決戦の日のために

+目が覚めたら独歩視点

手のかかるやつほど可愛いって言うよな。

だから俺は、俺の手で、あいつを幸せにしてやりたかったんだ。


ー…

俺には手のかかる後輩がいた

入ってきたのは去年の春。

色んな人に腫れ物扱いされる俺だけど、彼女だけは、

『“先輩っ!”』

って、花が咲くような笑顔で俺にかけよってくるんだ。

なのに、回りのやつらはあいつを腫れ物扱い。

意味がわからん…確かに俺もあいつも仕事が早い方ではないが、決してできないわけではないし、なんだ、雰囲気であいつが良いやつじゃないって決めつけるって…

確かにあいつは思ったことがすぐ顔に出るから営業向きではないかも知れないけど、それでもあいつなりにがんばってるだろ!
そこを認めろよ!と、何度言いたくなったことか。

でも、あいつが他の男に言い寄られないで、俺のそばにいてくれる点では、今の関係でいいのかな、とは思ったりもしてるんだが…

あいつは、俺がハゲ課長にネチネチ嫌みを言われたり、他の同僚から嫌みを言われたりしていると、決まって泣きそうな顔をしてこっちを見るんだ。

お陰で何度ハゲ課長や同僚に違う意味でヒプノシスマイクを使おうと思ったことか…

きっと、あいつはそれを知らない。

俺は、ずっとそれを隠して来たから。

俺なんかが好意を抱いたら、あいつは迷惑する、いや、絶対嫌われると思ったから。

でも、どうやら俺が寝言で江藤の名前を言っていたらしく、一二三に尋問され、結局俺は自分の気持ちを自覚した。

…時間は、かかったけど…

それで、一二三に教えてもらったいいところのアクセサリーを書い、俺は江藤に告白する、つもりだった。

…つもり、だったんだ。

まさか、ハゲ課長に何度残業を言い渡されても、今日のために頑張ったことが、こんな裏目に出るなんて、思ってなかったんだ。





ー…

勝負当日、俺は、いつもより身だしなみに気を付けて家を出たつもりだった。

会社に来て、江藤に会って、話そうとして…

そこで、俺の意識はブラックアウトした







決戦の日のために

(頑張ったのになんでだよ…かっこつかないじゃないか…!)