「感化され取り繕っても無駄だ……お前は偽物だ!!」
完全に狙われている飯田くん、彼の元へ向けられた刃物を蹴り飛ばし、そのままの勢いで鉤爪で切りつける。
「夜魔くん……!」
「狙われてる、気をつけて!」
すると瞬時に立ち上がったステイン。……こいつさっきよりも動きが……!!
「っ、飯田達を殺そうと躍起になってる!!気をつけろ!!」
言葉通り、動きが、目で追えない。いつどこから刃物が飛んでくるか。攻撃すら当てられない。
……プロヒーローはまだ来る気配が無い。ならば持久戦にもつれ込んでまずいのは圧倒的にこちらだ。
………………それならリスクを犯してでも、1発重いの決めた方が勝機がある!
翼を広げて立ち向かい、攻撃を避けられるがそれを想定して空中で一回転してそのままかかと落としを決める。
しかし速度を優先したので、パワーが落ちて大した一撃とはならない。
そして私が着地する時、ステインの目の前に降り立つ。
その瞬間、絶対こいつは私に攻撃を……
「っつ!!!」
来た!!!
腕を切りつけてきた奴の腕を両手で掴み、動きを止める。
しかしながら私の皮膚に刺さった刃からどくどくと血が流れる。
いってぇ…………けど、
「今の……うちに!!」
彼らに声をかけると駆けてきた飯田くんと緑谷くん。
動こうともがくステイン。絶対に離さない。絶対に、絶対に……!!
奴は刀から手を離し、私から腕を引き抜くことに専念する。刃の離れた腕からはぼたぼた、と血が大量に流れた。
痛い、痛い…………でも今離す訳にはいかない!!
力を、もっと力を。こちらが弱っていても大の大人に、男の人に負けない力を!!
お願い、一瞬で良い。一瞬持ってくれれば良いから…………。
何度も何度も鍛錬した感覚。ばあちゃんに怒られながら何度も挑戦したあの感覚を今!!
握った手に更に力を加える。その、瞬間。
溢れるパワー、重たくなった体。月夜越しの影から自分に大きな角が生えたのだと確認出来る。
………………シュトリ……!!!
「こいつ、力が……。」
「お願い!!」
骨を砕かんばかりに握った腕。奴を拘束した状態で叫べば彼らはもう、すぐそこに。
そして、飯田くんの足と緑谷くんの拳がステインに直撃した。
◇
緑谷達が攻撃を決め、瞬時に氷結で拘束する。
まだこいつはやられてなんか…………。
「……あれ?」
高く押し上げた氷の上で、ステインは動かなくなっていた。……気絶してる。
「……良かった。」
「とりあえず拘束しよう、何かロープとかあるかな?」
緑谷の言葉に頷き、ゴミ箱等から探してみるか。と思った瞬間
バタッ。なんて音と共に夜魔が。
「……っ夜魔!?」
「夜魔さん!?」
よく見ると、今までの容貌とは違う姿をしていて驚く。これは……。
なんて思っているとみるみるうちに姿が変わり、個性を使っていない普段の夜魔へと戻った。
しかしながら、白く細い腕からはとてつもない量の血が。
それに肩からも血が流れ、明らかに血を流しすぎている。
「その子まずいよ、血を流し過ぎだ。早く病院へ!!」
「……はい。」
プロヒーローの言葉に頷き、ステインを急いで見つけたロープで縛り上げ、連れていく。
「夜魔くんは僕が……。」
「いや、お前腕ぐちゃぐちゃだろ。俺が運ぶ。」
「無茶だろう!?君だって血を多く流しているのに、奴も引きずって夜魔くんもだなんて、」
「これぐらい、鍛えてる。任せてくれ。」
片腕に夜魔を乗せるようにして抱えあげ、歩き出す。緑谷は足を負傷したのでプロヒーローに背負われ、俺たちは路地裏から脱出した。
そこから起こった事は、ヒーロー殺しステインの叫びは、眠る夜魔には届かず後から話すこととなる。