「え?今度は青葉城西と練習試合?」
「おう」
「北一の人が多く行くとこだよね?……大丈夫?」
「別に、敵同士なら全力でやるだけだ」
「……かぁっこよくなっちゃってぇ」
「はぁ?」
「飛雄はさ、顔はかっこいいからちょーっとまともな事言うとかっこよく見えちゃうんだよねぇ、あんなに泣きべそかいてたのに……」
「いつまでもガキの頃の話持ち出してくるんじゃねぇよ!」
「だって今でもガキだもーん」
「うっせぇっつってんだろ!?」
名前の頭をぐわっと掴む
「ぎゃああ!?暴力反対いいい!!!」
「じゃああんまり人の事馬鹿にしてんじゃねぇぞ、俺はもうガキじゃねぇ。名前より力だって強ぇんだぞ」
「大丈夫大丈夫、飛雄はご飯食べれなくなったら困るからそんな事しないよ」
ケタケタ笑う名前
飯の事だけかよ、俺から見える名前の存在はそれだけな訳ねぇのに。
「入学してから波乱万丈だねぇ、青葉城西って確か強いんだっけ?」
「県内4強に入る。………及川さんもいるし」
「え!そっか!及川くんいるのか!!ひゃーまたイケメンぶりに磨きかかってるのかなぁ?」
「……………。」
「やだもう、そんなジト目で見ないでよ」
名前は中学の時から及川さんがお気に入りだ。何故なら顔がかっこいいから、らしい。
及川さん本人も俺をからかう目的で名前と絡んでいたが、単純にあの二人は思考回路が似ており意気投合した。その結果2人は仲良くなったのだ。
「ね、いつやるの??どこでやるの?烏野?青城?」
「…なんで」
「見に行こっかなって!飛雄の高校初練習試合も見たいし、及川くんとも久しぶりに会いたいし!」
「……。」
ウキウキと効果音でもつきそうなぐらい浮ついてる姉もどき。ムカつく。
「ね、どこでや」
「言わねぇし、来んな!!」
「うわ!!なんだその態度!!」
「うっせぇよ!!もう寝る!!」
「なんだとお!?おやすみ!!」
「おやすみ!!」
◇
「たぶん向こうは正セッターじゃ……」
3セット目が始まろうとした時、黄色い歓声が聞こえる。
中学の時もよく聞いた歓声に嫌な緊張感が走った。
「やっほー飛雄ちゃん」
「及川さん……」
「影山くん、だあれ?あの優男僕とても不快です」
「向こうのキャプテンだな」
澤村さんに頷く。及川さん、高校でも頭1つ抜けてると聞いた。……でも負けねぇ。
「飛雄ちゃん、元気?……あれ名前さん来てないんだ、俺がいるって言ったら来るかなぁなんて思ったんだけど」
「………来てないっすよ」
「うん、みたいだね。名前さん元気?相変わらず綺麗?」
「………別に、変わんねぇっす」
「……え、名前さんって誰ですか、田中さん」
「知らねぇよ!言い方的に女性っぽくねぇか…!?」
「ま、まさか、影山に彼女……!?」
「んなっ……!?」
「そこのちびちゃんと坊主くん、心配しなくても名前さんは飛雄の彼女じゃないよ」
「「ぅえっ!?」」
「ね?まさか彼女にした?そんなわけないか、飛雄にそんな度胸ないよねぇ」
「……別にあいつはそんなんじゃないっす」
「そう?そんな事言ってたら及川さん貰っちゃうよ?名前さん綺麗だし面白いからなぁ」
「いい加減アップとってこい!クソ及川!!」
「いったぁ!?岩ちゃん酷いよ……優しく言ってくれればいいのに…」
「お前に与える優しさなんてこれが精一杯だ」
「嘘でしょ!?」
「ちょ、影山。名前さんって誰だよ」
「3セット目始まるぞ」
「ちょ!?」
「影山くん?後で先輩には教えてくださる?」
「………うす」
◇
「おっ!おかえり!!勝ったんだって?やったじゃーん!」
「……なんで知ってんだ」
「及川くんから速報来たよ」
「連絡先交換してんのか!?」
「してるよ?飛雄が中一の時に」
「…………。」
「え!?なんで怒るのよ!?ほらぁ今日はカレーにしてあげたから!機嫌直して?」
「………及川さんの事好きなのか」
「えぇ?うーん……好きだけど、付き合いたい!とかそういうのじゃないかなぁ」
「イケメンだって言ってただろ」
「イケメンだけどぉ……なんか中身が面白過ぎちゃってときめかないかなぁ、結局ね中身なのよ。飛雄も彼女作る時は顔じゃなくて中身を見なさいね」
「偉そうに言ってるけど、この前まで付き合ってた彼氏短かったな」
「うぅっ!!………ちょっとね、色々ね、あったのよ」
「結局中身見れてねぇんじゃねぇか」
「……正論パンチ、染みます」
名前はモテる。顔もいいしスタイルもいいんだと思う。料理は美味いし頭も良い。ここらで有名な大企業で働いていてシューニュー?も安定してるのが私の良いところだ!!って自分で言ってた。
その為今まで何度も名前の彼氏を見てきたし、話を聞いてきた。そしてその人数の数だけ別れた時の涙も見てきた。
そしてその度俺だったら名前の事大事に出来るのに。と心の中で呟いてきた。
しかし名前は俺の事子供扱いばかりする。実際赤ん坊の時から見られてるから仕方ないのかもしれないが……。
「………及川さんだけは辞めとけよ」
「大丈夫大丈夫、流石に飛雄の先輩とらないよ」
「そっちじゃねぇよ!」
「あれ、違った?だって飛雄及川さんの事大好きだったじゃん、サーブ教えて下さいって毎日言ってたらしいじゃん?」
「好きとかじゃなくて、技術がすげぇから教わりたかっただけだ。勘違いすんなよ!」
「そっかそっかぁ、まぁ飛雄が嫌がるなら及川くんとはそういう関係にはならないよ!」
どうだか。この姉もどきはイケメンに弱い、及川さんに迫られたら首を縦に降るかもしれない。
「何よ、その目は」
「別に」
「んもおお今日も態度悪いなぁ!?そんな風に育てた記憶は無いんだがぁ!?」
「名前だって口悪ぃだろ、その所為じゃねぇの」
「むがづくううううう!!!」