私の心を見透かす

コト…


「…さて、そろそろ行きましょうか」


『あ、はい。わかりました!』


私は席をたった。


「ウェイター、お会計を」


「かしこまりました」


『先生、レシートを…』


「ふふ、今回は私の奢りだよ」


『え!?ぜ、前回も奢ってもらったのに…!』


「私がしたくてしているだけだ。気にしなくていい」


『で、でも…』


「…ふむ」


しばらく考え込む寂雷先生


「なら、こちらに来てくれるかい」


『え?は、はい…』


私は立ち上がり、寂雷先生の席へと歩いていった。


「ふふ、いい子だね」


今は寂雷先生が座っているから、若干私が寂雷先生を見下ろすかたちになる。


凄く珍しいことなんだと言うことは、この世界にきてまもない私でもわかる。

…だって寂雷先生大きいもん…


「さ、おいで、みのりくん」


『え…?』


脚を組んだ寂雷先生が腕を広げて私を呼んでいる…?


『…え、えっと?』


私が理解できないでいると、寂雷先生がそっと私を引き寄せ、抱きしめた


『…っ!』


とたんに真っ赤になるであろう私の顔。


「…おや、顔が真っ白になったね。君の場合は緊張で顔が真っ白になるタイプなのかな?」


寂雷先生が体を少し離し、至近距離で、寂雷先生と目が合う。


私の頬を寂雷先生の手が撫で、私は息を飲んだ。


「…ふふ、大丈夫。いきなり食べたりはしないから、安心してくれていい」


そういうと、寂雷先生はまたぎゅう、と抱き締めてきた


鼻孔を擽る石鹸の香り。


…ああ、これが寂雷先生の匂いか、と理解するのにだいぶ時間がかかった。


「…この世界にいきなりきて、大変だっただろう」


『…!』


核心を、突かれた気がした


寂雷先生が言いたかったことはこれかと。


「まだそんなにたってはいないが…一人で、よく頑張ったね」


よしよしと頭を撫でられて…目頭が熱くなった。


『う…』


「うん、我慢しなくていいよ。私がついている。しばらく、泣くといい」


その言葉を境に、私は泣き出してしまった。


 








ー…


「…よしよし。落ち着いたかい?」


しばらくして、寂雷先生が声をかけてくれる。


『う…はい、大丈夫です』


「そうか。…少しはスッキリしたかい?」


『はい。…ありがとうございます』


「ふふ、いいんだよ。こういうのが、私の仕事だからね」


『…!』


ちくんと、胸がいたんだ。


『…流石、ですね』


と笑うことしかできなかった。


『…寂雷先生』


「ん?なんだい?」


『…もうすこし』


「うん」


『もう少しだけ…このままでいてもいいですか?』


もう少しだけ、このままで。


もうすこししたら、また笑うから。


だから…


「…あぁ。構わないよ」


『ありがとうございます』


寂雷先生は、よしよしと、背中を撫でてくれた






私の心を見透かす

(流石寂雷先生)