バイト、決まりました

『…ぐす。ありがとうございました』


「おや、もういいのかい?」


『はい、大丈夫です』


しばらくして、私は寂雷先生の肩から顔を上げた。


寂雷先生は優しく笑って私の目の涙を指で拭ってくれた。


「…少しはスッキリしたかな?」


『はい、とても。ありがとうございました』


実を言えば、ここにくるまえから色々とストレスが溜まっていたのだ。


それがここに来て、寂雷先生にばれて…


それは幸せなことだったのだろう。


「いいかい、これからまた我慢を続けて泣きたくなったら私を呼ぶんだよ。約束できるかい?」


幼いこと約束するように、寂雷先生は私と目を合わせ、言い聞かせる。


『は、はい…わかりました…』


恥ずかしくなってうなずく 


「ふふ、約束だよ」


寂雷先生は満足げに微笑む。


「…さて、長居してしまったね。そろそろいこうか」


寂雷先生が私を離し、席を立つ。


「長居してすみませんでした」


「いえ、ありがとうございました」


先生が軽くウェイターの方に頭をさげると、ウェイターの方も軽く頭を下げる。


こんな風に、普通に人と馴染めてしまう先生が凄いと思った。


「はぐれてしまうと不味いから、手を繋ごうか」


『は、はい…』


先生ほど身長が高ければ見失わないんじゃ…?とは思ったものの、口には出さず先生の手をとった。


先生の手は大きくて、暖かかった。


『これからどこに行くんですか?』


「君はどんな仕事をしたいと思うかい?」


『私ですか?私は、元々看護師とかカウンセラーに憧れてたので、その関連のお仕事ですかね…』


「なるほど。それは丁度良かったな」


『先生…?』


先生は上機嫌だ。


先生に手を引かれて向かったのは、イケブクロ・ディビジョンの中部にある、先生の知り合いがやってるクリニックだった。


「やぁ、こんにちは」


「おや、寂雷先生じゃないですか!」


中から出てきたのは、若い男性。


「彼は元々私の病院で医師をしていたんだよ」


と教えてくれた。


どうやら、自分の実力を試したくて、先生の庇護下のクリニックと言うことで、やっているらしい。


「なるほど…」


「確か、君のクリニック、アルバイト探してたよね?」


「えぇ、はい」


「彼女、私の知り合いでね、仕事を探しているらしくて、よかったらと思って」


「なるほど!」


『…』


なんだかトントン拍子でことが、運んでいくことに、若干恐怖を覚えていた。



結果、私は翌日からそのクリニックのアルバイトとして働くことになった。







バイト、決まりました

(じゃ、寂雷先生、ありがたいですけど…!)






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実際の看護助手のお仕事や、アルバイトとは異なる場合があります。
全て管理人の妄想です。
責任は取れません。
ご了承ください。