保須市にて

「よ……よろしくお願いします!!」


「…………。」


「よく来たな、2人とも。……夜魔、君の活躍は見させてもらった。非常に良い動き、戦闘意欲を感じたよ。」


「あ、ありがとうございます!!」


「では、出かけるぞ。」


「……え?」


「どこへ?」


「保須市へだ。」


保須市。それは、ニュースで見た内容の……。


「ヒーロー殺し……?」


「そうだ、今まで通りの動きをするならば奴はまだ保須市にいる筈だ。」


ヒーロー殺し、ステイン。数多くのヒーローへ危害を加え続けているヴィラン。


犠牲者の1人には、飯田くんのお兄さん。インゲニウムも含まれており、彼は何事も無かったかのような振る舞いを見せていたが、正直心配ではあった。


そして心配の最中お茶子ちゃんから聞いてしまった、飯田くんの職場体験先は保須市だと。


…………嫌な予感がする。


私はエンデヴァーに続く轟くんの後を追って、事務所を出た。





保須市へ降り立つと、既にそこは地獄絵図へと化していた。


逃げ惑う民間人、燃え盛る炎。


「既に事件が起こっている、急ぐぞ!!」


エンデヴァーに頷き走り出すと、震えたスマホ。


見ると、緑谷くんから。


送られてきたのは私だけではなくて、クラス全員。…………これって、SOS?


「と、轟くん……これって……。」


「……考え無しにこういうことをする奴じゃない。」


「おい!何をしている!!」


「このアドレスに向かう。手の空いたヒーローがいたらここへ誘導してくれ。……あっちの騒ぎはエンデヴァーがいれば充分だろ。」


……良かった、轟くんも私と同じ考えだ。


個性を発現させ、翼を広げる。


「ごめんなさい、エンデヴァー。」


「……友達が、危ないかもしれねぇんだ。」


そう言い残してエンデヴァーに背を向けた轟くん、私は彼を片腕に乗せるようにして抱き上げた。


「っおい!?」


「この方が速いでしょ!!轟くんは案内して!!」


「……そこを右だ!!…………ってお前、コスチューム……!」


轟くんの指示通りに路地を進みながら、彼の驚いた声に笑う。


「コスチューム新調したの!もう悪魔になる事を隠さないから。」


以前とは違い、かなり考えに考えたコスチューム。母さんやばあちゃんの知恵も借りながら生まれたこのコスチュームは、私の個性に合わせたものとなっていて、


「新調……って言うかさっきと全然見た目変わって、」


「このコスチュームは、私の体内にある悪魔因子に反応するように出来てるの!個性を発現時や種類によって見た目が変わる仕組み!」


「……にしたってお前、これは、」


「………………露出がちょっと多めなのは私の趣味じゃないからね!?ち、違うからね!?これが動きやすいって判断されただけだから!!」


「わ、わかったから落ち着け!!落とすなよ!?」


「ご、ごめん……!!」


以前のコスチュームに比べたら遥かに布面積が少ない。でも本当に、私の意思でどうにかなるものじゃないし、動きやすいのも事実。翼や尻尾なども動かしやすくて機動力は確実に上がっている。


「もうすぐ着くぞ……!」


風を割いて目的地へ急ぐ。すると、


飯田くん、緑谷くん……!?


「轟く、」


「っ少し熱いが我慢しろ!!」


何をするのか瞬時にわかってしまい、慌てて彼の左側に添えてた腕を取っ払う。


ボウッ!!と彼の半身から吹き出した炎が飯田くんと、恐らくヒーロー殺しと思われるヴィランの間を割いた。


「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ。」


「…………遅くなっちまっただろ。」


「轟くんまで!!」


「轟くん!?どうして君が、」


「どうしてって、お前が位置情報を送ってきたんだろ。」


翼を羽ばたかせ、奥に座り込んだ緑谷くんと、倒れていた飯田くんを抱えて轟くんの後方へと運ぶ。


「一瞬考えたよ、緑谷くんからの位置情報の意味を。……大丈夫、轟くんがエンデヴァーに頼んであるから数分もすればプロが来るよ!!」


運び切り、轟くんが氷結の壁を作る。


「轟くん、夜魔さんあいつに血を見せたら駄目だ!恐らく血の経口摂取で体の自由を奪う……皆やられた!!」


「……ニュースで見た通りだな。」


「轟くんなら距離保ったまま戦え、」


「っ夜魔!!」


え、と思っていると肩を横切ったナイフ。


「っ!!」


裂けた皮膚から血が吹き出す。あ、血、


なんて呆然と思っていると、轟くんが腕を引き、片腕で抱き締めるようにし、相手に向かって炎を放った。


「ご、ごめん!!」


「ぼーっとしてんな!危なかったぞ!!」


本当だ、危ないところだった。言われた傍から何してんだ私は。


距離をとったステインに対して轟くんが氷結を使う。


……攻めていかないと。どうやら相手は飯田くんとあのプロヒーローを狙っているようだ。


守るために、攻めよう。相手は殺人犯。……怖い、けど。震えるな足!!


駆けるように羽ばたき、背後を取る。そのままパワー全振りで振りかぶり奴の身体を殴りつけた。


「パワーは良い……が、」


にやりと笑ったステイン、何故、


「ぐっ!!?」


いつの間にか上空にナイフが投げられていたようで、腕に刺さった。


「スピードが足りない、予測が出来てない。……だが、お前らも良い目をしている。生かす価値がある。」


そう笑ったステインは腕をやられて怯んでいる私へと駆けてきて、肩から流れた血を舐めとった。


「っ!!」


「夜魔さん!!」


そのまま端へと投げ捨てられて、身が動かなくなる。


やばい。飯田くん達が狙われる……!!


氷結の壁をすり抜けて現れたステインは、轟くんの猛攻を尚も避け、飯田くんの元へ。


「飯田くん!!!」


しかしそこにすぐ緑谷くんが駆けつけて、殴り飛ばした。


「緑谷くん……体が動いて……?」


「よくわからないけれど動いた!!僕が1番最後にやられたのに…………だとすれば考えられるパターンは3つ。」


「1つは人数を重ねる毎に効果が薄まる。1つは拘束時間が減っていく。そして、1つは血液型によって効果が変わる。」


「緑谷くん……何型……?」


「僕はO型!」


O型の緑谷くんが早く解けたなら私も……!!


「……僕と夜魔さんが接近戦、轟くんが遠距離からの攻撃。それでプロヒーロー達が来るまでの時間凌ぐのがベストだと思う。」


「…………危ねぇ橋だが、仕方ねぇ。」


「それしか…………無いもんね。」


「…………3人で守るぞ。」


接近を緑谷くん、遠距離から轟くんが猛攻する。しかしどの攻撃もステインには躱されてしまい中々一撃加えられない。


「もう……やめてくれ…………。」


聞こえたか細い声。そちらを見ると、飯田くんが弱々しく声を発していた。


飯田くん……。


「っやめて欲しけりゃ立て!!」


それに対して轟くんは強く言葉を贈る。


「なりてぇもん、ちゃんと見ろ!!」


……!動ける!!


立ち上がろうとするが、それより先にステインは刃物を持って轟くんの懐へ。


「轟くん!!!」


間に合わない、なんで、どうして、そうもがいた時、


キュイイイインと言う音と共にステインを蹴り飛ばした飯田くん。


「……3人とも、関係ないのにすまなかった。」


「もう、皆には血を流させない。」


顔を上げた飯田くん、凛々しく意志を強く持った瞳をしていた。

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