやろ、どこかもわからへん。


声と灯りだけで、なんだか昔の世界みたいやった。震える声は機械音みたいに高くなっていく。耳鳴りは俺の頭の中か、それとも世界か。



朝、目覚めると、八月九日だった。