※深まる親睦 の続きです
「…………だ、大丈夫?ヒーロー名さん。」
「姉ちゃん、これのどこが大丈夫に見えるんだ?」
「だよね……。」
「もう、本当に小心者ねぇ。」
もう!と肩を冷さんに肩パンされる。い、痛いです……。
逆に皆どうしてそんな堂々としてられるんだろう?なんで私だけこんなガタブル?
とても不思議に思いながら、めかしこんだ轟家の皆を眺める。
今回のパーティーは、家族を呼ぶのもありだそうで、なんなら紹介する場でもあるので、こう言った場では割と家族連れが多いらしい。
……エンデヴァーも、この光景を皆さんに見てもらえばもう家族の事が負の面とは捉えられないだろうな。
家族を微笑ましく眺めているボスを見て、私も心が幾分か和らぐ。
「……そろそろ中へ入るぞ。」
「ヴェッ!?」
「ヒーロー名。いいか、よく聞け。」
「は、はい。」
エンデヴァーが何かを教えてくれる時の瞳だ。意を決して返事をする。
「………………こういうのは、」
「え?」
焦凍くんが素早く私の腕を引き寄せ、組まされる。
「慣れるしかない!!」
どん、と背中を押されて会場へ押し込まれる。
「ちょ!!…………エンデヴァー!!?」
◇
「……あ!轟くん!!」
「お、緑谷、爆豪も。」
「……やっぱおめぇも来てんのかよ。」
「あぁ。」
「おーい!!お前らー!!」
「切島くん!!それに常闇くんも!」
「元気そうだな。」
「あぁ、お前も。」
懐かしい面々に心が踊る。本当に久しぶりだなぁ!皆元気そうで良かった。
「そういや皆、所長たちは?」
「センチピーダーは、バブルガールや通形先輩と一緒に。」
「……ジーパンは色んなやつと話してる。」
「ファットもそうだなー…………やっぱプロヒーロー同士顔見知りも多いんだなぁ。俺たちはまだまだ知らない人ばっかりだしよ!」
「ホークスもそうだな、……手始めにヒーロー名と話に行くって言ってたが……?」
「……………………ヒーロー名なら、あそこに。」
轟くんの指した方角を皆で見ると、会場の隅で縮こまっているヒーロー名。
「な、なんであんな隅に……!?」
「……親父と俺で強引に会場へ引き入れたんだが、それが中々…………いや、かなり嫌だったみてぇで……。」
心做しか轟くんも落ち込んでる。それもそうか、この2人は交際中。彼女に拒否されてこれだけ距離取られたらショックだよなぁ……。
「あ、天喰先輩。」
するとヒーロー名の元へ来たのは天喰先輩。
2人は何言か言葉を交わして、共に壁の染みとなった。
「いやなんでだよ先輩!!話してこっちに連れてくるとこじゃねぇのか!?」
「い、いや待ってよ切島くん…………天喰先輩も似たような感じだろ……?」
人や視線が苦手で、引っ込み思案。そんな印象だ。
それならあの二人の相性は良いのかもしれない。隣にいても落ち着くのかも…………って
「轟くん……?」
「どうした。」
「どうしたって…………君がどうしたって感じだけど。」
「?」
首傾げてるけど、気づいてないのかな。眉間に深いシワが寄ってるの。
「……今度はホークスが行ったぞ。」
常闇くんの言葉に再び視線を戻すと、現れたホークスから逃げ出すヒーロー名。
「……………………なんで逃げてんだあいつ。」
「……たぶん、僕たちが高校生だった頃にチームアップで色々…………インタビュー答えさせられたりしてたからかな…………。」
「…………あ、こっち来るな。」
カツカツ!ヒールを響かせながらこっちへ逃げてくるヒーロー名。
「しょ、ショート!!助けて!!鳥が!!」
「やだなぁもう、鳥だなんて酷いじゃないですかー!」
なんという笑顔。なんで笑ってるんだホークス。
轟くんに泣きつくようにして抱きついたヒーロー名。ホークスは楽しそうにケタケタ笑い、轟くんは嬉しそうにほんわかしていた。
「ホークス、何虐めてるんだ。」
「虐めてなんかないよ、ツクヨミくん。丁寧にご挨拶へ伺っただけなんだけどな。」
「あ、……あなたとMtレディにされたことは…………忘れないからな…………!!!」
そう恨めしそうにホークスを睨みつけているヒーロー名。
…………って言うか……。
白地に赤の刺繍が施されたドレスを着ているヒーロー名。色合いが、とても……。
僕がドレスを見ていることに気づいたのか、目が合った轟くんはなんとも誇らしそうに笑った。
な、なるほど……俺のだぞ、と…………。
案外嫉妬とかそういった事に無縁そうな顔していて、ちゃんとするんだな。と意外に思いつつ、しっかりとそのドレスを着こなして、会場の視線を集めているヒーロー名もまた、彼と同じく綺麗な顔をしているからだろう。
「わ、私は……隅で時間潰してるから、」
「駄目だ、隣にいろって言っただろ。」
「焦凍くんがやったことも忘れないからね。」
「うっ……。」
じと。ホークス同様恨めしそうに轟くんを睨んだヒーロー名は、あっさりと轟くんから離れて行こうとすると
「……こんばんは、お嬢さん。」
「ぅ、え?」
ヒーロー名の腕を掴んだ見知らぬ男性。……どこのヒーローだ?
すると驚いているヒーロー名の体を引き寄せ、反転させると首元にナイフをあてがった。
………………ナイフ!?
ざわ、一気に会場に緊張感が走る。
「動くな。動けばこの女を殺すぞ。」
そう言ったヴィランは、会場内に何人も潜伏していたらしく、ぞろぞろと複数名出てきてヒーローたちを脅す。
それは勿論僕達もそうで、身動きが取れない。
なんで潜入出来てるんだ……セキュリティは万全のはずじゃ……。
「そうだ、大人しくしろ。…………ふん、家族やパートナー同伴なんてするからこうして足元を掬われるんだ。」
…………それにしても、あのヴィランは自分が捉えた人物が誰なのかわかっているのだろうか。
「お前は、見たところショートのパートナーか何かだろう。浅はかだな、こんな見るからにショートのパートナーだと言っているようなものを着せて。」
そう言って轟くんを嘲笑しているヴィラン。いや、あの、パートナーと言うのは正解だけど、そこじゃなくて。
いやもうホークス笑いかけてる、ちょっと、流石に駄目ですよ!!
あ、ベストジーニストも肩震えてる!!ミルコも!!
てかかっちゃん!!かっちゃん抑えられてない!!
「怖いよなぁ?ヒーローと関わったりなんかするからこんな事になるんだぞお嬢さん。……こんな可愛い顔に傷でも入ったら可哀想だなぁ、酷いよなぁ傷つけられようとしてるのに誰も助けてくれないんだもんなぁ。」
可愛い。………………あっ。
「(これは…………。)」
「(終わったな、あいつ。)」
轟くんとかっちゃんも恐らく同じ事を考えてるだろう、もはやヴィランを憐れむような視線を送っている。
せめて意識のある状態で病院行けたら良いね……と思っているとやはり。
ナイフを持ったヴィランの腕を勢いよく掴んだヒーロー名。
「な、なんだお前、」
「………………遺言は…………それだけか……?」
「え。」
腕を掴んだまま抜け出し、片足を後ろへ引いたヒーロー名は圧力を溜めて、
相手の鳩尾狙ってその拳を叩きつけた。
相手は頭や骨も何本か負傷し、意識不明の重体となった。
ヒーロー名はその場で色んなヒーローに怒られていた。