姉ちゃんもどきと及川さん

「え?今度は青葉城西と練習試合?」


「おう」


「北一の人が多く行くとこだよね?……大丈夫?」


「別に、敵同士なら全力でやるだけだ」


「……かぁっこよくなっちゃってぇ」


「はぁ?」


「飛雄はさ、顔はかっこいいからちょーっとまともな事言うとかっこよく見えちゃうんだよねぇ、あんなに泣きべそかいてたのに……」


「いつまでもガキの頃の話持ち出してくるんじゃねぇよ!」


「だって今でもガキだもーん」


「うっせぇっつってんだろ!?」


名前の頭をぐわっと掴む


「ぎゃああ!?暴力反対いいい!!!」


「じゃああんまり人の事馬鹿にしてんじゃねぇぞ、俺はもうガキじゃねぇ。名前より力だって強ぇんだぞ」


「大丈夫大丈夫、飛雄はご飯食べれなくなったら困るからそんな事しないよ」


ケタケタ笑う名前


飯の事だけかよ、俺から見える名前の存在はそれだけな訳ねぇのに。


「入学してから波乱万丈だねぇ、青葉城西って確か強いんだっけ?」


「県内4強に入る。………及川さんもいるし」


「え!そっか!及川くんいるのか!!ひゃーまたイケメンぶりに磨きかかってるのかなぁ?」


「……………。」


「やだもう、そんなジト目で見ないでよ」


名前は中学の時から及川さんがお気に入りだ。何故なら顔がかっこいいから、らしい。


及川さん本人も俺をからかう目的で名前と絡んでいたが、単純にあの二人は思考回路が似ており意気投合した。その結果2人は仲良くなったのだ。


「ね、いつやるの??どこでやるの?烏野?青城?」


「…なんで」


「見に行こっかなって!飛雄の高校初練習試合も見たいし、及川くんとも久しぶりに会いたいし!」


「……。」


ウキウキと効果音でもつきそうなぐらい浮ついてる姉もどき。ムカつく。


「ね、どこでや」


「言わねぇし、来んな!!」


「うわ!!なんだその態度!!」


「うっせぇよ!!もう寝る!!」


「なんだとお!?おやすみ!!」


「おやすみ!!」





「たぶん向こうは正セッターじゃ……」


3セット目が始まろうとした時、黄色い歓声が聞こえる。


中学の時もよく聞いた歓声に嫌な緊張感が走った。


「やっほー飛雄ちゃん」


「及川さん……」


「影山くん、だあれ?あの優男僕とても不快です」


「向こうのキャプテンだな」


澤村さんに頷く。及川さん、高校でも頭1つ抜けてると聞いた。……でも負けねぇ。


「飛雄ちゃん、元気?……あれ名前さん来てないんだ、俺がいるって言ったら来るかなぁなんて思ったんだけど」


「………来てないっすよ」


「うん、みたいだね。名前さん元気?相変わらず綺麗?」


「………別に、変わんねぇっす」


「……え、名前さんって誰ですか、田中さん」


「知らねぇよ!言い方的に女性っぽくねぇか…!?」


「ま、まさか、影山に彼女……!?」


「んなっ……!?」


「そこのちびちゃんと坊主くん、心配しなくても名前さんは飛雄の彼女じゃないよ」


「「ぅえっ!?」」


「ね?まさか彼女にした?そんなわけないか、飛雄にそんな度胸ないよねぇ」


「……別にあいつはそんなんじゃないっす」


「そう?そんな事言ってたら及川さん貰っちゃうよ?名前さん綺麗だし面白いからなぁ」


「いい加減アップとってこい!クソ及川!!」


「いったぁ!?岩ちゃん酷いよ……優しく言ってくれればいいのに…」


「お前に与える優しさなんてこれが精一杯だ」


「嘘でしょ!?」


「ちょ、影山。名前さんって誰だよ」


「3セット目始まるぞ」


「ちょ!?」


「影山くん?後で先輩には教えてくださる?」


「………うす」





「おっ!おかえり!!勝ったんだって?やったじゃーん!」


「……なんで知ってんだ」


「及川くんから速報来たよ」


「連絡先交換してんのか!?」


「してるよ?飛雄が中一の時に」


「…………。」


「え!?なんで怒るのよ!?ほらぁ今日はカレーにしてあげたから!機嫌直して?」


「………及川さんの事好きなのか」


「えぇ?うーん……好きだけど、付き合いたい!とかそういうのじゃないかなぁ」


「イケメンだって言ってただろ」


「イケメンだけどぉ……なんか中身が面白過ぎちゃってときめかないかなぁ、結局ね中身なのよ。飛雄も彼女作る時は顔じゃなくて中身を見なさいね」


「偉そうに言ってるけど、この前まで付き合ってた彼氏短かったな」


「うぅっ!!………ちょっとね、色々ね、あったのよ」


「結局中身見れてねぇんじゃねぇか」


「……正論パンチ、染みます」


名前はモテる。顔もいいしスタイルもいいんだと思う。料理は美味いし頭も良い。ここらで有名な大企業で働いていてシューニュー?も安定してるのが私の良いところだ!!って自分で言ってた。


その為今まで何度も名前の彼氏を見てきたし、話を聞いてきた。そしてその人数の数だけ別れた時の涙も見てきた。


そしてその度俺だったら名前の事大事に出来るのに。と心の中で呟いてきた。


しかし名前は俺の事子供扱いばかりする。実際赤ん坊の時から見られてるから仕方ないのかもしれないが……。


「………及川さんだけは辞めとけよ」


「大丈夫大丈夫、流石に飛雄の先輩とらないよ」


「そっちじゃねぇよ!」


「あれ、違った?だって飛雄及川さんの事大好きだったじゃん、サーブ教えて下さいって毎日言ってたらしいじゃん?」


「好きとかじゃなくて、技術がすげぇから教わりたかっただけだ。勘違いすんなよ!」


「そっかそっかぁ、まぁ飛雄が嫌がるなら及川くんとはそういう関係にはならないよ!」


どうだか。この姉もどきはイケメンに弱い、及川さんに迫られたら首を縦に降るかもしれない。


「何よ、その目は」


「別に」


「んもおお今日も態度悪いなぁ!?そんな風に育てた記憶は無いんだがぁ!?」


「名前だって口悪ぃだろ、その所為じゃねぇの」


「むがづくううううう!!!」