「なぁ、今日の入試エンデヴァーの息子来てるらしいよ。」
「え!?マジかよ。……ってことはやっぱ炎の個性なのかな?」
「じゃない?エンデヴァーだもん。」
「絶対強いよなぁ、入試なんて余裕だろ。」
「だろうね、私らなんかとは違うだろうなぁ。」
聞く気も無いけれど、耳を掠めた会話がどうにも頭にこびり付いた。
ドキドキ。とはち切れんばかりに鼓動を打つ心臓を落ち着けようと深く深く呼吸をしながら、エンデヴァーの息子。と言う肩書きを持つ人物の事が気になる。
きっと、並々ならぬ技術やパワーを持っていることだろう。それこそ中学校で他の子より多少成績が良かった。なんて子達とは遥かにレベルが違うと思われる。
…………でも、それだけ父親の期待を背負って生きてきた。そう言う事だろうな。
テレビで何度も見たことがある、気難しそうな人柄。皆の憧れオールマイトとは似ても似つかぬ威圧感。
それが、こうして雄英の推薦入試へやって来れる程に鍛えた息子さんにだけ、その態度が変わるとは到底思えない。
そうなると見えてくる、自分と似た境遇。
仲良くなれないかなぁ。彼がもし自分と同じように期待などを重荷に感じているのなら、その気持ちを理解出来るし逆も然り。
きっと良い友達になれる、うん。よし。高校生1人目の友達を今日作ろう!!
とはいえ試験に落ちてしまっては元も子もないのだが。という事に気づいてしまい、心臓は今も尚忙しそうに鼓動を打っている。
◇
「ゴール地点まで如何に速く来れるか競ってもらう。では始めるぞ。」
先生らしき人の言葉に、準備をする。
個性を体に発現し、力が漲るのを感じる。
見た目は正直人目を引くのでこんな姿になりたくなんて無いが、自分の個性はこれなのであーだこーだ言ってられない。
「位置について、」
尻尾を地面に。
「よーい、」
背中の黒翼を羽ばたかせ、
「スタート。」
尻尾で地面を勢いよく打ち付け、空へ飛び上がり、そのまま風と羽によって勢いをつけて前進する。
よし、中々良いスタート切れた!!…………って、え!?
前方を見ると、地面を凍らせながら物凄いスピードで駆けていく人と、竜巻のようなものに乗って移動している人。2名が私の遥か前方を駆けていた。
スピードには割と自信あったのに……!!悔しくて力強く羽ばたくが、距離は縮まらない。
そして順位はそのまま変わらず、私は3位でゴールした。
「っはぁ…………はぁ…………。」
全力で翼を動かしたので、疲労感がとんでもない。息切れは中々収まらないし……と負かされた彼らを見ると息1つ切れていなくて、あんぐり。と口を開いて固まってしまう。
………………ばあちゃん、ばあちゃんの言いたいことがやっとわかったよ。
世界は広い、お前より強いやつなんか星の数ほどおるわ!!
日頃から言い続けられた言葉。とは言え、自分のように鍛錬している人はどれほどいるのか?これほど厳しく個性を磨いてきた人はどれほどいるのか?
きっと、心のどこかで思ってた。私は他の人よりずっとずっと頑張っている、努力している。
私以上の人なんて、そうそういない。どこかで思ってたんだ。
けれど、今目の前にいるのはどう考えても私より個性が使いこなせている人達で。
…………そんな人たちと一緒に勉強出来る、雄英高校。
ちょっとの不安と、沢山のわくわくが胸をいっぱいにする。
はやく、早く通いたい。どんな人達がいるのか会ってみたい。
帰り道、私の足取りは軽かった。
「………………あれ?」
結局エンデヴァーの息子さんの正体に気づけないまま。